「金魚の町」として有名な愛知県弥富市ですが、実は「文鳥の町」でもあります。江戸時代に始まった弥富の文鳥の生産は、ピーク時には約200軒の農家が行っていましたが、現在は1軒だけに。文鳥文化を守ろうと、地元の高校生が飼育・販売をしたり、店が文鳥をモチーフとしたパンや大福を製造するなど、「弥富の文鳥」を盛り上げるために、様々な取り組みをしています。

■地元の高校生が江戸時代から続く文化を守る…文鳥の町でもあった弥富

 金魚で知られる弥富の電話ボックスの上には、「文鳥」のモニュメント。

【画像20枚で見る】愛知・弥富市は古くから『文鳥の町』歴史民俗資料館では“文鳥学芸員”ぶんちゃん勤務

マンホールには、金魚と一緒に文鳥が描かれています。町の人に聞いてみると…。

町の女性:
「佐屋高校の学生さんが育ててみえますよ、文鳥」

 地元の高校生が文鳥を育てているということで、お隣の愛西市にある「佐屋高校」へ。校内では生徒が文鳥の世話をしていました。

佐屋高校の女子生徒:
「エサと水を替えるのと、下に敷く新聞紙を替えています」

別の女子生徒:
「(世話は)大変ですけど、文鳥が好きなので。文鳥文化のことを知って、入りたいと思ってこの高校に来ました」

 そもそも弥富と文鳥の関係は佐屋高校の先生によると、江戸時代に繁殖が始まり、ピーク時には200軒ほど生産農家がありましたが、現在は1軒ほどまで減ってしまったといいます。

江戸時代に農家の副業として始まったという弥富の文鳥。その後全身が真っ白な「白文鳥」が突然変異で生まれたことから生産者が増え、一時は全国シェアの8割を占めるまでになりました。

しかし後継者不足などにより、今では生産農家がわずか1軒と存続の危機に瀕しています。

 そこで、佐屋高校では10年ほど前から本格的に飼育を始め、繁殖にも成功。2018年からは販売もスタートし、2021年度は40羽の文鳥を販売しました。

■「文鳥のおかげで来場者が2倍に」…人懐っこい文鳥と触れ合える民俗資料館

 文鳥をPRしているという「歴史民俗資料館」を訪れました。

学芸員の女性:
「ウチの職員の『ぶんちゃん』。文鳥学芸員として勤務しています」

 文鳥の魅力や生態を紹介するために、2018年に「おもてなし職員」として採用されたぶんちゃんは、資料館の学芸員として働いています。

同・女性:
「お客さんが、ぶんちゃんのおかげか2倍ぐらいに。若い女性とか中学生の男の子とか、いろんな人たちが来てくださるように」

 手のり文鳥として触れ合いも楽しめます。学芸員の女性は、ここに勤務して初めて文鳥の魅力を知ったといいます。

同・女性:
「鳥がこんなに懐くことを知らなかったので…。犬や猫と同じくらい懐くことに驚きました」

 手だけでなく肩に乗ったりと、人懐っこさが魅力です。

■1日に100個売れる人気商品に…母校の佐屋高校からの依頼で作った「文鳥パン」

 弥富の文鳥文化を盛り上げているのは、ぶんちゃんだけではありません。近鉄弥富駅前にある「こむぎ工房 あきらぱん」では、「文鳥パン」(198円※イートインの場合)が販売されています。

白文鳥をイメージしたキュートな「文鳥パン」は、食パンと同じ生地を使い、体部分のパンの中にはチョコレートが。顔の部分にはカスタードクリームが入っています。なぜ文鳥パンを作ったのでしょうか。

店主の男性:
「母校でもある佐屋高校から話をいただいて」

2018年に佐屋高校から開発を提案された店主の男性は、これまで10種類ほどを製造。「文鳥パン」は、多い日には1日100個売れる人気商品となりました。

■羽二重餅の中にはたっぷりの粒あん…文鳥に一目ぼれして作った「ぶんちゃん大福」

 弥富の文鳥グルメは他にもあります。創業60年の和菓子店「月花堂」では、文鳥の顔をした「ぶんちゃん大福」(180円)。

白の羽二重餅の大福に、赤いようかんでくちばしを、黒のようかんで目を入れて可愛さを表現。やわらかい羽二重餅と中の粒あんが相性抜群の大福です。

2019年に開催されたイベントで可愛い文鳥に一目ぼれした店主は、文鳥の大福を作ることを決意。今では人気商品となっています。

 高校での飼育活動から、資料館では職員として活躍。さらにパンや大福などのグルメと、弥富では文鳥文化を盛り上げています。