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「川魚の王様」といわれる「鮎」。岐阜県郡上市に、炭火でじっくりと焼き上げる絶品の塩焼きが手ごろに食べられる「道の駅」がある。普段使っている養殖鮎も人気だが、地元で獲れる天然鮎は風味も舌触りも別格の逸品。1日600匹も売れるという「鮎の塩焼き」のおいしさの秘密を取材した。
■焼き方にもポイントが…自然に近い環境で育てた養殖鮎をじっくりと焼き上げる「鮎の塩焼き」
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名古屋から車で約1時間、岐阜県郡上市。東海北陸自動車道「ぎふ大和インター」から5分ほどの場所にある、道の駅「古今伝授の里やまと」は、地域の特産品や郷土料理、源泉かけ流しの無料の足湯など多彩な施設が揃う人気の道の駅だ。
【動画で見る】道の駅の食事処で供される『鮎の塩焼き』美味しさのヒミツ
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敷地内にある食事処「かにはさくら」では鮎料理を楽しむことができる。フライや、甘露煮、そして鮎めしがセットになった「鮎づくし」は850円。
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素揚げが乗った「鮎ラーメン」(1000円)など…。
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一番人気は素材の味を生かした「鮎の塩焼き」(500円)だ。
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やまとでは琵琶湖産の稚魚を使って養殖した、和歌山県の鮎を使用。
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エサには梅エキスを使っていて、魚の身や骨が柔らかく仕上げることができ、うまみがのっていて脂も多いという。より自然に近い環境で育てられていて、ほどよい脂と上品な身の甘み、柔らかい皮にほれ込んだ。
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鮎のうまさが引き立つよう、味付けは塩のみで、背びれと腹びれに軽くこすりつける。
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鮎を焼くのは畑中善樹さん(29)。若手だが鮎を焼き続けて6年、道の駅で一番の焼き手だ。
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仕込みが終わると、囲炉裏に炭をくべる。火力が強く煙が出にくい備長炭を使い、炭火を囲むように鮎を刺していくが、焼き方にもポイントがあった。
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やまとの畑中さん:
「お腹からじっくり焼くんですけど、鮎は内臓が食べられる魚ですので、内臓にしっかり火が通るようにお腹からじっくり30分くらいかけて焼いていきます。そのあと、背中、横を焼いて1時間くらいかけて食べられるように仕上げています」
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お腹に焼き色が付いたら、次に背中、横の順に焼き上げる。
畑中さん:
「焼きすぎると身がパサパサになっちゃいますし、焼きが足らないと生っぽい食感になっちゃうので。焼き具合、脂の落ち具合によって難しいところ」
少しでもタイミングを逃すと、焼きすぎて身がパサパサになってしまうという鮎。そのため、焼きあがりまでの間、絶えず位置を変えながら、ちょうどいい火加減に調整する。
頭を下にするのも理由がある。
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畑中さん:
「脂がぽたぽた落ちるんですけど、自分の脂を使って頭をカリっと揚げるように焼くように…」
頭を下にすることで、鮎の脂で硬い頭もカリっと焼きあがるといい、内臓はもちろん、骨まで丸ごと食べられるようになる。
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炭火でじっくり焼き上げること1時間。手間をかけて焼き上げた「鮎の塩焼き」。1匹500円だ。
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きめ細やかな舌触りと、上品な身の甘みが特徴だ。
■“1人で2,3匹食べる”客に“インスタで調べて”訪れる客も…年齢問わず人気の鮎の塩焼き
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鮎が焼きあがる午前10時を過ぎると、続々と人がやって来た。
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男性客:
「来るたびにいただいています。時には2匹3匹くらいはいただいて、満足しています。香りと焼き方がやっぱり何とも言えないです」
女性客:
「今日はここの鮎を食べに来ました。インスタで調べておいしそうだなと思って」
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道の駅で気軽に「鮎の塩焼き」が食べられるとあって、年齢層を問わず人気だ。中には、頭からガブっといく人もいる。
男性客:
「全部やわらかいし、味も苦いとかもなくおいしいです。調理の時間が1時間なんてそう取れるものじゃないので、家ではまずできない」
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鮎は夏のごちそう。昔ながらの囲炉裏焼きにこだわっている。
■風味と舌触りが別格…運が良ければ長良川で育った「天然鮎の塩焼き」も店頭に
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畑中さんがあるものを見せてくれた。
畑中さん:
「これをちょっと見てください。解禁したばかりの、今年の長良川の天然鮎になります」
通常の塩焼きは和歌山産の鮎を使っているが、この鮎は清流・長良川で育った極上の天然鮎だ。
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畑中さん:
「獲れたときしか入って来ないので、今の時季ですとこの大きさはなかなかいない。香りが全然違うので、ぜひこの香りを楽しんでいただければと思います」
長良川の上流域で獲れる鮎は「郡上鮎」として全国的にも有名で、良質な水と急峻な流れで育ち、味はもちろん、香りも一級品。地元の漁師などから天然鮎を仕入れることもあるが、値段は時価だ。この日は1匹800円。豊かな風味と、きめ細やかな舌触りは別格だ。
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この道の駅がオープンしたのは2001年。施設の特長を出すために何か「看板商品」をと始めたのが「鮎の塩焼き」だ。
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仕入れが安定しない天然鮎は看板商品にできないため、自然に近い環境で育てられた和歌山の養殖鮎をメインにしつつ、地元長良川の天然鮎がとれた時には出すようにしている。
畑中さん:
「時季のものをおいしく皆さんに食べて喜んでもらいたい。この道の駅で鮎の塩焼きを食べていただきたい」
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天然の鮎は7月から本格的なメニューに。天候などにより獲れない日もあるため、あればラッキーという気持ちで行くのがよさそうだ。ちなみに天然モノは午前中でなくなることも多いため予約がオススメだ。