2022年3月、ウクライナ人の3歳の女の子が、母や姉ら家族4人でウクライナから岐阜県各務原市に避難してきました。そして5月、女の子は日本の幼稚園に初登園し、言葉の通じない日本での第一歩を踏み出しました。

■ウクライナから日本に避難…幼稚園へ初登園の3歳のミアちゃん

 3歳のマリッチ・ミアちゃんは、母のナタリヤさん(32)ら家族4人で、岐阜県各務原市に住んでいる伯母のスビトラーナさん(39)を頼り、ウクライナの激戦地・ドンバス地方から避難してきました。

【画像20枚で見る】泣きながら“大脱走”…ウクライナから家族と避難したミアちゃん3歳 初めての「幼稚園」

 避難生活もおよそ50日が経った5月6日、ミアちゃんは日本の幼稚園に初登園する日を迎えました。

伯母のスビトラーナさん:
「(ミアが幼稚園に行けるの)信じられない。幼稚園の制服見て、本当に姪っ子が日本の幼稚園に行くって。この子はすごい楽しみにしている。昨日から『学校いく、学校いく』って」

母のナタリヤさん(日本語訳):
「初めての幼稚園だから、心配。特に日本語はわからないし、ご飯とかも大丈夫かと。でも幼稚園に行けるのはうれしい」

用意した幼稚園のお道具箱。幼稚園の制服に袖を通すミアちゃんは、靴を履いて、髪をといて、帽子をかぶって…。初めての日本の幼稚園にワクワクしながら、お母さんと一緒に支度します。

ナタリヤさん:
「かわいい」(日本語)

スビトラーナさん:
「すごく懐かしい。自分の息子もこの幼稚園に行っていたから。この制服見ると、この帽子とか、心の中ですごく温かい、泣きそうな雰囲気」

 ミアちゃんは、2021年10月からウクライナ東部の町・クラマトルスクの幼稚園に通い始めました。クリスマスには、幼稚園にサンタさんも…。

しかし2月から始まったロシア軍の侵攻で、近くの駅もミサイル攻撃され、子供を含む50人余りが命を落としました。

 ミアちゃんの父親・アンドリューさんは、今も戦地の警察官として、街の治安を守り続けています。お父さんとは今では、電話でしか話すことができません。

ナタリヤさんとミアちゃん(日本語訳):
「おはよう!」

ミアちゃんの父・アンドリューさん(日本語訳):
「おはよう!元気?」

ナタリヤさん(日本語訳):
「元気だよ、あなたは?」

アンドリューさんはミアちゃんに、「気をつけて!楽しんできてね!」と声をかけます。

■不安からか泣き出してしまう場面も…徐々に落ち着き友達とも打ち解けていくミアちゃん

 午前9時45分に幼稚園のバスが到着。ミアちゃんは不安そうに初めての幼稚園バスに乗り込み、ナタリヤさんとスビトラーナさんは涙ぐんで見送ります。

スビトラーナさん:
「ちょっとした新しい人生が始まった感じで、ある意味幸せだけど、ある意味ではつらい。すべての気持ちがめちゃくちゃ、本当に感じたことがない気持ち。これから絶対幸せになる」

 幼稚園に到着したミアちゃんは、先生に連れられて下駄箱へ。

保育士さん:
「(下駄箱は)これだよ、覚えてね。(上履き)履けたね。これを持って桃組さんのお部屋に行こうか」

お部屋に入ったミアちゃんは、緊張したのかなかなか友達の輪に入れず、部屋の隅に…。すると、ナタリヤさんとスビトラーナさんの姿が…。

スビトラーナさん:
「我慢できなくて(来ちゃいました)」

2人は、部屋の外からこっそり中の様子を伺います。

 鯉のぼりの歌をみんなで合唱し始めましたが、ミアちゃんは部屋の奥でぐずっている様子…。すると、一目散に駆け出して、部屋の外に…。

ミアちゃん:
「ママ~」

さらに、自分の靴を探して、“大脱走”を図る場面も…。気分転換のため、先生が幼稚園のお庭に連れ出します。抱っこされて、すでにお疲れ気味のミアちゃん。

保育士さん:
「知らないところにいきなり来たので、本人もどういう風に過ごしていいかわからないだろうし…」

しかし、お外に出てから20分。

三輪車に乗っていると、友達も集まってきて乗り方を教えてもらったり、滑り台を何度も滑ります。徐々に、日本のお友達とも仲良くなってきたようです。

■昼食の中華丼は完食…言葉の通じない日本で第一歩を踏み出す

 そして、お昼。

保育士さん:
「はい、中華丼だよ。食べられるかな…」

初めての給食は、バクバク食べることができました。切り干しだいこんは、苦手のようです。それでも、しっかり、中華丼は完食しました。

保育士さん:
「言葉はなかなか通じないけど、いずれは日本語を覚えた方がいいと思うので。(中華丼は)野菜がいっぱいだし椎茸とかもあるので、どうかなと思ったけど、意外とパクパク食べてくれたので良かったです」

ミアちゃんの“日本の幼稚園”の初日は、無事終わりました。

スビトラーナさん:
「嬉しくて泣いていた、2人で。せっかく日本にいるので、本当に楽しい時間をあげたい。戦争の思い出の代わりに」

ナタリヤさん(日本語訳):
「子供たちが今すごく平和なところにいるので、夫は『何があっても頑張るしかない』と言っています。今日の写真も見せて、彼女たちのために頑張るっていう力は出ると思います」

無事初登園を終えたミアちゃん。言葉の通じない日本で第一歩を踏み出しました。