同じ票数で最下位で2人が並んだ、2021年3月の三重県伊賀市の市議会議員選挙で、8日、1年余りにわたって続いた争いが「くじ引き」で決着しました。

 三重県伊賀市内のホールにやってきたのは、市議会議員に立候補した2人の男性。室内に張り詰めた空気が漂います。

司会:
「只今から、当選人を定めるための『くじ』を執り行います」

 なぜ「投票」ではなく「くじ」で議員を選ぶことになったのでしょうか。

 事の発端は、2021年3月に行われた伊賀市の市議会議員選挙。1098票を集めた北山太加視さん(66)が、最下位ながら初当選を果たしました。

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 一方、元市議の福村教親さん(60)は北山さんと「3票差」で惜しくも落選。この「3票」をめぐり、異議を申し立てた福村さんが県の選挙管理委員会に票の審査を求めたところ、意外な事実が発覚しました。

福村さん:
「名前の混在とか、他の候補者と苗字と名前が混在しているのもあるんですけども」

 実際に投票された手書き票の写し。「北山『さとし』」と書かれたものが2票あります。しかし、候補者・北山さんの名前は「たかし」。記入の際に間違えたのでしょうか。

 市議選には、岩田『さとし』さんという別の候補者も出馬していたため、県の選管は「どちらに投票されたか判別できない」として、この2票を無効としました。

 一方、福村さんの名前を間違えたとみられる「福『岡』のりちか」の1票が、当初の「無効」から一転「有効」となり、2人の得票数が1096票で並ぶことに。

 これを踏まえ、県選管は2021年7月、北山さんの当選を「無効」としたうえで、公職選挙法に基づき、くじ引きで当選者を決める決定を出していました。

福村さん:
「やりたくないなと。そんな怖いくじ引きは、純粋に引きたくないという気はしていますけども。(Q.くじ運は強いですか?)強いと思ったことはないですね」

 2人はこのくじ引き決定を不服として、取り消しを求め名古屋高裁に提訴しましたが、訴えは棄却。その後、北山さんが上告したものの最高裁が退けたため、当初の選管の決定に従い、くじ引きが行われることになりました。

 市議選から1年以上経って迎えた8日のくじ引き。「1」から「10」の数字のうち、より小さい数字が書かれたくじを引いた方が当選です。

 結果は北山さんが「7」、福村さんが「10」。北山さんの「当選」が決まりました。

北山市議:
「7番が出ましたので、『おっ』ていう震えがちょっと走りました。どちらの候補が当選しても伊賀市を思う気持ちは一緒ですので、たまたま私が当選させていただいたと受け止めさせていただいております」

 一方、くじで敗れた福村さんは…。

福村さん:
「これで決着がついたので、ある意味スッキリしています。市政のために、北山さんにこれから活躍していただきたいと思っております」