愛知県では11月から交通死亡事故が急増しています。その原因を探ると、”ある条件”のときに死亡事故の発生リスクが高いことがわかりました。

 11月5日の夕暮れ時、名古屋市南区で起きた交通事故。片側1車線の道路を横断していた83歳の男性が、トラックにはねられ死亡しました。

 愛知県では今、「横断中の高齢者」がはねられて死亡する事故が急増しています。

 愛知県の今年の交通事故による死者数を見てみると、11月は19人と急増。

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 このうち7人が「歩いて横断中の高齢者」でした。

70代男性:
「横断歩道の隅っこに立っていて、一歩前に出たときに(車が)前を通り過ぎていくから、ヒヤッどころの話じゃない、オオッ!ですよね」

60代女性:
「(車が)左から来たりする時にちょっとヒヤッとしますけどね。車の人は自分の行きたい方向を見ているから」

 実際、道路を渡る際にヒヤリとした経験のある高齢者が多くいました。

 その横断中の死亡事故に多い「ある条件」があるといいます。

愛知県警交通総務課の担当者:
「歩行者側からすれば、左から来る車にはねられるケースが多い」

 14日夜、三重県川越町で84歳の女性が死亡したひき逃げ事故では、女性は横断歩道のない道路を歩いて渡っていましたが、左から来た車にはねられました。

 愛知県で、夜間に信号のない道路を横断中にはねられ死亡した高齢者のうち「左から来た車」にはねられたケースは、「右から」の場合の3倍です。

 なぜ歩行者の左側から来る車が危険なのか、実際に自動車学校で実験してみました。

 夜間に片側1車線の道路の両端にスタッフが立ち、車で時速15キロで走ってみると、左側はヘッドライトの明かりで姿が確認できますが、右側は対向車線を挟むこともあり、明かりが届かず暗闇の中にぼんやりと見える程度でした。

愛知県警交通総務課の担当者:
「(運転手は)ライトが当たる所を見てしまうということがあるかと思います。右から横断してくる歩行者に対しては、自分のライトの照射範囲内に入ってくるまで、やはり時間がかかるのかなと思います」

 また、見えづらさだけでなく、別の要因もありました。

(リポート)
「車はここから70メートル離れた所にあるんですが、ヘッドライトが届いていないということもあって、かなり遠くに感じます」

 70メートル離れ、遠くに見える車が時速50キロで走行すると、目の前を通過するまでに6秒もかかりません。

 一方、高齢者が歩く速度で「片側1車線、幅6メートル」のよくある道路を渡ってみると、渡りきるのに6秒かかりました。

 高齢者の歩行速度は「秒速1メートル」と言われていて、横断するのにかかった時間は「6秒」。遠くに感じても、道路を渡り切る前に車が来てしまいます。

 車からの見えにくさと、渡り切るのに必要な時間。これが夜間に横断する際に「左から来る車」に注意が必要な理由でした。