コロナ禍で、“お酒を飲まない”生活スタイルが広がっています。国税庁の調査によると、2016年度の成人1人あたりの酒類消費量は1990年度の8割にまで減り、徐々に“酒離れ”は加速しています。“あえて飲まない”人たちを取材すると、コロナ時代を経て、“酒から離れた生活を楽しむ”という新しい価値観が広がっていることがわかりました。

■「コロナ前は会社の会で飲む機会も多かったけど」…コロナを契機に“酒離れ”する人たち

 名古屋市北区の名城公園で汗を流す、名古屋市の会社員・林俊孝さん(45)。林さんは、1か月150キロを目標にほぼ毎日走っています。

【画像20枚で見る】広がってきた新しい価値観…コロナ禍で加速する“酒離れ”「意外とお酒無くても楽しめる」

そんなストイックな林さんですが、かつては仕事の付き合いもあり、毎週のように飲み会に参加。好きな酒はビールとハイボールで、ひとたび飲み会に参加したら、それぞれ4杯ずつは飲んでいたといいます。

林さん:
「コロナ禍を契機に変わっています。今は1か月に1回あるかないか…、下手したら2か月に一回とか」

飲み会は月に1回で、ランニングはほぼ毎日。林さんのように、コロナをきっかけに“酒離れライフ”にシフトする人は少なくありません。

40代の男性:
「コロナ禍になってから、あまり飲まなくなっちゃいました。生活を見直そうって」

40代の女性:
「最近はほとんど飲んでない。コロナ前は会社で飲む機会も多かったので、定期的に飲んでいたんですけど…」

■コロナ前に5種類だった商品が40種類に拡大…ビールだけでなく日本酒までが“ノンアルコール化”

 “酒離れ現象”は、酒の専門店でも…。

酒専門店の店長:
「『ノンアルコールのコーナー』になっています。最近入ったものは、“ワインの休日”とか、“レモンズフリー”とか…」

酒の専門店で店内の一角を占める、“ノンアルコール”コーナー。コロナ前まで5種類ほどしか扱いがなかったノンアル商品が、今では8倍の40種類にまで拡大しています。

“ノンアルビール”に、“ノンアルワイン”、さらには“ノンアル日本酒”まで。豊富なラインアップとその人気ぶりから、様々な種類が楽しめる“ノンアル缶12本セット”まで用意していました。

同・店長:
「僕もこれ(ノンアルカクテル)飲むんですけど、(酒を)飲んだ気がするんですよ。今日は酔いたくないけど、ちょっと飲みたいなってときは、こっちにして。そうすれば妻と夜しゃべれるじゃないですか」

酒店の店長まで、私生活ではノンアルコールにシフトしていました。

■消費税増税や飲酒運転の厳罰化の影響も…経済・社会要因等で徐々に減少してきた“酒の消費量“

 こうした“酒離れ”の傾向は、実はコロナ前からじわじわと広がっていました。国税庁の調査によると、平成に入り20歳以上の人口は増加する一方、1990年度に約100リットルあった成人1人あたりの年間の酒類消費量は、2016年度には約80リットルと、およそ2割減少。

こうした背景について、アルコール市場に詳しい専門家は次のように分析します。

アルト・アルコの安藤裕社長:
「酒離れの背景に見えてくるのが、まず経済要因。消費税増税だったり、経済危機のようなもの。次が健康要因、より健康意識が高まったりとか。最後が社会要因、酒への風当たりの変化も大きい」

この分析をもとに、酒類消費量のグラフを見ると、「消費税増税」に、「リーマンショック」、「保険料負担増」や「SARSの流行」、さらに「飲酒運転の厳罰化」の翌年など、経済、健康、社会的要因を受けながら、徐々に酒の消費量が減っているのがわかります。こうした状況の中、コロナ禍で更に酒を飲む機会が減り、“酒離れ”が加速したとみられています。

安藤社長:
「昔の方たちって、酔うことに意味を見出していたけど、コロナの健康要因もそうですし、消費税増税っていうのも割と最近の話ですし、まだまだノンアルコールのプラストレンド(増加傾向)は続くのかな…」

ノンアルコールライフは、まだまだ続くのでしょうか。

■「意外とお酒がなくても楽しめる」…コロナの時代に広がる新しい価値観

 名城公園で“酒離れラン”に勤しんでいた会社員の林俊孝さんが、この日訪れたのは、名古屋市千種区にあるバー「プラスコンブッカ」。

店主:
「今日(のオススメ)だと、新緑っていう文旦(ぶんたん)と山椒を漬け込んだ…」

“行きつけの飲み屋”のような雰囲気の中で、林さんに出されたのはワイングラス。見た目も雰囲気も完全にワインバーですが、グラスの中身はモデルにも人気の“発酵ドリンク”で、もちろん“アルコールゼロ”の健康ドリンクです。

別の客:
「代謝が上がったのと、お通じが良く。デトックスできている感がすごくあります」

林さん:
「1杯飲んだだけでも腸に効いている感じがします」

酒がなくても弾む会話。“酒離れ”でたどり着いた、新しい楽しみ。

林さん:
「ワイワイやるのが好きなので。今までは酒を飲んで盛り上がるのがありましたけど、意外とお酒がなくても楽しめるなと。お酒はお酒の楽しみ方、場面場面で選択できればいいのかな」

“酒から離れて楽しむ”オトナの生活。コロナの時代を経て、新しい価値観が広がっています。