坂上忍さん「1回生体販売やめませんか」動物保護の環境を根本から変革…保護ハウス“さかがみ家”が描く未来
長年動物の保護活動を続けてきた俳優でタレントの坂上忍さんは、4月に犬や猫の「保護ハウス」を開業しました。殺処分に怯える動物たちに、新しい家族を見つけたい。坂上さんは、寄付等に頼ることなく、私財を投じ、捨てられた動物たちを幸せにするための活動を始めています。
■猫が外気を感じながら遊べるキャットランも…犬や猫への愛情が詰まった「保護ハウス」
坂上忍さん(55)は、「バイキング」や「バイキングMORE」のMCを務め、8年にわたり「お昼の顔」として活躍していましたが、23匹の犬・猫を引き取って暮らす、“大家族のパパ”としても知られています。
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2022年4月、芸能界きっての動物好きとして知られる坂上さんは、千葉県袖ケ浦市に動物保護ハウス「さかがみ家」をオープンしました。
4500坪という広大な土地を私財で購入。飼育放棄などにあった犬や猫を保護し、譲渡に繋げるためのハウスを建てました。その内部は、動物への愛情がたくさん詰まった温かい「おうち」です。
坂上さん:
「1階がワンちゃんスペース。開業した翌日にうちにきてくれた、モコ、クロ、文太、あいま、小さい子がトキちゃん」
開業直後に受け入れた犬5匹・猫10匹は、ハウスの中でのびのびと過ごしています。そして、ケージは温もりある木製です。
坂上さん:
「鉄のやつ、保護センターとかシェルター見学行ったときに、あの“ガシャンガシャン”という音が苦手で…。その音だけは聞きたくないので、そういうのを覚えている子もいるので…」
2階は、お日様の光がたっぷり差し込む猫のフロア。逃げる心配なく、猫が外気を感じながら遊べるキャットランもあります。
坂上さん:
「保護猫みんな、最初のころはご飯食べてくれなかった。でも、警戒心がとけてご飯食べてくれるようになって、触らせてくれるようになって、いつの日かこちらを信じてくれて甘えてくれて…」
今は穏やかに見えるこの子たちも、坂上さん達が日々向き合って、少しずつ心を開いてくれたといいます。
ひとくちに「保護犬」「保護猫」といってもその過去は様々。虐待、飼育放棄、悪質なブリーダーによる繁殖…。坂上さんは、そういった動物たちにもう一度愛情を注ぎ、新しい飼い主のもとに送り出します。
保護ハウスの動物たちが過ごす空間は、清潔に保たれています。
坂上さん:
「保護活動する方、頑張っていらっしゃるけど、手一杯になって…。『もうちょっと衛生的に頑張った方がいいよね』ってとこがあるのも事実。何より動物に対してよくないので、とにかく掃除。“シェルターシェルター”しないで、普通に人間の家で暮らしているような空気をどうやったら作れるかがテーマだった」
■「動物保護」の環境を根本から変えたい…持続可能な事業としての動物保護を目指す
環境省によると、2020年度に全国で殺処分された犬猫の数は2万3764匹にのぼります。犬の殺処分ゼロを継続する名古屋市などの自治体や、動物愛護団体の活動でその数は年々減少していますが、活動の大半が、寄付やボランティアに支えられているのが現状です。
坂上さんの活動は、こうした「動物保護」の環境を根本から変えようとするものでした。
坂上さん:
「『捨てられた犬とか猫がかわいそう』と、ちょっとのお手当や、ボランティアで身を削って世話をしている人いるけれど…。寄付がよくないとは言えないが、寄付頼りになることは、不安定を受け入れることになっちゃう」
景気などに左右される寄付に頼るのは不安定すぎると、坂上さんは、あえて寄付やクラウドファンディングは受け入れず、「動物保護」を持続可能な事業として確立させたいと考えています。
坂上さん:
「動物たちを守る作業が“仕事”として成立すれば、もっと積極的に参加してくださる方も増えるだろうし、里親さんにお渡しする頻度も増えるだろうし。『“反則技”を使ってでも商売させていただく』と公言しているので」
坂上さんが言う「反則技」とは…。
坂上さん:
「僕であれば、多少名前があるので企業さんも食いつきやすい。生々しい話ですけど、遠慮なく名前使えるうちに使わせていただいて、こういうところが増えたらいいとなれば、そこにどんどん投資していけばいいだけの話であって、それで私腹を肥やさなければいいと思う」
■「保護する犬や猫なんていないのが理想」…坂上さんが描く犬や猫たちの理想的な未来
一方、肝心なのは私たち人間の意識でもあります。
坂上さん:
「一番不安なのは、保護犬、保護猫ってどうして生まれるんだという話。乱繁殖させて、生体販売が当たり前で、たまたま相性がよくて幸せな生活が送れるところもあれば、『ワンちゃんってこんなはずじゃなかった』と、戻す人、捨てる人が出てくるわけです。要は全部人間ですよ」
6月1日に、改正動物愛護法が施行されました。ペットショップなどで販売される犬や猫へのマイクロチップの装着が義務化され、殺処分が減ることが期待されています。
坂上さん:
「マイクロチップから始まって、その次どういうステップ踏んでいくのかが大事。新しいことはやっていった方がいい。ただ、どこまでの効果があるかは疑問ではあります」
現状を踏まえた上で、坂上さんが描く犬や猫を取り巻く理想的な環境とは…。
坂上さん:
「『1回生体販売やめてみませんか』っていうのが理想。売買を1回やめて、いま現存している子たちをお家がある環境に振り分けてあげて。こんなところ(保護ハウス)がなくなる日本になればいい。保護するワンちゃんネコちゃんなんて、いないのが理想」
身近な生き物のため、人間が動くべきこと。大きな覚悟を持って始めた「さかがみ家」の描く「保護活動」は、この国の動物福祉のあり方に影響を与えようとしています。
坂上さんがイメージする5年後の「さかがみ家」は…。
坂上さん:
「ここのフランチャイズができていたら、もう一歩先に進めたかなって。5年後もこの一軒だけだったら、自分で自分をほめられないですね」
坂上さんは、持続可能な事業として「動物保護」が広がっていくことを願っています。