名古屋市緑区の閑静な住宅街に、2021年4月にオープンしたタルトの無人販売店があります。客は、ネットで受け取り日と商品を選び決済し、無人のお店に受け取りに行くだけ。コロナ禍の中、月替わりで3種類販売されるタルトは、地元の人たちを中心に人気となっています。

■ネットで注文決済した後に受け取りに行くだけ…SNSを駆使したタルトの無人販売店

 名古屋市緑区の地下鉄・相生山駅から徒歩10分のところに、スイーツの無人販売店「たった3年間のタルト屋さん」はあります。

【画像20枚で見る】SNSやネット駆使し“無人販売”…住宅街に『たった3年間のタルト屋さん』

 お客さんは、住宅のガレージ脇に設置された棚から、タルトの入った紙袋を取り出します。タルトは、月替わりで3種類が用意されています。

女性客:
「たくさん買っちゃいました。毎月違うタルトが出てくるので、毎月のように来ています」

別の女性客:
「(無人販売は)おもしろい。自分の好きな時間にピックアップするだけなので楽」

 この日は、ココアを練り込んだ生地にカカオ75パーセントのチョコレートをトッピングした「ショコラナッツタルト」(1080円)に…。

アーモンドクリームに有機栽培のほうじ茶を加えた、甘みも苦みも楽しめる「有機ほうじ茶タルト」(1080円)、カルボナーラソースを混ぜてベーコンをトッピングした「カルボナーラタルト」(1080円)の3種類が揃います。

 店はSNSで販売日を告知し、客は商品を選び、受け取り日を指定してネットで決済。後は指定した日に商品を受け取りに行くだけです。無人スタイルにしたのには理由がありました。

オーナーの丹羽萌子さん:
「こういうご時世もあって非対面で。人件費もかからないからこの値段で販売できる。お客さんもお化粧しなくてよくって、子供が泣いちゃってもすぐ取ってドライブスルーみたいに行けるので…」

 コロナ時代の新しい販売スタイルです。

■自分の好きな時間だけ働く…子連れ出勤もOKの“スタッフファースト”の店

 タルトを作っている厨房は、販売所の奥にあります。スタッフは全員女性で、この日は丹羽さんを含め4人が働いていました。中には、お子さんを背負いながら働くママも…。この店には、女性が楽しく働くための秘密がありました。

丹羽さん:
「スタッフファーストで自由に働いてもらっているけど、責任は持ってもらっている」

 タルトの製造は月に4日のみで、スタッフは午前10時~午後5時の間の好きな時間に働く事ができます。子連れで働くのも、急用などで途中で帰宅してもOKです。

3歳の息子を持つ女性(30代):
「自分の時間でできるのが一番大きい。やれる分だけやって、帰る時間も自分で決められるところがいい」

1歳の息子を持つ女性(30代):
「本来なら(育児で)働けない期間なので、この子をおんぶしながらできるのですごくいい」

丹羽さん:
「本来なら、たくさん売って利益を伸ばしていくけど、スタッフが『もう今日はこれしか作らない』って言えば、それだけで売り切り。働く人たちを基準に」

育児に多くの時間を割き、急な変化にも対応しなければならないママからは好評で、時間などを自由に決められる分、自分で決めた個数は責任を持って仕上げています。

■誰でも簡単に美味しいタルトが作れるレシピを考案…扱うスイーツをタルトにした理由

 扱うスイーツをタルトにしたことも“スタッフファースト”に繋がっています。丹羽さんは、お菓子を作ったことが無い人でも簡単に美味しく作れるレシピを考案。

現在在籍する4人の中には、お菓子作りが得意でない人もいます。しかし、レシピ通りに材料を混ぜて20分ほど焼くと…。

スタッフの女性:
「いい色、めちゃくちゃいい感じです」

タルトのベースが焼き上がりました。ナッツがたっぷり入ったアーモンドクリームを詰めて、チョコレートをトッピングすれば完成。丹羽さんが考案した失敗しないレシピのおかげで、誰でも簡単に美味しいタルトが作れます。

 オーナーの丹羽さんは、約12年前にお菓子教室を開いていました。その中で、ある考えが浮かびました。

丹羽さん:
「生徒さんとかお友達から『ちょっと働きたい』って。私も『ちょっと手伝ってほしい』っていう時があって、子育てしながらも働くことができる『ちょい働き、ちょい雇用』ができる環境を整えたくて」

スタッフの女性:
「すごく気分転換になって、いろんな人としゃべったりお菓子作ったりでストレス発散に」

別のスタッフの女性:
「働きに行くと全部決められているし、自由に働くという環境はほとんどないので、ここはそれが叶うとこなのでとても素晴らしい」

 スタッフの賃金は作ったタルト1個につき200円。この日は、スタッフ2人で50個のタルトを製造し売上予想は約5万円で、スタッフの賃金は1人あたり約5000円です。

 店名の「たった3年間のタルト屋さん」にある通り、丹羽さんは、この店を3年だけやることを決意しました。

丹羽さん:
「コロナ禍もあって、普通のスタイルでは新しいものは生まれない。だいたい3年間やればいろんなことが見えてくる。私自身が実証実験したくて…」

■客からの「ありがとう」が原動力に…不定期でマルシェも開催

 店はオープンからまもなく1年経ちますが、丹羽さんは新たな試みを始めています。

丹羽さん:
「無人だと、やっぱり人と会って話したいっていうのが湧いてきて。不定期なんですけどマルシェを」

 2021年11月から、無人販売所の奥にある厨房でマルシェを始めました。大きないちごのスイーツ「特大いちご」(250円)や…。

「キャラメルバスクチーズケーキ」(495円)など、タルト以外のスイーツにも挑戦しています。

女性客:
「インスタで見てかわいいと思った」

別の女性:
「子供と一緒に選べるのがいい」

 お皿や花瓶といった雑貨も並べました。

女の子:
「友達へのいいプレゼントが見つかってうれしい」

丹羽さん:
「お客さんの『ありがとう』が聞けて、働きがいが生まれる。『ありがとう』が私たちの原動力になっているとすごく実感した」

「たった3年間のタルト屋さん」は、様々な挑戦を続けています。

 3月の月替わりのタルトは「苺ミルク クリーム付き」と「ブルーベリー チーズケーキクリーム付き」と「ベーコンポテト ローズマリー風味」(各1080円)の3種類です。お店の仕組みは、ネット上で商品と日時を選び決済の上、無人店舗に受け取りにいきます。全国への冷凍発送も行っています。