捜査員が“エロ眼”と呼ぶ視線の男も…卑劣行為に目を光らせる鉄道警察隊 脚を出した女性追う男の言い分は
女性を狙う痴漢行為や盗撮行為など、2021年に愛知県警鉄道警察隊に寄せられた相談件数は258件にのぼります。
脚を出した女性ばかりを追う男に、キョロキョロと女性を物色する男…。痴漢捜査のプロフェッショナルは、被害者を1人でも減らすために、通勤ラッシュで繰り広げられる卑劣な行為に目を光らせています。
■通勤ラッシュに痴漢や盗撮を取り締まる…痴漢捜査のプロフェッショナル“鉄道警察隊”
名古屋駅にある「愛知県警鉄道警察隊」。
【画像20枚で見る】捜査員が“エロ眼”と呼ぶ視線の男も…卑劣行為に目を光らせる鉄道警察隊
駅や電車内での痴漢・盗撮の取り締まりに当たる鉄道警察隊の村上晴美警部補(57)は、これまでスリ捜査10年、痴漢捜査9年を経験してきたその道のプロです。
午前8時10分、出勤ラッシュの名古屋駅。ワイシャツに紺のスラックス姿の村上警部補が、人ごみに溶け込み目を光らせていると…。
まず目をつけたのは、満員のホームで柱の陰に立ちスマホをいじる男性。痴漢の特徴として、立ち止まってターゲットを探すため柱付近に立つことが多いといいます。しかし、後ろから様子を伺うと…。
村上警部補:
「ゲームばっかりやってるんですよ。まあ、動きとしてはおかしいんですけど、女性にくっつくというのはないので…」
男性は、ゲームに夢中になっているだけでした。
■ラッシュで混み合う区間を4往復…ショートパンツの女性のあとを追う50代の男
午前8時50分。次に、村上警部補が目を付けたのは…。
村上警部補:
「ショルダー(バッグを)持ってる男。乗ってきたやつ(電車)で、また折り返した」
サングラスをかけ、ブランド物のバッグを持った中年の男。地下鉄名古屋駅で乗車後に、伏見駅で下車。しかし、改札を出るわけでもなく、再び名古屋駅方面に向かっていました。
複数の捜査員が、この男が少なくとも4往復している様子を確認。ターゲットを見つけるために混み合う区間を何度も往復するのも、痴漢の特徴的な動きの一つです。
その後、男は伏見駅でショートパンツの若い女性を見つけると、同じ列車に乗り込み一定の距離を保ち続けます。そのまま何もすることなく、名古屋駅で女性と一緒に下車。
村上警部補:
「これといって迷防(迷惑行為防止条例違反)的な容疑(痴漢)はないですね。女性には興味あると思うんですけど」
しかし、その後も別の脚を出した女性の横にピッタリと付けたところで、村上警部補が動きます。
村上警部補:
「ちょっと旦那さん、警察ですけど、何往復もされているもんで」
男(50代):
「ああ、そういうことですか」
愛知県内に住むという50代の男は、女性のあとをつけていたことについて…。
村上警部補:
「伏見まで行って降りて、鶴舞線降りたと思ったら反転してホットパンツの女の子に…」
男(50代):
「脚はちょっと興味あるかもしれんね」
その後も捜査員が話を聞いていると、男は過去にも痴漢で警察の世話になったことがあると話しました。今回は、痴漢や盗撮行為は認められなかったものの、まぎらわしい行為をしないよう指導を受けました。
男(50代):
「心入れ替えて、まじめに3年仕事続けて…」
村上警部補:
「それ忘れずにね。乗り方おかしいでしょ。今後は、そういう乗り方しないって誓える?」
男(50代):
「本当にすみませんでした。ご迷惑おかけしました」
■「怖くて誰かに言うとかできなかった」…多くの女性が被害を訴えられず“泣き寝入り”
2020年に鉄道警察隊に寄せられた痴漢・盗撮の相談件数は、258件。被害が多いのは薄着の夏ですが、新学期が始まる9月以降も一定の相談があります。
しかし、被害の申告をしない“泣き寝入り”をしている人も多いと、村上警部補は指摘します。街で聞いてみると…。
女性(10代):
「エスカレーターのところで…。盗撮だったんじゃないかなって。本当にされたか分からないから、言うのも怖くて…」
女性(20代):
「知らない人に一瞬触られて。一瞬過ぎて、言わなくていいかなって」
別の女性(20代):
「怖かったので、誰かに言うとかできなかった…。現行犯でしか痴漢は(逮捕)できないって聞いたので…」
痴漢の被害に遭ったことがあると回答した女性20人のうち、半数以上の13人が警察に相談していないと答えました。痴漢は現行犯以外でも検挙できますが、恐怖もあって諦めているのが実態のようです。
■股間を押しあてた疑い…女性をキョロキョロ物色する“エロ眼”の男
午前8時10分。この日も警戒に当たっていた村上警部補は、ホームに立つ背の高い男のある特徴に気付きます。
村上警部補:
「目を見とってくださいね、物色してる目を。“エロ眼”って言うんですけど、好みの女性を探す」
何かを探すように辺りをキョロキョロ…。捜査員たちの間で“エロ眼”と呼ばれる視線です。女性の顔や胸、お尻などへ視線が次々と動くのが特徴で、痴漢がターゲットを探す時によく見られます。実はこの男…。
村上警部補:
「股間の押しあてじゃないかなって」
20分ほど前にも、別の捜査員が電車内でこの男が女性に対し、股間を押しあてるそぶりをするのを目撃。その後も、名古屋駅と栄駅を往復する男に…。
村上警部補:
「ちょっと警察だけど、話聞かせて。あなたの乗り方が痴漢と同じような乗り方してるから」
男(30代):
「それは…、違います」
会社への通勤途中という30代の男に、捜査員が目撃した“股間の押しあて”について問いただすと…。
男(30代):
「ずっと押し付けたりしているわけではないし、たまたま当たっているだけ」
男性捜査員:
「女の子も気付いとった、当てられてるって。こっちは話聞いているんだ、女の子に」
男(30代):
「当たることくらいはあるでしょ」
男性捜査員:
「それは故意じゃないの?あなたの後ろはもっと空いてたよ、人もいないし」
1時間に及ぶ聞き取りで、男は名古屋駅と栄駅を3往復し、女性に何度か股間を押しあてたことを認めました。しかし…。
男性捜査員:
「わざとやってたんでしょ?」
男(30代):
「わざとじゃないです」
股間が当たったのはわざとではなく、手も上げて乗車していたと、一貫して痴漢行為を否定。
村上警部補:
「手は触ってないよって言ってても、下半身を押し付けたりすれば、それも痴漢行為なの」
男性捜査員:
「あなたからしたら偶然かもしれないけど、女の子からしたら関係ない。怖くなって電車乗れなくなっちゃうかもしれない。相手の事も考えてあげないといかん、乗り方で」
今回、女性が被害届を出さなかったため、男には痴漢と疑われるような行為はしないよう”誓約書“にサインを求める「警告処置」を行いました。
この様に、鉄道警察隊は、検挙に至らないような場合でも声かけをして被害を未然に防ぐ活動に当たっています。
村上警部補:
「女性が安心して電車を利用できるように、痴漢を一人でも多く捕まえて、安全安心に乗車していただけるようにしたい」
被害者を1人でも減らすために…。痴漢捜査のプロは、今日も卑劣な行為に目を光らせています。