背景に“希少性”か…焼き物の街で『たぬきの置物』ばかり盗まれる 9月以降5件発生しほとんどが常滑焼
愛知県有数の「焼き物の街」常滑市で今、「たぬきの置物」の常滑焼を狙った窃盗事件が相次いでいます。
レンガ造りの建物や煙突が並ぶ愛知県常滑市。
盗まれたのは、常滑焼の「たぬき」です。
【画像で見る】焼き物の街・常滑市で『たぬきの置物』ばかり盗まれる 背景に“希少性”か…
常滑市で多発している「たぬきドロボウ」。警察によると今年9月以降、南北およそ4キロの範囲で、たぬきの置物ばかり狙われる被害が5件も発生しているといいます。
10月23日には、住宅の庭に飾られていた時価2万円相当のものが被害に…。
フェンスと置物を結んでいた緑の針金をわざわざ外して持ち去る、手の込んだ手口でした。
今年9月に被害に遭った男性は、自宅の玄関前に置いていた2つのたぬきのうち1つが忽然と姿を消し、頭にかぶっていた「笠」だけが残されていたといいます。
被害に遭った男性:
「(高さ)1メートルぐらいかな。いわゆる形見というか、死んだおやじが作った形見みたいなもの。ここに置いとけば、おやじも供養されるという感じで置いてあったけど。まあ腹立ちますよね」
「他(た)を抜く」という語呂合わせや、見た目の「太っ腹」から、商売繁盛や開運などの縁起物とされているたぬきの置物。常滑市の博物館で実物を見せてもらうと…。
とこなめ陶の森資料館の担当者:
「目がズボッと開いていて、大きな焼き物が多いかな。手作りで作っているものがほとんどなので。どれも表情が違うというか、大きさが違ったり色んな形のものがあるのが、常滑の特徴かなと思います」
愛くるしい顔で有名な「信楽焼」に対し、「常滑焼」はくりぬかれた目が特徴。常滑市での被害はほとんどが常滑焼でした。
実は常滑焼のたぬきは、職人の高齢化などによって今ではほとんど作られておらず、年々希少な存在に…。地元ではこうした背景が狙われる要因ではないかと考えられています。
とこなめ陶の森資料館の担当者:
「買えるということになれば盗難みたいなことはないと思うんですけど。もう数がないといいますか、今あるものしかないというのが常滑のたぬきの現状なのかもしれないです」
常滑焼のたぬきが盗まれる被害は今回だけではありません。今年4月にも2体、去年6月には1体、さらに2019年には、人気の観光スポット「やきもの散歩道」で5体が盗まれました。
2019年に店先のたぬき2体を盗まれたという店を取材すると…。
「ほたる子」の店主 :
「ここにたぬきが大小(2体)。大きいほうがこの辺に顔を出していて」
盗まれたうちの1体は体長1メートルほどはある大きなたぬき。購入価格はおよそ6万円で、すでに亡くなった職人が作った貴重なものでした。
その後、運良く同じ職人が作ったものを手に入れましたが、飾る場所は店の中に変えました。
「ほたる子」の店主:
「人を迎え入れるために本当は外に置きたいんですけど、また盗られるのが嫌なのでここに置いています。いい土地なので。今回みたいなことがあるとつらいですね」
警察によると、これまで盗まれたたぬきはすべて行方不明で、インターネットなどで転売された形跡もなし。
希少な「たぬきの置物」を一体だれが…。警察は窃盗事件として捜査を進めています。
※画像は被害者撮影