愛知県津島市に、天然素材を使った蚊取り線香や、野草を使ったハーブティーなどの食品、生活雑貨を扱う“暮らしのセレクトショップ”があります。

 毎日の暮らしで役に立つ生活用品を販売することで生産者と消費者をつないだり、蚊取り線香の原料である除虫菊を栽培するケニアの人たちに、蚊取り線香の作り方を教えるなどをして社会貢献しています。

■菜種油や珍しい黒麹など…食品や生活雑貨扱う「暮らしのセレクトショップ」

 愛知県津島市の自然食品などを製造販売する1977年創業の「りんねしゃ」。

【画像20枚で見る】天然素材を使った蚊取り線香や野草を使ったハーブティーなどを扱う“暮らしのセレクトショップ”

 店内には、黄金色に輝く菜種油に愛知県産の珍しい黒麹や…。

北海道産の薄荷オイルや野草を使ったハーブティーなど、全国から集めた食品や生活雑貨が並びます。

りんねしゃ副社長の大島幸枝さん:
「生産者さんこだわりの食材、調味料をベースに毎日使っているモノ、暮らしの中に取り入れてほしいモノっていうセレクトでやっています」

 店内に並ぶ食品や調味料は、2代目の大島幸枝さんが全国の生産者から直接買い付けていますが、りんねしゃが開発したオリジナル商品も人気です。

大島さん:
「ほうろくの菜種油ですけど、いま2代目の杉崎学さんが絞って作っていらっしゃるんです」

 愛知県西尾市で、国産の菜種を天日干しし薪の火で焙煎した「なたねあぶらRIN」(1976円)。油に旨味があり、オリーブオイルの様に調味料としても使えます。

 北海道産の希少な在来種の薄荷が原料の「赤丸薄荷」は、西洋のミントよりメントールの成分が多く、消臭や防虫、またミントティーとしても楽しむことができます。

■発売から30年のロングセラー…天然の除虫菊を使った茶色い「菊花せんこう」

 一番人気は、30年近く続くロングセラーの除虫菊を使った茶色い“蚊取り線香”です。

女性客:
「香りがすごくよかったのと、自然由来のものでいいかなと思って購入しました」

男性客:
「市販の蚊取り線香だと目が痛いんです。そういうのがすごくあって」

 除虫菊など天然の素材だけを使用した「菊花せんこう」(30巻1034円)は、化学成分も着色料も使っていないため色は茶色。煙は干し草を燻したような、優しい香りです。

■蚊原因のマラリアで年1万人が死亡…ケニアで蚊取り線香の作り方を伝授

 天然の除虫菊を栽培しているハウスへ。

大島さん:
「白花除虫菊と呼ばれるもので、蚊取り線香の原料になる花です。一番殺虫成分が多いのが、真ん中の黄色い花弁の部分、ピレトリンという殺虫の成分になります」

「ピレトリン」は、虫の神経を麻痺させますが、人間の体内では素早く解毒。虫を殺すのではなく、虫を除けるだけの「除虫菊」を使った蚊取り線香は、人やペットにも安全で安心です。

国産の除虫菊は少なく、りんねしゃは北海道に自社農場を作りました。

 第一次世界大戦前は、日本は世界でも有数の除虫菊の産地だったといいます。しかし、様々な事情で栽培されなくなりました。そして今では、確実に殺虫成分がある化学薬品が主流となっています。

 今では、栽培の記録も経験者もいないため、大島さんは当時どのように除虫菊を安定的に栽培していたのか調べているといいます。

 現在、多くの蚊取り線香は、外国産の除虫菊が使われていて、りんねしゃでも一部をケニアからの輸入に頼っています。しかしケニアでは、蚊取り線香を作るノウハウがなく、蚊が原因のマラリアに年間350万人がかかり、1万人が死亡。りんねしゃでは、現地の人たちに蚊取り線香の作り方を教え始めました。

大島さん:
「一番いいのは、除虫菊をケニアの人たちが栽培して、線香にする技術を持てば世の中の役に立つので、その線香の作り方を伝えていけたらいいな」

 日本とケニア…、蚊取り線香が命をつなぎます。

■生産者の思いを届けたい…朝市や市民農園を通し生産者と消費者をつなげる

 りんねしゃでは、毎週土曜日に朝市を開いています。廃屋になったのこぎり屋根の繊維工場の跡地に、地元の農家など25店ほどが出店。採れたての新鮮な野菜を求めて、地元の人たちがたくさん訪れます。

女性客:
「新鮮そうでほぼ毎週。近場で楽しく、今そんなに遠くにも行けないし」

別の女性客:
「作っている方と一緒にお話できるので、それがすごく楽しくて」

 大島さんは、りんねしゃの敷地内で市民農園も運営していて、地元の農家から野菜作りを学ぶことができます。

市民農園を訪れた女性:
「すごくありがたいですね。なかなか土と触れ合う機会って、子供たちがないから」

「生産者の思いを届けたい」。大島さんは定期的に勉強会を開いて、生産者と消費者を繋いでいます。自分たちが惚れ込んだものを販売。そして購入してくれた人たちから感想や意見を聞き、それを生産者へフィードバックしています。

大島さん:
「循環ですね。名前も『りんねしゃ』なので、輪廻転生というか…。ぐるぐる巡っていくことは、全てにおいて責任を持つということが大事かなと」

■本草学をベースとした商品が充実…リゾート施設に新たな店をオープン

 三重県多気町に、7月オープンしたリゾート施設「VISON」に、りんねしゃの新しいショップが誕生しました。和草や薬草などの本草学をベースにした商品が揃っています。

 店内には、ロングセラーの「菊花せんこう」と共に、沖縄の山野草“月桃”を使ったお茶や、野生のタンポポをブレンドしたハーブティー「和草茶ブレンド3種」(1300円)などが並びます。

 カフェでは、愛知県の西尾市で作った黒麹の「黒麹のフルーツポンチ」(1100円)などのスイーツもいただけます。

女性客:
「ナチュラルな感じで健康によさそうなものが揃っているから、リラックスできる感じです」

別の女性客:
「山の中にあるのとガラス張りですごく落ち着くし、開放感もあっていいですね」

大島さん:
「買い物は選挙と同じくらい、何を買うか毎日の行為が社会を変えると思っている…。それが、ちゃんとしたものを作っている人たちの力になるので…」

「毎日の買い物が“社会参加”であることを伝えたい」と話す大島さん。人にも地球にも優しいモノ…。毎日の買い物が、私たちの未来を変えます。