愛知県安城市の35歳の女性から投稿がありました。「ラトビア共和国は日本から飛行機で乗り継ぎ、約12時間かかるところにあります。日本人にはあまり知られていない国ですが、ラトビア人は日本人が大好きです。私の夢はラトビアのカフェを開業し、アンテナショップとして情報や文化を発信すること。彼らの素晴らしい文化を日本で広めていきたいと思います」

「ラトビア」だけではありません。決してメジャーではない国「ガンビア」の文化を広めたいと活動している人もいます。日本ではあまり知られていない国の文化を広めるべく活動している人々を取材しました。

■決してメジャーではないけれど…歴史ある美しい国・バルト三国の一つ「ラトビア」

 愛知県安城市で、ご主人と2人の子供と暮らす投稿者の内堀宜江さん(35)は、大のラトビア好きです。

夫の貴雄さん:
「(妻は)全部ラトビアですね。オリンピックでもラトビアを応援したり…」

【画像20枚で見る】知られざる文化を日本で広める人々「ラトビアで一番有名な日本人」「ガンビア総領事の女性」

 しかし、周りの人たちには、ラトビアと言ってもなかなか理解してもらえないといいます。

内堀さん:
「『アフリカですか?』とか、『バルト三国はかろうじて知ってるけど』みたいな…」

 ラトビアの人口は約190万人。日本の6分の1ほどの大きさで、エストニア、リトアニアとともに、バルト三国の一つとして知られています。首都・リガの街並みが、世界遺産にも登録されるなど、美しい歴史的建造物が有名な国です。

しかし、日本からの旅行者は、フランスやスペインが年間約40万人なのに対し、ラトビアはコロナ前でも約2万5000人と、決して“メジャーな国”ではありません。

■修士論文のテーマは「ラトビア」…自国の民族文化に誇り持つラトビアの人たちに魅せられた女性

 内堀さんが、ラトビアのことを日本で広めたいと思ったきっかけは、文化人類学を専攻していた大学院時代に、修士論文を書くためにラトビアを訪れたことでした。

内堀さん:
「何でこの人たちはこんなに自分の文化を大切にしようとしているんだっていうのと、大切にしている文化って一体何なんだろうって…」

 内堀さんは、訪れた現地の小さな村で、自給自足をする人々の暮らしに興味を持ちました。携帯電話の電波も届かない場所での80代の高齢女性との同居生活。

きのこ狩りをしたり、牛の乳を搾ったり、薪ストーブで煮炊きをしたり、不慣れなラトビア語に苦労しながら暮らしていました。すると…。

内堀さん:
「合唱団に入れてもらって、色んな所に行って歌って、民族衣装も作ってもらって…。おばあちゃんとか村の人たちは、利害関係なく心の中から一緒に暮らして、愛をくれて…」

 地域に溶け込み、気づけばラトビアでの暮らしは3年間続きました。その暮らしぶりはドキュメンタリーとして、現地で映画化もされました。現地の新聞にも掲載された内堀さんは、今でも「ラトビアで一番有名な日本人」として知られているといいます。

「ラトビアのことを日本で広めるのは、自分の使命であり自分のやりたいこと」と内堀さんは話します。

■夢はラトビア料理のカフェ開業…ラトビアのことを広めることは受けた“無償の愛”への恩返し

 内堀さんは、友人と一緒に現地のハーブを使ったハーブティーのブランドを立ち上げました。そして、ラトビアの伝統的なお菓子・ジャガイモとニンジンのパイ「スクランドラーウシ」などのラトビア料理を出すカフェを開きたいと準備をしています。

そのため内堀家の食卓には、エンドウ豆とベーコンの炒め物や骨付き鶏のスープなど、ラトビアの家庭料理が並びます。

内堀さんの夫:
「日本の味付けに結構似ているので、違和感なく。『ラトビアに行ってくる』って言っていたので、ラトビアってどこって感じで…。世の中にはこういう人がいるんだなって思いました」

内堀さん:
「ラトビアのことを世の中に広めたい。それが自分の今までしてもらった無償の愛の恩返し。学んだことをもっと深く日本の人々に伝えることじゃないのかなと思います」

■「ガンビアと日本は似ている」…西アフリカの国「ガンビア」から来た女性

 知られざる海外の文化を広めたい人は、他にも。名古屋市西区のレストラン「ジョロフ・キッチン」。

料理の腕を振るうのは、店のオーナーでガンビア出身のビントゥ・クジャビ・ジャロさん(53)です。

ビントゥ・クジャビ・ジャロさん:
「ガンビアは、セネガルの中。とっても小っちゃい国です。大きさ岐阜ぐらい」

 周囲をセネガルに囲まれた西アフリカの「ガンビア」の人口は、約230万人。海岸線はリゾート地として栄え、シーズン中はヨーロッパから多くの観光客が訪れます。

 ビントゥさんは、夫の留学のため30年前に来日。マスタードとスパイスが効いた牛肉と野菜を炒めた「ビーフアフラ」や、鶏肉の煮込み料理「ドモダ」など、ガンビアの家庭料理を広めるためにお店を開きました。

男性客:
「ちょっとココアっぽい香りが。おいしかった、食べやすかった」

女性客:
「アフリカ文化に興味があって来たんですけど、そこでビントゥさんと会って。すごく明るい方で、日本語もすごく上手で」

ビントゥさん:
「(ガンビアと日本は)似ているところが結構ある。日本人、優しい人いっぱい。東京でいつも迷ったりするね。でも、声掛けられることよくある。『Can I help you?』とか。助けてもらっている」

■アフリカに対するイメージを変えたい…店の経営の傍ら「ガンビア総領事」も務める

 ビントゥさんには、飲食店のオーナー以外にも「外交官」としての顔もあります。名古屋の「ガンビア名誉総領事」を務めています。

 日本には、ガンビアの大使館も領事館もありません。そのため、日本政府から依頼を受けたビントゥさんは、6年前から飲食店の経営をしながら“ボランティア外交官”を務めています。

現在約100人いるという在日ガンビア人のサポートや、現地への進出を検討している日本企業への助言などをしています。

ビントゥさん:
「友達に『アフリカ行ったことある?』って聞いたら『行ったことない、怖い』とか。(ガンビア人は)みんな優しい、みんな友達と思っているね。そういうところも日本人に見せたい」

 アフリカに対する日本人のイメージを変えたい…。それが料理人兼外交官という、珍しい今の立場に繋がっていました。東京オリンピックでは選手たちの受け入れも行い、コロナ禍で外出を自粛していた選手に代わり、食料や日用品の買出しもしました。

ビントゥさん:
「本音を言うと大変ね、簡単なことじゃない。でも(名誉領事を)やってすごくよかった。自分の国のために色んなことやっている。それがとても嬉しいです」

「ガンビアとジャパン、グッドリレーションシップ(良い関係)になってほしい」。ビントゥさんの願いです。