愛知県みよし市に、ほどよい酸味で人気のイチゴがあります。青果の仲卸業者が最新の技術を生かして作ったこのイチゴは、市場に1%しか流通していない希少な品種です。直売所には朝採れたてのイチゴを求めて次々と客が訪れます。

■青果の仲卸業者が最新の技術を駆使して開発…“ほどよい酸味”で人気の希少な品種「よつぼし」

 愛知県みよし市にあるイチゴ農園「丸進ファーム」には、人気の直売所があります。この直売所では、「よつぼしM」(490円)など、朝収穫したばかりの新鮮なイチゴが並びます。

【画像20枚で見る】ITと人間の勘を組み合わせ栽培…市場での流通量1%の希少なイチゴ『よつぼし』

女性客:
「すごく美味しい」

別の女性客:
「ここが出来てからは、(他の)お店で買わない」

一度食べたら虜になるというこのイチゴは、市場にわずか1%しか流通していない希少な品種で、その特徴は“ほどよい酸味”です。

この品種は、「甘いだけでなく“ほどよい酸味”がのったイチゴこそが最高に美味しい」と、青果の仲卸業者が最新の技術を駆使して栽培に挑戦。2017年に品種登録されました。

 この希少なイチゴは、鈴木邦夫さん(66)が大切に生産管理をしています。

■生産効率の悪さから生産する農家はわずか…市場にわずか1%しか流通していない希少な品種

“よつぼし”は、旨味、酸味、風味が四つ星級に美味いと、その名が付けられました。最近のイチゴは甘さを売りにした品種が主流なのに対し、“よつぼし”の売りは“ほどよい酸味”です。

鈴木さん:
「一般的には“大きくて甘い”イチゴが美味しいものと思われていましたが、『本当にそうだろうか』と。美味しいイチゴの新基準を作ってみようと探したところ、『よつぼし』にあたった」

 鈴木さんは、もともと生産管理のエキスパートで、スーパーに野菜や果物を納める仲卸の会社に「他にない美味しいイチゴを作って欲しい」と2019年にスカウトされ、“よつぼし”の栽培に携わってきました。

 しかし、なぜ“よつぼし”は市場にわずか1%しか流通していないのでしょうか。

鈴木さん:
「“収量が少ない”、“大きくない”、“手間がかかる”と。生産者にとってメインで『よつぼし』を作ったら儲からないという構造があります」

美味しさは抜群ですが、その生産効率の悪さから、なかなか一般の農家では手が出しづらい品種だといいます。

■ITと人間の勘を組み合わせて栽培…先端技術を活用した“スマート農業”を実施

 鈴木さんは、定期的にタブレットを確認しています。

鈴木さん:
「一番イチゴの生育に重要なものは、温度と水と光合成のためのCO2。どの様な数値になっているかをチェックしている」

 丸進ファームでは、“よつぼし”を作るために、ITや農業、生産管理に強い人材を集めて“スマート農業”を実践。ハウス内には、イチゴに肥料と水を与える装置もあります。

鈴木さん:
「2時間に1回ぐらいチョロチョロと水をやる。イチゴの気持ちに沿った栽培方法の制御をしている」

 さらに、自動カーテンでハウス内の温度調整も管理。しかし、機械に頼りっきりでもいけないと鈴木さんは話します。

鈴木さん:
「管理をしたらそれで終わりじゃなくて、実際に観察してダメなら思っている仮説がうまくいってない。どうしたらいいか、次の行動を常に繰り返している」

ITと人間の勘や洞察力を組み合わせて栽培をしています。

■糖度13度以上の大きなイチゴだけを選抜…22個で4000円の贈答用のブランドイチゴ

 直売所は10時にオープン。大きさごとにパックに詰められたイチゴが並びます。1粒10グラム前後のイチゴが約25粒入った「よつぼしM」(490円)や、1粒35グラム以上の「よつぼし5L」(800円)などを求め、次々に客が訪れます。

女性客:
「(よく)来ます。甘みが美味しい。いつもこの時期は、お土産にこのイチゴを買っていきます」

隣の東郷町から来た男性は…。

男性客:
「奥さんの友達が『ここの安いイチゴ美味しいよ』って。食べたら美味しくて、また…」

口コミで話題となり、お土産としても人気になっています。

 さらにプレミアムな商品があります。

鈴木さん:
「いま糖度を測っています。3Lというサイズ以上のもの、かつ13度以上の糖度のものを、ブランド名『四重奏』と名付けて販売しております」

 流通全体のわずか1%という“よつぼし”の中でも、特に大きくて糖度が高いものを選抜した贈答用の「四重奏」(3L 22個入り 4000円)も。少し値は張りますが、今シーズンだけで800箱売れました。

■味が濃厚で余韻が残る…極限まで乾燥させた新商品「フリーズドライ四重奏」

 人気の“よつぼし”は、お店でも食べることができます。

農園から約2キロの所にあるショッピングモール「ららぽーと愛知東郷」内の「モンスーンカフェ」には、“よつぼし”を使った4種類のスイーツがあります。

一番人気の「ストロベリーパフェ」(1200円)は、収穫したばかりの新鮮な“よつぼし”のほどよい酸味と、甘いクリームとの相性が抜群です。

 さらに、丸進ファームでは新商品を発売。極限まで乾燥させた「よつぼしフリーズドライ四重奏」(2本セット 4400円)は、味が濃縮され、特徴でもある酸味がより強調されています。

鈴木さん:
「常温で管理出来て、通年で食べられる。水分を90%飛ばしていますので、味が濃厚で余韻が残るイチゴ」

贈答用にと四重奏の名を付け、高級感あるパッケージに仕上げました。

「大切な人に贈るイチゴを作りたい」と話す鈴木さんは、希少なイチゴを生かして、街の新たな名物を生み出します。