5月6日、愛知県三河地方の工科高校で、男子生徒が実習中に誤って工具の「のみ」で左足の太もも付近を切り、大量出血で一時、心停止状態となりました。緊急手術で一命を取り留めましたが、出血などが続き、12日に死亡したということです。なぜこのような事故が起きてしまったのか、取材しました。

 こちらは、事故が起きた教室の見取り図です。40人のクラスを4グループに分け、教員2人・生徒9人で授業が行われていました。実習の内容は「のみ」の「かつら直し」です。

「のみ」は大工道具のひとつで、金づちで叩いて木材を削り、穴をあけたりする道具です。先には鋭い刃がついており、手で持つ柄につながっています。そして柄を保護するために、リング状の「かつら」という金属がついています。「かつら直し」とは、この金属の位置を調整する作業です。

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 作業工程は4つ。まず、金づちを使い金具をはずします。

 次に、柄の縁を叩いて細くします。

 そのあと、角材にのみを打ち込み、金属に釘抜をあてて金づちで叩き、柄の端が出るまではめ込みます。

 最後に柄の端を叩いて、金具を覆うように丸めて完了です。

 実習では2時間の授業で2本のかつら直しを行い、事故は2本目の作業中に起きました。けがをした瞬間を見ている人がいなかったため、どの工程で起きたかはわからないとのことです。

 この「かつら直し」について、東京都の芝学園で32年間技術科の教員を務めた寺西幸人さんに話を聞きました。

「のみのかつら直し」は中学校の授業でも行い、危険度は低い作業だといいます。寺西さんは1本10分ほどで、初めて行う生徒でも1時間くらいでできるといいます。「通常は命を落とすほどの事故につながるとは思えない。通常とは違う方法をとり、偶発的に起きてしまったのではないか」と話しています。

 こうした事故を防ぐために今後できることについて、教育学に詳しい名古屋大学大学院・教育発達科学研究科の内田良教授は、「学校で起きた事故を“単なる不注意”で片づけると、また同じことが起きてしまう。専門家も交えてしっかり検証をし、それを全国で共有することで次の事故を防ぐことができる」としています。