「交番で何かやれ」夜押し寄せる若者…名古屋駅交番密着40時間 痴漢被害の女性に寄り添う女性警官も
名古屋駅前にある交番は、愛知県内でも栄の交番と並んで尋ねてくる人が多く、一日に約100件もの相談が舞い込みます。
若い女性を狙った卑劣な犯行に、深夜に突然交番に乗りこんでくる若者など…。名駅交番には、大きな犯罪にならないよう、日夜街を守り続ける警察官の姿がありました。
■夏の朝に多く発生する痴漢や盗撮行為…被害者に寄り添う女性警察官
名古屋駅の桜通口にある愛知県警中村署「名古屋駅交番」では、警察官6人ほどが警戒にあたっています。
【画像20枚で見る】深夜の若者の迷惑行為…名古屋駅交番密着 痴漢被害の女性に寄り添う女性警官も
午前8時半。通勤ラッシュの時間帯に一本の通報が…。駆け付けた地下鉄の駅長室に1人の女性…。
佐々木巡査:
「痴漢にあわれたとお聞きしたんですけど、ちょっと言いにくいこととか、嫌なこと思い出させてしまうかもしれないんですけど、お話順番にお聞きしていってもよろしいですか?犯人捕まえるためにお願いします」
話を聞くのは、5年目の女性警察官の佐々木紅映(くれは)巡査(23)です。地下鉄東山線の車内で、20歳の女性が下半身を触られる痴漢の被害にあいました。
被害女性:
「みんなぎゅうぎゅうになっていて、なんか当たってるなって思ったけど。明らかに触ったってわかったのは、(電車を)出た瞬間に、がっつり」
男は目撃者に取り押さえられ、中村署に任意同行。「好みのタイプで性欲が抑えられなかった」と50代の男は犯行を認めましたが、初犯で逃亡のおそれがないことなどから、県の迷惑防止条例違反の容疑で書類送検される方針です。
被害女性:
「満員電車乗ったのが初めてで、後ろ振り向いたら目合っちゃうしどうしようと思って、振り向けなかったです。自分から大きい声で『痴漢です』みたいなこと言えないから…」
佐々木巡査:
「もし見かけてまた怖い思いとかしたら、110番してもらったりとか、周りの人に声かけてもらえば大丈夫だから」
被害女性:
「女性(警察官)の方だし、親身に寄り添って話しかけてくれるから。あった出来事が話しやすかった」
愛知県警によると、痴漢や盗撮行為などの相談件数は夏に多く、朝6時から9時までの被害が半数を占めています。
■名古屋は何回来ても分からない…交番で最も多い相談「道案内」
午後1時。交番には多くの人が尋ねてきます。中でも多い相談が…。
男性:
「ミッド“ナイト”スクエアっていう映画館行きたいんやけど…」
交番相談員:
「ミッド“ランド”スクエアですか?道渡った建物がミッドランドスクエアです」
女性:
「コメ兵に行きたいんだけど。何回来ても名古屋は分からない…」
交番相談員:
「ここの横断歩道を渡って右に。コメ兵って看板が左側にあります」
名古屋駅交番で一番多い相談が「道案内」。今の時期はワクチンの接種会場をはじめ、一日80件ほどあるといいます。
■暑い夏は体力勝負…3日に1度の朝から翌朝までの交番勤務
午後3時。佐々木巡査、やっと昼食です。佐々木巡査は、愛知県警の柔道大会で3度優勝しています。
佐々木巡査:
「健康と体力はすごく(大事だと)思いますね。ここ(名駅交番)は車がないじゃないですか、自転車か徒歩なので、みんなバーって行っちゃって、私いつも後ろのほうで死にそうになっています…」
交番の勤務は3日に1回で、朝から翌朝まで。名駅交番は出動要請が多く、暑い夏は体力勝負です。
■釣りざおからペット用のケージまで…落とし物は全部で約1万点
午後7時。帰宅ラッシュの時間帯に、一人の女性が尋ねてきました。この女性は、去年12月に結婚指輪を失くして交番に紛失届を出しましたが、まだ見つかっていません。
女性:
「結婚式前に失くしたんです。向こう(夫)が悲惨ですよね」
女性はネイル店で指輪を外しコートのポケットに入れ、気が付いた時には失くなっていたといいます。調べてもらいましたが、結局女性の指輪は出てきませんでした。
道案内に次いで2番目に多い相談が「遺失・拾得物」、落し物です。届けられたものは、最寄りの警察署に保管されます。
最近は、ワイヤレスイヤホンやスマートウォッチ、そしてマスクが入ったケースなどが増えているといいます。落とし物は、全部で約1万点。中には、こんなものも…。
愛知県警中村署の担当者:
「(缶ビールは)出張とか終わって帰りに一杯飲もうと思っていたんでしょうけど…。これはお寺のありがたいやつ(経文)…?」
釣りざおにヘルメット、ペット用のケージまで…。落し物は、3か月間保管されますが、持ち主が現れない場合は、廃棄もしくは売却処分になるといいます。
■深夜に突然交番に乗りこんでくる若者たち…夏休みに多い“未成年者の迷惑行為”
午後7時半。日が暮れると、一層慌ただしい時間に…。夏休みの夜に、目立つのは“未成年者の迷惑行為”です。すぐ近くでスイカをまき散らしている若者がいるとの通報が入り、佐々木巡査が交番の上にある広場を訪れると、そこには半分に割れたスイカが…。
佐々木巡査:
「スイカを割ったのは誰ですか?あなたたちじゃないのね」
女性:
「ヤンキーの、ああ、あの人たち!」
佐々木巡査:
「お兄さんたちのスイカ?」
男性:
「スイカ?知らん」
聞き込みをしますが、張本人は見つからず…。この後、施設の清掃員が片付けました。
別の日の夜にも…。
男性:
「いえーい!すみません、みんなにやれって言われてきたんですけど、『交番でなんかやってこい』って」
警察官:
「ふざけとったらいかんで!」
男性:
「やらないと殴られるんですよ」
若者が1人、2人と次々と交番に押し寄せます。さらに交番前で騒いだり、階段を勢いよく飛び降りたりと警察官を挑発。若者10人以上が集まり騒いでいるため、他の市民への迷惑も考え応援を要請しました。
警察官:
「頼むで帰ってくれ!」
男性:
「お前らが帰れ」
佐々木巡査:
「ここおっても解決しんもんで、帰って」
男性:
「わかった、わかった!じゃんけんで負けてったやつから帰ろうや!あはは」
果敢に説得にあたること20分…。若者たちはようやく立ち去りました。
佐々木巡査:
「気持ちで負けていては柔道の試合でもダメですし、そこでひるんでいては警察官である意味がないので…」
愛知県警によると、未成年者の補導件数は8月から10月で約3割を占め、深夜の迷惑行為が後を絶ちません…。
■40時間で寄せられた相談102件…私たちを見守り続ける街の交番
日が変わった午前3時。佐々木巡査は、出勤から18時間でようやく4時間の仮眠です。
佐々木巡査:
「交番の仕事は、一番に現場に着いて、犯人とか被害者の方とかに一番にお話を聞くことができる立場であるので、解決や検挙に向けて頑張れるように励んでいきたいと思っています」
名駅交番に密着して40時間。その間に寄せられた相談は102件。大きな犯罪にならないよう、交番はいつも私たちを見守ってくれています。