3月24日、名古屋市瑞穂区の交差点で、横断歩道を歩いていた小学生の女の子2人が信号無視の車にはねられ、1人が死亡、1人が大ケガをしました。この事故を受け、名古屋市の河村市長は、通学路などの信号交差点について「ラウンドアバウト」への転換を検討する考えを示しました。

 ラウンドアバウトについて、交通工学に詳しい名古屋大学の中村英樹教授に話を伺いました。

 ラウンドアバウトは「環状交差点」とも呼ばれていて、1960年代にロンドンから始まったとされています。ドーナツ型の交差点で信号がなく、車は交差点に入った後、時計回りに進む一方通行になり、目的の道路へ抜けていきます。

 最も有名なラウンドアバウトはフランスの凱旋門で、周りは放射状に道が伸びています。

 日本では2014年に道路交通法改正に基づき整備されはじめました。愛知県警によると、現在県内には11か所あります。実際にラウンドアバウトがある場所に行ってみました。

 名古屋市中区の官庁街にあるラウンドアバウト。2020年から運用されています。

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 実際に車で通ってみると…。

(リポート)
「歩行者がいるためゆっくりです。減速した状態で一方通行のためスムーズに入れます。円形のため、そこまでスピードは出せません」

 ラウンドアバウトでは車は時計回りの一方通行で、交差点内を走る車が優先です。そのため、交差点に進入する車は徐行して進入します。その効果について、名古屋大学の中村教授は…。

中村教授:
「まっすぐに進むことはできないですから、必然的にスピードを落とすわけです。そうすると、ぶつかったとしても死亡事故になる確率は非常に低いということになります。少なくとも、死亡事故が劇的に減っているという報告は各国共通しています」

 2014年に作られた愛知県一宮市のラウンドアバウトにも行ってみました。8年経ったこともあり、車も歩行者もスムーズに動いています。

 利用者はどう感じているのでしょうか。

利用するドライバー:
「僕は便利に思います。信号があるとどうしても待ち時間が発生するので」

別のドライバー
「最初は不便だったんですけど、(慣れたら)交差点で信号待ちとかないので、その分スピーディーに回れるかなと思います」

利用する歩行者:
「大抵みんな止まっていただけるので、渡りやすいです」

別の歩行者:
「車のスピードも落ちていますので、その面でも恐怖心は少し軽くなったと思います」

 中村教授に伺った、ラウンドアバウトのメリット・デメリットをまとめました。

<メリット>
・車の動線が交わる交錯点が少ないため、事故も少ない
・速度が必然的に下がるため、重大な事故が起こりにくい
・待ち時間が極めて少ない
・信号機がないので電気代や維持費がかからない
・停電時も影響を受けず、地震など自然災害が多い日本では特に有効

<デメリット>
・自転車は車道を走り、車と同じ時計回りがルール。もし知らずに反時計回りに逆走すると非常に危険
・信号交差点より広い面積が必要になる
・信号が無いため、巻き込み事故が起きやすい

 また、河村市長のアイデアについて中村教授は、「4車線などの大きな交差点には現状難しいが、生活道路のような小さな交差点で速度を落とす目的で導入するのであれば、効果が出てくる可能性もある」と話します。

 一方で、元レーサーで自動車ジャーナリストの桃田健史さんは、「ラウンドアバウトで減速をして重大事故は防げるが、歩行者などがいなければ車両に一時停止義務はない。最近、横断歩道に歩行者がいても止まらない車が多いのと同様、ラウンドアバウトにすることで車が止まらず、歩行者への接触がかえって増えてしまう恐れがある」と話しています。