高齢者向けの介護施設が今、変化しています。競争が激しくなったことで、利用者本位のサービスに変わり、個性的な売りを持った施設も登場しています。愛知県高浜市には“昭和レトロ”をセールスポイントにした介護施設があります。

 高浜市の「高浜安立荘(たかはまあんりゅうそう)」。

 1階にデイサービスセンター、2階に特別養護老人ホームが入る施設で、デイサービスには毎日およそ30人が過ごしています。

【画像で見る】お手玉や黒電話も…『昭和レトロ』をウリにした介護施設 昔懐かしむ“回想法”

 一見、普通のデイサービスセンターのようですが、その一角にはなぜかレトロな空間が。実はここで、利用者が毎日心待ちにしている特別な時間があります。

職員:
「皆さんに、昔の子供のころに遊んでいた遊びをお聞きしたいなと思っているんですけど。これはなんでしょうか?」

利用する女性:
「おはじきだね、これがビー玉。おはじきは女の子が主に遊んで、男の子はそんなことなかったけど」

 昔懐かしいおはじきやビー玉などの遊びから、黒電話や洗濯板、足で踏むミシンなど、昭和レトロ感漂う生活必需品まで。

 これは、お年寄りに向けた「回想法」と呼ばれる治療の1つです。昔使っていた馴染みの深い生活用品を見たり触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合います。脳を活性化させ、認知症の進行を予防する効果があるとされています。

 この日のテーマは「昔の遊び」。

 懐かしい手作りのお手玉が出てくると、片手で披露する女性も。

 さらに竹馬も登場。

80代女性:
「(子供のころ)やったよ。タッタカタッタカと」

 このデイサービスセンターでは、毎日30分「回想法」のプログラムを取り入れていて、誰でも参加することできます。

職員:
「皆さん、子供のころに戻ったかのようにすごく楽しそうに嬉しい顔で」

80代女性:
「昔を語るってだけでも、ちょっと懐かしいよね~。私たちは幼児に戻るわけね」

 幼いころに遊んだおもちゃに触れて、そのころを思い出して、自然と笑顔が溢れました。

高浜安立荘の担当者:
「『懐かしかったな』とか、昔のことを思い出して『嬉しかったな』とか、お話している方が実は意外と近くの地域の方だったとか、仲良くなるきっかけになったとか、(回想法は)人と人とをつなぐツールになるかなと思います」

 高浜安立荘ではデイサービスだけでなく、2階の特別養護老人ホームでも回想法を行っています。

「昭和横丁」と書かれた入口を抜けると、デイサービスと同様、昔懐かしい生活用品が揃っていて、さらにお風呂には昔ながらの銭湯にあるような暖簾もあります。生活の中でいつでも昔を懐かしめる回想法が取り入れられています。

 日本福祉大学の来島先生によると、回想法は1963年ごろにアメリカで提唱され、日本でも2000年以降に広がり始めました。昔のことを若い職員に教えることで、「人の役に立っている」と自己肯定感を上げることができ、認知症の予防や緩和に効果があると考えられています。

 高浜安立荘の利用料金は介護の度合いや利用時間によって異なりますが、デイサービスは「要介護1」の場合、昼食・おやつ付で1日1300~1400円ほどで、回想法は基本的に毎日行われています。