名古屋にある東山動植物園にいる絶滅危惧種の動物を紹介した「東山絶滅動物園」というタイトルの写真集が話題となっています。キリンにライオン、ゾウ、ゴリラなど誰もが知っている動物園の人気者は、実は絶滅の危機に瀕しています。その原因は、乱獲、森林破壊など私たち人間のエゴです。この写真集を出版した愛知県豊橋市出身の男性は、各地の動物園でガイドをしながら動物たちの危機を訴えています。

■「すらすら名前出る動物はほぼ絶滅危惧種」…写真集を出版し動物たちの危機を訴える男性

 約450種類の動物を飼育している、名古屋市千種区の「東山動植物園」。その内の100種類以上が“絶滅危惧種”です。

【画像20枚で見る】1日約100種類が“絶滅”…写真集『絶滅動物園』出版者が訴える動物たちの危機

佐々木シュウジさん:
「すらすら名前が出るような動物は、ほぼ絶滅危惧種。ニシゴリラは、CRという絶滅危惧の一番よくない評価。種の保全保護が最大のミッションというのであれば、東山動物園は日本一の動物園といってもいい」

名古屋で広告や映像の仕事をしている佐々木シュウジさん。

 東山動植物園にいる絶滅危惧種の動物を紹介した写真集を5年前に出版しました。

 佐々木さんは、「自分はエコロジストでも自然学者でもないが、少しでも人間と地球の距離が近づく役に立てば」と、各地の動物園でガイドツアーをし動物たちの危機を訴えています。

■絶滅の危険性が極めて高いニシゴリラ…減る理由は私たちが使う「スマートフォン」

 国際自然保護連合(IUCN)と環境省は、絶滅危惧種を、「CR(Critically Endangered・深刻な危機)」、「EN(Endangered・危機)」、「VU(Vulnerable・危急)」の3段階に分類。例えば、アフリカ中西部に生息するニシゴリラのシャバーニは、ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高い「CR」に分類されています。ゴリラの数を減らしている原因は「スマートフォン」でした。

佐々木さん:
「スマホとかのハイテク機器の中にはレアメタルが使われています。レアメタルの鉱物資源を取るために、ゴリラの住んでいる森が削られて開発されている」

 同じく、オランウータンも森林伐採により住処が奪われています。森はアブラヤシの畑になり、スナック菓子やシャンプー、せっけんなどの原料になりました。

 インドネシアのスマトラトラも、森林伐採と密猟で絶滅寸前。1900年代初頭には9種類のトラが約10万頭いましたが、その後の100年でその内3種類が絶滅。数も約3000頭前後まで減っているといいます。

 動物園の人気者たちが絶滅の危機。アジアゾウ(EN・危機)は、草原の減少や象牙取引による密猟。

コビトカバ(EN・危機)は、工業化鉱山開発による沼地の水質汚染。アミメキリン(EN・危機)は、骨や尾が装飾品になるため密猟が横行。

シセンレッサーパンダ(EN・危機)は、毛皮採取やペット需要のための密猟が原因で、それぞれ絶滅の危機に瀕しています。

■人間のエゴのため絶滅した“幻の動物”がたくさんいることを知り警鐘を鳴らし続ける

佐々木さん(ガイドツアーで):
「北極海に暮らすホッキョクグマです。次(のページ)はショッキングですよ。痩せちゃっている」

 佐々木さんは大学時代にある図鑑を読んで、人間のせいで絶滅した“幻の動物”がたくさんいることを知りました。ジュゴンに似た大型動物「ステラーカイギュウ」は、捕獲を繰り返した結果、1768年に絶滅したといいます。

佐々木さん:
「(ステラ―カイギュウは)27年しかこの地球に生存記録がでなかったんだな、と思った時にすごく悲しくなったんです」

 現在、1日におよそ100種類の動物が絶滅しているといわれています。その原因は、ほとんどが私たち人間です。

■費用はクラウドファンディングで募集…絶滅危惧種の写真集の最新刊を出版

 佐々木さんは、今年9月に愛知県豊橋市の「のんほいパーク」をテーマにした最新刊「豊橋絶滅動物園」(三恵社・1430円)を出版しました。出版費用は、クラウドファンディングで募集し、265人を超える支援者から300万円以上が集まりました。

<インスタグラムのライブ配信>
佐々木さん:
「キタシロサイは絶滅危惧種ですが、地球上に何頭いるかっていうと、今この2頭だけです」

 豊橋市出身の佐々木さんは、同級生などの地元の仲間たちと一緒に活動しています。

「のんほいパーク」は、総面積39.6ヘクタールの広大な敷地に130種類の動物がいます。ホッキョクグマのダイブなどの自然に近い環境を再現した飼育方法が、全国の動物園のお手本に。

アフリカ園ではダチョウ、シマウマ、キリンなどを一緒に「混合飼育」。また、アジアゾウは6頭の群れで暮らしています。

のんほいパークの園長:
「ゾウはメスが集まって群れをつくる習性がある、その習性に即した形で飼育できる。ここは地下水も豊富で、水を割と使うことが出来ることも動物の世話にもかなり有利にはたらきます」

 渥美半島に生息する「ヤマトサンショウウオ」(VU・危急)。のんほいパークは、愛知教育大学と共同で地域の絶滅危惧種の保護を行っています。

同・園長:
「アニマルウェルフェア、動物福祉ともいわれますけど、動物がいかに豊かに生きていくことができるか…。動物を飼育する上ですごく大事なことといわれています」

■「人間も生態系の一部」…動物を守っていく事は人を守ることにつながる

 東山動植物園にいるアメリカバイソンは、絶滅の危機から復活した動物です。ヨーロッパの列強諸国がアメリカ大陸に侵攻してくる前までは、アメリカバイソンは約6000万頭いたといわれています。19世紀にヨーロッパからの移民が、ネイティブアメリカンを支配するためにアメリカバイソンを乱獲。1890年頃には、1000頭未満に激減しました。

すると、アメリカ政府は1902年に保護育成政策をすすめ、狩猟を禁止し多くの保護区を設置。アメリカバイソンの復活には100年かかりました。

佐々木さん:
「動物たちを追いやっているのが人間ですけど、動物たちの環境を変えることができるのも人間だけ…」

 地球に生物が誕生して38億年。隕石の落下や火山の噴火など、何度も絶滅期を繰り返してきました。今は6度目の絶滅期を迎えているといわれています。

のんほいパークの園長:
「人間も生態系の一部。1つの部分が無くなってしまうと、当然人のほうにも影響が出てしまう…」

「生態系を守るために一つ一つの種を守っていく。ひいてはそれが人間を守ることに繋がる」。のんほいパークの園長は警鐘を鳴らします。

佐々木さん:
「動物を知るのは、地球のことや自然のこと、私たちの暮らしのことや、その延長線上にある未来のことが見えてくる材料になるんです」

 動物たちのミライ、そして人間のミライを守るために、私たちができるコトは…。