地元でも知らない人多数…カレーうどんは『名古屋めし』独自の進化遂げたスタイル「2つの有力説」を検証
カレーうどんは明治時代に東京の蕎麦店が提供したのがその始まりと言われているが、実は名古屋めしの1つにもなっている。独自に進化した名古屋のカレーうどんのルーツを調査してみると、驚きの発見があった。
■地元の人も知らない「カレーうどんは名古屋めし」
まずは、名古屋の街でカレーうどんが「名古屋めし」という認識があるのか、聞いてみた。
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1人目の女性:
「ないです。味噌煮込みですよね。名古屋の名物だなっていう風に思えるのは」
2人目の女性:
「ないですね、正直」
3人目の女性:
「東京から来た人とかに、名古屋めしのオススメとかって聞かれた時に、あんまり思い浮かばないですね。他が強すぎて。味噌カツとか手羽先とか」
「名古屋めしではないのでは」との意見がほとんどだが、知っているとと答えてくれた人もいた。
4人目の女性:
「小さい時から食べてたからですかね」
5人目の女性:
「なんとなく、なじみがあるかなぁって…」
なんとなくそんな気が…というのが理由で、カレーうどんのどこが名古屋めしなのかまでは知らないようだった。
名古屋市観光協会の「名古屋めし公式サイト」を見てみると、おなじみの「ひつまぶし」や「手羽先」と並んで「カレーうどん」も載っていた。
よく見ると、そこには「独自に進化を遂げた」と書かれている。
■名古屋のカレーうどんの特徴は…専門家「とろみが強く麺が極太、カレーがスパイシー」
一体どんな進化なのか?まずは基本を押さえる意味で、名古屋で生まれたカレーうどんチェーン「若鯱家」へ。
メニュー名に「名物」とついた「名物カレーうどん」(990円 ※店舗・時間帯によって価格が異なる)を実食。
美味しいのは間違いないが、どこが名古屋風なのかといわれるとイマイチわからない。そこで、名古屋めしに詳しいおなじみの料理研究家、Swindさんに聞いてみた。
Swindさん:
「私は名古屋めしだと思ってます。まず非常にとろみが強い、ほぼカレールウのような。そのカレールウに合わせるために麺も極太になっていると。カレーもしっかりスパイシーで、東京の方のカレーうどんですと、もっとつゆがさらっとしていますし、カレー風味のあんかけうどんぐらいな感じですかね」
東京をはじめとした他の地域では、うどんのツユと同じかつおだしを使っていて、片栗粉でとろみをつけてはいるものの、あくまでもうどんのツユがベースなため、サラッとしている。
名古屋のカレーうどんは、鶏で取っただしを使用。片栗粉を使わず小麦粉で煮込んだクリーミーでとろみのあるルーは、スパイシーな味わいが特徴で、麺にもモッチリとした極太麺が使われている。
比べてみても、色からして違うのがわかる。
■“聖地”鯱乃家も発祥とは言い切れず「詳しいことは聞いていない…」
一体なぜ名古屋だけが独自のスタイルなのか?Swindさんによると、「まだ確かなことは調べ切れていないが」という条件付きで、2つの有力な説を紹介してくれた。
まずは、名古屋流カレーうどんの原点を調べるため、“発祥の店”を探ってみることにした。
Swindさん:
「こちらが1つめの説のお店ですね。カレーうどんの鯱乃屋さん。名古屋のカレーうどん好きには知らない人はいないというお店ですね。カレーうどんの聖地と言っても、過言ではないお店になると思います」
“カレーうどんの聖地”ともいわれる名古屋市北区の「本店 鯱乃家」。
名物の「カレーうどん」(750円)を食べてみる。
カレールウのようなとろみがついた濃厚かつスパイシーなおツユに、太くてモチモチの麺。まさしく名古屋流カレーうどんのお手本のようなカレーうどんだ。この店が発祥なのだろうか。
鯱乃屋の店主:
「そうです…と言いたいところなんですけど、歴史的なものに関しては、ちょっと詳しいことは聞いてないです」
店主が先代から聞いたところによると、創業者が昭和50年代にこのスタイルを考案。評判になり似たような形で出す店が増えたが、詳細は不明だという。
■戦後の日本にカレーを広めた立役者「オリエンタル」移動販売のまかない説
続いて「2つめの説」はオリエンタルカレーが発祥という説だ。
愛知県稲沢市に本社を構える「オリエンタル」。オリエンタルといえば、「ハヤシもあるでよぉ」のCMで、あのココイチよりも先に全国で有名になったカレーだ。
昭和20年(1945年)に発売された日本初の“粉末状”即席ルウは、「お湯に溶かすだけ」という手軽さもウケて大ヒット。
戦後の日本の家庭にカレーを広めた、業界の立役者だ。
しかし、この即席カレーがどうやって「うどん」に結びつくのか?
オリエンタルによると、即席カレールウを開発した創業者の提案で、画期的な発明を広めるため、宣伝カーに乗って全国を移動販売で回ることにしたという。
オリエンタルの担当者:
「南は沖縄まで、全国津々浦々回らせていただきまして、体力を使ったと思うんですけども」
当時、従業員は北海道から沖縄まで大忙し。昼食はもっぱら「うどん」や「そば」で手早く済ませるようになった。すると、ある時…。
オリエンタルの担当者:
「このカレーを、素うどんの中にとけこませまして、お店の周りでどんどんカレーうどんが普及していったという話は確かに聞いております」
従業員が、ルウを素うどんに溶かして食べたのが“名古屋流”カレーうどんの始まりだという。
オリエンタルの担当者:
「一応ですね、うちのカレーもあまり公にはなってないんですけども、23種類のスパイスが入っておりますので、そういう意味ではスパイス感があるのかなというところと、トロミに関しても、小麦が原材料の上位の方にきておりますので」
■オリエンタルカレーで再現すると「驚くほど名古屋のカレーうどん」
その味を確かめてみようと、特別に再現してもらった。まずはお出汁のきいたうどんを作り…。
そこに「即席カレールウ」をスプーン3杯分ほど入れて…。
混ぜ合わせたらできあがり。食べてみるとまさに“名古屋流カレーうどん”の味だった。
Swindさん:
「味は本当にそのままこの味っていう。一緒ですね。完全に源流ですね、これが」
仮説ではあるが、“動かぬ証拠”と言えるほどの味だ。
今回の取材で「カレーうどんは名古屋めし」の歴史は「オリエンタル」の即席カレーの移動販売中に従業員が思いつき、「本店 鯱乃家」が名古屋中に広め、「若鯱家」が名古屋めしとして定着させたということは言えそうだ。