愛知県豊田市の「明治用水」の水を取り込む施設で発生した大規模漏水の原因について、専門家は河川で起こることの多い「パイピング現象」の可能性を指摘しています。

小高教授:
「上流側から吸い込まれて下流側で噴き出している状況をみますと、いわゆる『パイピング』と呼ばれる現象が発生していると考えられます」

 地盤工学が専門で、河川の構造に詳しい名城大学の小高猛司教授。今回の漏水の原因は「パイピング現象」の可能性が高いと指摘します。

小高教授:
「砂の中の水の流れは非常にゆっくりなんですけど、そこに水みちができてしまいますと、ホースの中を水が流れるのと一緒で非常に早く水が流れます。そうなりますと、水の流れによって土を削る力は非常に強くなりますので、どんどんパイピングが進行していく」

 地中などに染み込んだ水が土を押し出して、地表から湧き出るという「パイピング現象」。小高教授がその現象を再現した実験映像。

 砂をひいた水槽の真ん中を板で仕切り、左側を上流、右側を下流と見立てています。水の流れを分かりやすくするため水に色をつけて実験すると、左側の水位が高くなっている方から右側に向かって、水が砂の中で移動しているのがよくわかります。

 さらに水位をあげると、高い水圧がかかったことで水槽の底の砂を水が激しく巻き上げ、下流に見立てた右側へ一気に流れ込みます。

 高い水圧によって、土や砂に水の通り道となるパイプのような穴があく。明治用水でも地下や堤防にしみ込んだ水が長年かけて土を押し出し、このパイピング現象が起こったのではないかと小高教授はみています。

 さらに、用水の独特な構造も原因の一環ではと指摘。

小高教授:
「今回コンクリートの板や鉄板等に隙間ができやすいので、そういうところに水みちが発生してパイピングを助長してしまう」

 明治用水には、水漏れを防ぐなどの目的で川底にコンクリートや鉄板が設置されていますが、それによってできる隙間がパイピング現象を引き起こしやすくするといいます。

小高教授:
「パイピングというのは徐々に進行していますので、なかなか予見がしにくく対策が非常にしづらい。特に使い続けている構造物ですと、なかなか日常の点検もしにくいと考えられますので、非常に難しいところだと思います。しっかりとした止水の対策を広い範囲ですることが必要になってくるのかなと思います」