当初、5年後にも開業する予定だったリニア中央新幹線。これまで大井川の水の量が減少することを懸念し、静岡県内での建設を反対してきた川勝知事が6月2日、中部圏知事会議の場で突然、「リニア建設推進」を表明しました。その真意とは…。

 6日午後、愛知県大村知事が記者会見で…。

大村愛知県知事:
「あの場でいきなり(申請書の)紙を持ってくるとは思いませんでしたので。普通は事前に『こういうことしますよ』とお話があるもんですわな、社会人ならね。そういう意味でちょっと驚いたというだけであります」

 大村知事が「驚いた」理由は、6月2日の中部圏知事会議で、これまで静岡県内でのリニア建設に反対してきた川勝平太知事からの意外な発言でした。

川勝知事(6月2日):
「(大村)会長からは『促進するつもりかどうか分からんので(加盟は)保留にしてある』と言われましたので、促進するつもりであるということを明確にしたく」

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 川勝知事はリニアの「建設促進を明確にする」と発言。建設促進期成同盟会へ加盟申請する文書を、会長の大村知事に手渡しました。

 しかし、川勝知事と言えば…。

川勝知事(2021年5月):
「国交省、JR東海さんの強引なやり方で水は守れない。守れますと言っていますけど守れないと思っていますから、ここは頑張らないと」

 品川=名古屋間を40分で結ぶリニア中央新幹線で、静岡県内を流れる大井川の水の量が減ることなどを懸念。南アルプスを貫くトンネルなど、いまだ「静岡工区の着工」の目途は立っていません。

 そんな中、JR東海は今年4月、大井川上流の田代ダムで、東京電力の発電用の水の量を抑え、リニア工事で水が減る分をここから大井川に還元するという案を示しました。しかし…。

川勝知事(5月):
「静岡県民の命とか産業とかを犠牲にしてできるものではないでしょ。その事情は常に言いますよ」

 いまだトンネル工事を認める意志はないことを明らかにしていました。そんな川勝知事がなぜ一転、リニア建設に肯定的な発言をしたのでしょうか。

川勝知事(6月2日):
「『のぞみ』の機能がリニアに移る可能性が高いので、『ひかり』と『こだま』の本数が増えるということで、(リニア)全線開通に反対する理由はないというわけです」

 さらに、リニアのメリットは他にも…。

川勝知事(6月2日):
「(浜松市に)水窪(みさくぼ)駅という所がありますけど、浜松駅に出るのは大変遠いわけですね。しかし飯田にリニアができますと南信の拠点。東京に出たいという気持ちは痛いほど分かっておりますから、賛成だと」

 一方、肝心の静岡県内の着工の話になると…。

川勝知事:
「60万人以上の人々の水道の量ですから。とうとうと流れる大井川じゃないんですね、渇水なんですよ。ですから非常に心配されている。反対しているというよりも、南アルプスを守るということと命の水を守ること、これは両立させなければいけません。国策ですから、国民のためのインフラですから。できる限り国の協力も得まして(進めていく)」

 環境問題とリニアの建設は「両立」との姿勢です。

 今回の川勝知事の一連の発言。リニアの全線着工に向けて、「一歩前進」したといえるのでしょうか。

大村愛知県知事:
「(静岡県からの申請書には)肝心の静岡工区については『建設促進』と書かれておられませんので、それについて会員のメンバーの皆さんがどういう風に受け止められて、どういう風にご意見を表明されるのかということかなと思っております」