二人三脚で50年以上…夫婦が守り続ける絶品の『ういろ』開店1時間半で90本完売も“自分たちのペースで”
名古屋市中区に、知る人ぞ知る「ういろ」の名店があります。70代の夫婦が毎朝手作りしているこのモチモチで甘すぎない「ういろ」は、午前中に売り切れるほどの人気商品です。
■口当たりがよく柔らかい…モチモチでほのかな甘みが特長の名物「ういろ」
名古屋市営地下鉄の千種駅からほど近くの広小路通り沿いに、1934年創業の和菓子店「菊屋」はあります。毎朝手作りしている店の看板商品の「ういろ」(1本500円)は、モチモチでほのかな甘みが口の中に広がります。
【画像20枚で見る】二人三脚で50年以上…夫婦が守り続ける絶品の『ういろ』開店1時間半で90本完売
女性客:
「ふわっとした舌触りがいい、食べやすい」
男性客:
「東京の歌舞伎友達が、ここのういろ大好きで…」
絶品の「ういろ」を作るのは、2代目の小山孝さん(77)と、妻の美幸さん(73)です。
小山さん:
「口当たりがすごくいい。柔らかくておいしい、それでさっぱり感がある」
夫婦二人三脚で作る、味、歯切れ、舌触りが自慢の「ういろ」です。
■昔ながらの手作りにこだわる…夫婦で50年以上守り続けてきた味
午前5時、小山さんの姿は厨房にありました。ういろは毎朝、その日の分だけ作ります。材料は少し粗めの米粉に、砂糖、デンプンを加えて100度近い熱湯を入れ練り上げます。
小山さん:
「お湯の量が一番の命。ういろは水分量だけで決まっちゃう。これですごくいい状態、最高」
温度が下がらないうちに手早く混ぜる。このかき混ぜる時間が、仕上がりの良し悪しを決めるといいます。
挽きたての風味豊かな抹茶や、沖縄から取り寄せたやさしい甘さの黒糖などで色と味を付けたら、2時間蒸し上げます。時間が経つと味が変わってしまうため、小山さんは出来立てにこだわります。
そして、蒸したての「ういろ」は、釣り糸を使って切り分けます。
小山さん:
「包丁はくっついちゃって能率が上がらない。糸だとスッキリ取れる」
切り分けると、妻の美幸さんが、銀紙で一つ一つ丁寧に包みます。
美幸さん:
「楽しいよ、楽しくなかったらやっていない。腹が立つこともいっぱいある。そういう時は、友達と遊びに行く」
50年以上、夫婦二人三脚で守り続けてきた店の看板商品「ういろ」(1本500円)は、シンプルな「白」に、上品な香りの「抹茶」、華やかな香りの「桜」と「黒糖」の4種類。
中でも1番人気は「黒糖」で、深みのある甘みとコクが口の中に広がります。
■「しっとりとして美味しい」…遠方から自転車でやってくる常連も
午前9時30分。店を開けるとすぐに、女性がやって来ました。接客は、美幸さんの担当です。
女性客:
「朝、早く来ると(ういろが)まだ温かい。それがまたおいしい。色もキレイ」
10本購入した男性は、遠くに住む親戚に送るといいます。
男性客:
「他のういろとは違う。食感も違うし、味もいい、甘すぎない」
中川区から自転車でやってきた常連もいました。
女性客:
「ういろはここ。やっぱりしっとり感、カチカチじゃない。ほんとにおいしい」
時には、売るのも買うのも忘れて、世間話に花を咲かせることも…。
男性客:
「とっても明るくて、ここに来ると元気になる」
女性客:
「羨ましいくらい仲がいい、もうやけちゃう」
小山夫婦の気さくな人柄が、まるで親戚の家に来ているような感じです。
■無理のないペースで細く長く…自分の代でのれんを下ろすと決めた店主
「菊屋」の2代目として生まれた小山さんは、京都で和菓子の修業をし、50年ほど前に店に入りました。当時から「ういろ」は販売していましたが…。
小山さん:
「食べた感じではまずかった。こんな『ういろ』よく作っていたなと思って、私がどんどん開発していって…」
風味や食感をより一層高めようと、材料や製法などを見直し改良を続けました。その結果、味、歯切れ、舌触り、どれも納得がいく「ういろ」が完成。そのおいしさから、大勢のお客さんが足を運ぶようになりました。
午前11時。菊屋の「ういろ」は、保存料を一切使わず日持ちがあまりしないため、その日のうちに売り切ります。
美幸さん:
「今日に限ってない」
女性客:
「一本もない?ここのしか食べないもんで」
美幸さん:
「ごめん」
この日は、開店から1時間半で用意した90本が完売。
小山さん:
「昔は売り切れたらすぐやった(作った)けど、それやると体を壊しちゃう。無理はいかん、無理はどっかでコケる。無理しないようにやるのがベスト、細く長く」
自分の代で店を閉めると決めている小山さんは、1人でも多くの人に味わってもらうために、少しずつでも自分たちのペースで「ういろ」を作り続けています。
小山さん:
「女房についていくだけでも楽しいし、自分は自分で面白い。がんばれるだけ、がんばっていきます」
夫婦二人三脚で営む町の和菓子店には、おいしい「ういろ」と人々とのふれあいが溢れていました。
「菊屋」は、名古屋市中区葵にあります。名物「ういろ」は、1日に作る量に限りがあり、ほとんど午前中で売り切れるため、電話で予約するのがオススメです。