高齢者向けの介護施設が今、変化しています。競争が激しくなったことで、利用者本位のサービスに変わり、個性的な売りを持った施設も登場しています。愛知県一宮市のデイサービス施設では、リハビリの一環として「カジノ」を導入しています。(※コロナ禍以前に取材)

 一宮市の「たんぽぽ温泉デイサービス一宮」はおよそ6000平方メートルの広い施設で、介護認定を受けた人が利用することができます。

 1日の利用者は250人以上、一般的なデイサービスの10倍以上と国内最大級の規模です。

【画像で見る】“カジノ”がある介護施設 要介護でも「儲ける・稼ぐ・使う等人生の喜びを」

 デイサービスは、介護が必要な人がリハビリをして元気を取り戻す施設で、こちらには温泉もついています。

 その中にあったのが「カジノ」です。「シード」という施設内で使える通貨を賭けて、カードゲームをしています。

 カードを引いて21に近づける「ブラックジャック」。頭を使って数字の計算を行う、これも立派なリハビリです。一回1000シードを賭け、勝てば倍になります。

 この施設では、ほかにもさまざまなリハビリをすることで、ご褒美としてシードをもらえるサービスを取り入れています。

 例えば、ひもを使ったトレーニングで1000シード、マシンを使った「貯筋教室」で1000シード、階段の昇降運動で片道100シード、利用者が使うタオルをたたむお手伝いで300シードなど。

 さらにパチンコまであり、大当たり1回で100シードが手に入ります。これも指先のリハビリだといいます。

 こうして貯めたシードを様々な形で使うことができます。コーヒー1杯で500シード、3000シードでネイル体験もできます。

 また、他にも効果が…。

施設長:
「高齢になってくると、なかなか自分で金銭の管理ができなくなってくる。そういった中で自分で頑張ったことに対して、稼ぐ喜びや使う喜びというのを体感していただくことで、やる気になったり、楽しさを見出していただきたい」

 要介護の状態になると、お金や通帳などを家族が管理するケースが多くありますが、ここでは儲ける・稼ぐ・使うといった人生の喜びも得られるとしています。

 たんぽぽ温泉デイサービス一宮の利用料金は、介護の度合いによって異なりますが、「要介護1」の場合は昼食代込みで1日1293円からです。

 このような個性的な介護施設について、日本福祉大学・健康科学部の来島修志助教は、「仕方なく施設に行くのではなく、こういうサービスを受けたいからここに行くとか、保険料を払って自分が必要なサービスを買っている。利用者が中心、利用者本位のサービスに変わってきた。そういうことが都市部では特に起きてきていて、競争が激しくなってきている。(施設側は)いろんな個性的な売りを持っている」と話しています。

 競争が激しくなった分、差別化を図るために個性的な介護施設が出始めているということです。

 例えば、施設内でお祭りなどのイベントを開き、普段関わりの薄い地元の人に来てもらったり、家でもリハビリができるようにLINEで体操の動画を配信したり、老人ホームにペットが暮らしているなど、多岐にわたっています。