移住して2年…焼き方競うコンテストで何度も優勝の『ステーキ王』人口約1600人の島にもたらした“変化”
ステーキの焼き方を競うコンテストで何度も優勝した経験を持つ27歳の男性は、たまたま旅で訪れた島の人々の温かさに触れ、2020年に愛知県南知多町の篠島に移住しました。移住してから2年、漁を手伝うなど地元の人たちにすっかり溶け込んだ男性は、今では新たに移住して来た若者たちの見本となっています。
■ステーキコンテストで何度も優勝…人々の温かさに触れ島に移住したステーキ王
愛知県南知多町の師崎漁港から船で10分の人口およそ1600人の離島・篠島。ステーキの焼き方を競い合う大会で幾度も優勝している日本チャンピオンの東大介さん(25)は、その腕前を生かしてこの島でステーキを焼いています。
東さん:
「島に来たら面白い人ばっかりで、島でステーキやハンバーガーを販売してほしいと言われて…」
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たまたま旅で訪れたこの島で人々の温かさに触れた東さんは、島のために何かできることはないかと2020年4月に移住しました。1日1組限定で、自慢のステーキを振舞いながら、合間を縫っては海で漁の手伝いもしました。
漁師の新美大二郎さん:
「どんくさいわ、肉焼くことしかようやらへんわ。(でも)なかなかいねえよ、こういうタイプは」
厳しくも面倒見のいい地元漁師のもとで、東さんはステーキ以外のことにも挑戦。島に溶け込もうと奮闘してきました。
■移住から2年で島にすっかり溶け込む…新たに移住して来た若者たちのお手本に
以前は調理機材を積んだトラックで移動しながらバーベキューを振る舞っていた東さんですが、現在は2021年11月にオープンした「デューテラス篠島」で働いています。
店内にはバーベキュー用のスペースもあり、ランチにはチャンピオンの腕前を生かした“赤身肉のステーキ”や、島で獲れた“新鮮な魚介類”も提供しています。
東さん:
「(魚を)さばけなかったんですけど、教えてもらって、まあまあです」
このカフェで働くスタッフのほとんどは、埼玉や鳥取などの県外からの移住者です。
札幌から移住してきた女性(33):
「どこかに引っ越したいと。ちょうど(知人に)声かけていただいて。どういう所か分からないけど行こうって」
若者たちとの会話を楽しみに、毎日島の人たちがやってきます。
埼玉から移住してきた男性(25):
「似たような境遇の方がいるだけでも心強い。東さんは基本『ノー』を言わない人で、(島の人から)誘われたときにあまり断らないところは、島での関係性を築く上で勉強になる」
東さんは、新たに移住して来た若者たちにとって“移住の先輩”としてお手本になっています。
■懇意になった漁師に可愛がられ…今ではすっかり島の人に
東さんが働くこのカフェは、漁のことを教えてくれた漁師の新美大二郎さん(39)が、東さんの才能を見込んでオープンさせました。
漁師の新美さん:
「基本、肉しか焼けへんけど。でも魚がさばけるようになったり、ユンボも運転できるようになったり、女の子としゃべれるようになったり。あんまりしゃべれん子だもんで、頑張ってやってくれとる」
新美さんは、東さんのことが可愛くてほっとけません。
たくさんの島の人と顔馴染みになった東さんは、今ではすっかり“島の人”です。
島民の男性:
「こんなにいらんなら、東にやればいいじゃん。エビ持ってく?」
東さん:
「いいんすか?ありがとうございます」
こんな優しさも、島ならでは。ただ、喜んでばかりもいられません。
東さん:
「人は少なめ、まん延防止が出たのでバーと雑貨屋は休んじゃってます…。寂しいけど、仕方がない」
本来なら旬のフグなどを求め日帰りの観光客がやって来る時期ですが、島は閑散としています。
得意のバーベキューもキャンセルになる日が増えていますが、今は「アフターコロナ」に向けて準備しながら、我慢の時期を過ごしています。
■「BBQを使って篠島のファンを増やしたい」…2年経っても変わらない島を愛する思い
カフェの営業終了後に、東さんと新美さんは、篠島自慢のカキを使った春休みのイベントを考えていました。
東さん:
「篠島のカキをみんなに知ってもらおうと。(去年は)コロナで中止に…。店もできたし、今年はやろうと…」
島の人の役に立ち、島の素晴らしさを広めたい気持ちは変わりません。
漁師の男性:
「(東さんは)頑張っとるよ。島に馴染もうと消防団に入ったり…。若い子が来てくれるのはいいこと。そういう子には協力してやりたい」
女性客:
「少ない若い人たち。もっともっと、どんどん来て欲しい。とても嬉しいですよ」
男性客:
「島の人口も少ないし。いいんじゃないの活性化して」
東さんは、2022年1月に中古住宅を購入しました。
東さん:
「島で頑張ろうって気持ちで(購入)。篠島に来たときも、住む家を用意してくれて、『飯はあるのか?』って色んな人に声かけてもらって、肉も色んな人が食べに来てくれて…」
「得意のバーベキューで篠島を好きになってくれる人を増やしていきたい」。島の人の温かさに触れて移住した東さんの思いは、2年経っても変わっていません。