愛知県豊橋市に、障がいのある人や引きこもりの人など、様々な人が働く人気のチョコレート専門店があります。この店の代表の男性は、障がいのあるスタッフたちとバレンタイン商戦向けの新作を開発。チョコのトップブランドを目指しています。

■「人はみんな“デコボコ”あっていい」…障がいのある人たちが働くチョコレート専門店

 ジェイアール名古屋タカシマヤで開催中の、国内外の人気ブランドが集まるチョコレートの祭典「アムール・デュ・ショコラ」。

【画像20枚で見る】重い障がいあっても働ける社会に…チョコ専門店の代表が目指す“トップブランド”

この祭典に、5年連続で出店している「久遠チョコレート」は、代表の夏目浩次さん(44)が、“多様な人が働ける場所“を作りたいと、2014年に立ち上げたブランドです。

久遠チョコレート代表の夏目さん:
「タカシマヤだけでしか販売しない『デコボコボックス』。人はみんな“デコボコ”あっていいよねって」

 夏目さんは、「アムール・デュ・ショコラ」に向け、障がいのあるスタッフたちとともに、新作のチョコレートを作り上げました。

■厳選したカカオと日本の食材を組み合わせ…障がいのある人と作る人気のテリーヌチョコレート

 愛知県豊橋市に本店がある久遠チョコレートは、全国に52拠点、年商およそ15億円のチョコレート専門店です。看板商品の「QUONテリーヌチョコレート」(249円)は、世界30か国のカカオに、豊橋のお茶や次郎柿など日本各地の食材を混ぜあわせて製造。その組み合わせは150種類もあります。

全国の従業員およそ550人のうちの6割が、体や心に障がいがある人で、他にも引きこもり経験者や子育て中のママなどが働いています。

手先が器用な人は「飾りつけ」、集中力が高い人は「チョコを溶かす」など、それぞれ得意なことを担当し、品質が高くおいしいチョコを作っています。

夏目さん:
「雇う側だって、働く側だって失敗してもいい…。ただ大事なのはその目標に向かって“もがくこと”」

■重たい障がいのある人だって働きたい…重度障がいの人が働ける事業所を開設

 新たな挑戦として2021年6月に、重度障がいの人が働くことができる福祉事業所「久遠チョコレート・パウダーラボ」をオープンさせました。チョコレートに入れる茶葉や果物をパウダーにする仕事を、18人で担当します。

夏目さん:
「重たい障がいの皆さんだって働きたい思いはあるし、仕事をしたり役に立ったりすると楽しそう。障がい重たくても尊厳ある仕事、尊厳ある就労をしたい」

 スタッフは、お茶の葉を石臼で細かくする作業などを何度も教えてもらうことで、ゆっくりゆっくり覚えていきます。これまで重度の知的障がいのある人の労働に、まとまった賃金が支払われるケースは日本ではごくまれです。しかし、パウダーラボでは、1日5時間労働で月収5万円を保証しています。

重度障がいのある男性の母親:
「こういう仕事がやれるとは思っていなかったので嬉しい。今までよりも自分の意思を出すようになりました」

「久遠チョコレート」では、ハンディがある人でもどうしたら働けるか…。みんなで知恵を出し合い、助け合って能力を伸ばしていきます。

■すっきりしていて甘みも…雲海が出る茶畑で作られる茶をバレンタイン向けのチョコに

 この日、夏目さんは、愛知県東栄町を訪れていました。雲海が出る茶畑で、無農薬で作られる「雲上茶」をバレンタイン用の新作チョコにする考えです。100年続く昔ながらの製法で作られる、こだわりのお茶です。

夏目さん:
「すごい丁寧でコクがあって,すっきりしていて甘みがあってうまい」

その雲上茶をパウダーラボで、30分かけて手作業で粉末に。

夏目さん:
「機械(ミキサー)だと余計な熱が混ざって、素材のうまみが壊されちゃうので…。(石臼で)ゆっくり手でひいていくことで、お茶の味がそのまま残されていく」

 素早く菓子箱を作る名人に、フルーツを様々なサイズに切り分ける達人たちも。パウダーラボの皆さんは、すっかり菓子職人です。

 みんなで作り上げたバレンタイン用の新作「QUONテリーヌチョコレート 雲上」(3枚810円)は、一口食べれば、お茶の香りが口いっぱいに広がります。

もう1つの新作が、多様な人の手で作ったことをデコボコのデザインで表現した、名古屋タカシマヤ限定の「QUONカラフルベリーBOX」(4515円)。北海道産発酵バターで焼き上げたフィナンシェに、ドライイチゴをたっぷり使ったチョコレートなど、丁寧な手作業で仕上げています。

夏目さん:
「パウダーラボの皆が、日本一の祭典(アムール・デュ・ショコラ)に出ることが、リアルなやりがいと誇りになると思う」

■何年かかろうがカラフルな皆で1位を…目指すはチョコのトップブランド

 2022年1月20日、「アムール・デュ・ショコラ」が開幕。5年目の出店となる「久遠チョコレート」は、オープニングセレモニーにも招待されました。雲上茶を使った新作チョコも店頭に並びます。

女性客:
「まろやかなやさしい甘さ」

他の女性客:
「鼻からほうじ茶の香りが抜けて。食べ始めたら止まらないと思う」

夏目さん:
「目標(売上げ1位)、何年、何十年かかろうがやる。いろんなデコボコ組み合わせて、そんなカラフルな皆でもあそこ(1位)に行けるっていう社会を絶対つくる」

重い障がいがあっても働ける社会に…。夏目さんが目指すのは、チョコのトップブランドです。