参院選投票日の2日前、7月8日に起きた安倍元総理への銃撃事件は、選挙戦にも大きく影響しました。街頭での選挙運動を続けるべきか、控えるべきか…。東海3県の候補者たちの2日間を振り返りました。

 7月8日、奈良市での演説中に突然、凶弾に倒れた安倍元総理。その訃報は東海3県の議員らにもすぐに伝わりました。

田村憲久衆院議員:
「安倍元総理がご逝去されたということでございます」

 参院選投開票日の直前に全国を駆け巡った衝撃的な事件。終盤を迎えていた選挙運動に大きな影響を及ぼしました。

【動画で見る】参院選投票日直前の安倍元総理死去 選挙運動巡る候補者たちの“葛藤の2日間”

 事件当日、愛知入りしていた公明党の山口代表は、春日井市などで予定していた応援演説を急きょ取りやめました。

 街頭演説が軒並み中止されるなど、民主主義の根底を揺るがす事態となった選挙戦。候補者たちは葛藤していました。

 愛知選挙区で再選を目指していた国民民主党の伊藤孝恵さん(47)の事務所では、「選挙活動を自粛する」という垂れ幕が下げられました。

 事件当日は選挙活動を取りやめた伊藤さん。しかし、党本部の指示で最終日は通常通り行うことに。

伊藤孝恵さん:
「聞きに来て下さる大切な人たちを危険にさらすかもしれないと、それを未然に防ぐことの方が私にとっては、今日は優先順位が高かったです。『私は暴力に屈せずに、2本の足で立つんです』みたいな演説はカッコいいかもしれないけど、果たしてそれが本当に屈しないってことなのか」

 暴力に屈せずに選挙活動を続けるべきか、控えるべきか。その葛藤は他の陣営でも…。

藤川政人さん:
「悲しいことにお亡くなりになられ、その1時間後に岸田総理の下で選挙の在り方についてのメッセージが発せられたということであります。暴力には決して屈しない」

 愛知選挙区の自民党・藤川政人さんの陣営で開かれた選挙対策会議では、県連の丹羽秀樹会長が、1990年に暴漢に襲われた祖父の事件に触れました。

 祖父でかつて閣僚などを歴任した丹羽兵助さんは、公務中に男にナイフで刺され命を絶たれています。

自民党愛知県連の丹羽会長:
「残されたご遺族の思いは非常に慮るとですね、とても私自身重たい気持ちになることも昨日はございましたが、それは元総理がそういった活動を止めることを本当に望んでいるかを考えて、今日の活動再開にもつながった」

 三重県の衆議院議員で、安倍派に属する鈴木英敬議員は、安倍元総理を「政治の父親」として慕っていました。

 かつて安倍元総理の官邸スタッフを務めたことから政治家を志し、三重県知事の時には「伊勢志摩サミット」を実現。

 2021年に知事をやめ、衆院選に立候補した際には…。

安倍元総理(2021年10月):
「まさに日本のエースなんですよ。次の世代、次の世代は私は鈴木さんに託したい」

 政治の父と仰ぐ安倍元総理の突然の訃報。

鈴木英敬衆院議員:
「もっと教えてほしい事もいっぱいあったし、こんな絶対に許せない暴挙で命を絶たれ、本当に悔しい」

 選挙活動の最終日、腕に「喪章」を付けて候補者を応援していました。

鈴木英敬衆院議員:
「まだまだ整理もつかないし、言える言葉もあまり出てこないところもありますけども。朗報をね、天国にいる安倍元総理にしっかりお届けしたいと」

 投開票直前に起きた元総理の銃撃事件、有権者の投票行動にも影響が出ていました。

90代女性:
「(影響は)ありますね。この1票でね、何とか少しでも安倍さんの気持ちを汲みたいなと思っている」

80代女性:
「やっぱりお気の毒だから。あの方(安倍元総理)が言う『美しい国』にしたいので」

 いわば弔いの1票を投じたという人もいましたが、「事件と投票行動は別」という意見もありました。

50代会社員男性:
「流石にショックでしたけど、選挙のこと自体はあくまで自分のことですけど、まったく影響がないですね。もう最初から私自身は決めていたもの(投票先)もありますので」

20代会社員男性:
「正直言うと、ちょっと揺れ動かされた部分があったんですけれども、やはり感情で投票してはいけないと思うので、あえて冷静になってもう一度判断しようと。ちゃんと公約などを冷静に判断したうえで投票しようかなと」