パンにあんことバターをサンドした「あんバター」と、名古屋名物の「小倉トースト」は、材料もほとんど一緒で見た目も似ています。最近人気のあんバターは、果たして小倉トーストの影響を受けて生まれたのか。あんバター誕生の経緯を調べると、コメダ珈琲の小倉トーストに影響を受けて2017年頃に韓国で起こったあんバターブームが逆輸入され、日本でもあんバター人気となっていることがわかりました。

■バターの塩気とあんこの甘さが相性抜群…1日100個以上売れる「あんバター」

 名古屋市東区にあるベーカリー「テーラテール」。

【画像20枚で見る】最近人気の“あんバター”…名古屋の喫茶店店主「小倉トーストじゃん」似ている2つの関連性は

ショーケースの中には、「あんバター」(1個265円)が並びます。この店では、あんバターは1日100個以上売れる“トレンドパン”となっているといいます。

女性客:
「イチゴのあんバター、春の限定商品。スタバとかでも流行っていて」

 店内のイートインスペースでも、あんバターを注文するたくさんの人が…。あんバターの何が人々をひきつけるのでしょうか。

別の女性客:
「罪悪感とぜいたく感が一緒になった特別な感じ…」

パンに板状のバターと、北海道十勝産のあんこをサンドしたあんバターの最大の特徴は、バターの塩気とあんこの甘さのコントラスト。心地よい甘味が口いっぱいに広がります。

■小倉トーストを知らない世代も…見た目ソックリの「あんバター」と「小倉トースト」

 あんバターについて、街で聞きました。

女性:
「(あんバターは)インスタで(知った)」

別の女性:
「最近、みんな食べているイメージ」

また別の女性:
「(投稿が)SNSで多いなって」

インスタで「#あんバター」で検索してみると、17.8万件もの投稿が。多くの店で人気メニューになっているようです。

あんバターには、食パンにサンドした「サンドイッチタイプ」から、あんことバターの上にバニラアイスが乗った「進化系」まで。

さらに、大手メーカーも商品化するなど、あんバターはブームとなっているようです。

 アラフォー世代に聞いてみると…。

女性:
「あんバターは初めて聞きます」

別の女性:
「小倉トーストに似ていますね。形以外は同じじゃない?」

「小倉トーストに似ている」という意見も。あんバターと小倉トーストを比べてみると、確かに見た目が似ています。ちなみに、小倉トーストについて若者に聞いてみました。

若い女性:
「あまり食べないですね…」

別の若い女性:
「(小倉トーストを見たこと)ないです」

中には、小倉トーストを知らないという人もいました。あんバターと小倉トーストには、どのような関係があるのでしょうか。

■小倉トーストのある名古屋ならヒットするのでは…2020年からあんバターを販売する店

 あんバターのルーツを調べるために、2020年からあんバターをメニューにしている名古屋市昭和区の店へ。

この店の「あんバター」(270円)は、ハードタイプのパンに、きな粉がかかったバターとあんこがサンドされていました。

店主:
「やっぱり名古屋の方は小倉トーストとかあるし、あんことバターが好きなんじゃないかと始めたら、やっぱり好きでした」

小倉トーストが受け入れられているなら、この組み合わせもきっとヒットすると思ったといいます。しかし、あんバターの発祥についてはわかりませんでした。

■あんとバターを挟むのは小倉トーストをヒントに生まれたのか…小倉トースト発祥の店で調査

 続いては、円頓寺商店街にある小倉トースト発祥の店として知られる「喫茶まつば」へ。

トーストした食パンにバターとあんこを乗せた小倉トーストは、名古屋のソウルフードで、その誕生は約100年前にさかのぼるといいます。

まつばの店主:
「学生さんが、ぜんざいにパンをつけて食べているのをママさんが見て『あ、これイケる』と、小倉トーストが生まれた話を聞いています」

小倉トーストは、ぜんざいにパンをつけたことがきっかけで生まれたといいます。店主に、あんバターについて聞いてみると…。

店主:
「(初めて見たとき)『小倉トーストじゃん、名古屋でずっと前からやっているじゃん』って…。最近、流行っているって言ってるけど」

店主はやはり“似ている”と感じたといいます。あんとバターをパンで挟むスタイルは、小倉トーストをヒントに生まれたのでしょうか。

店主:
「聞いた話では、青森の吉田ベーカリーが始めたって…」

青森の吉田ベーカリーが開発したという説が浮上しました。

■店主「小倉トーストの影響は受けていない」…70年前に青森で生まれたあんバターは青森独自の文化

 名古屋から遠く離れた青森に、あんバターのルーツがあるのではないか。

真相を確かめるべく、電話で吉田ベーカリーにその発祥について聞くと、店主ははっきり「うちがあんバターの元祖」と断言。その元祖あんバターは、見た目は同じサンドイッチタイプで、小倉トーストにとても似ています。

 店主によると、あんバターは昭和30年7月に発売。それ以来、地元では長年ソウルフードとして親しまれてきたといいます。しかし、小倉トーストが生まれたのは、あんバターの誕生より30年以上も前。あんバターは、小倉トーストの影響を受けていないのでしょうか。

同・店主:
「いや、(影響は)全くない。ある日、職人さんたちが休憩に、パンの耳に色々なモノを塗って食べていた。あんバターを食べた時に、『これ今までにない味だ!絶対売れる!』って」

実際に店で販売してみると、500メートルの行列ができるほどの人気になったといいます。

青森のあんバターは、まかないから生まれた青森独自のソウルフードで、小倉トーストとは関係がないことがわかりました。

■「韓国のあんバターブームが日本にきたのは間違いない」…韓国から逆輸入されたあんバターブーム

 しかし、これだけ似ている2つのメニューには、何らかの関係があるのではないか。名古屋めし研究家のswindさんに話を聞きました。

swindさん:
「あれ(あんバター)は、完全に小倉トースト。名古屋のコメダの小倉トーストが、全国にあんことバターの組み合わせを浸透させ、非常に大きな影響を与えた」

「コメダ珈琲」が今のあんバターブームに深く関わっているといいます。swindさんによると、コメダ珈琲は2003年頃に全国展開を開始。各地に進出していくことで、小倉トーストの知名度は一気に全国区となったといいます。その後…。

swindさん:
「(最近のあんバターブームの)出発点は韓国。ちょうどコメダが全国に広まって、韓国の方も観光でたくさん来ている時期。韓国の方がコメダで『こんなおいしいモノあるんだ』と向こうで作った可能性もある」

 そして韓国では、2017年頃に日本に先駆けてあんバターブームに…。その際、コメダの小倉トーストが参考にされたとswindさんは話します。

swindさん:
「韓国のあんバターブームが日本にやってきたのは間違いない。あんこのバターの組み合わせは、すでにコメダによって広く受け入れられるようになっているので、非常に簡単に浸透していく」

あんバターは小倉トーストの影響を受けて誕生したのかを調べると、コメダ珈琲の小倉トーストに影響を受け2017年頃に韓国で発生したあんバターブームが逆輸入され、今のあんバター人気となっていることがわかりました。