居場所を求める若者たちが集まる名古屋市中区の栄広場・通称「ドン横」が、6月27日に閉鎖されました。名古屋で夜に若者が多く集まる場所で10年以上見回り活動を続けている方に、どう向き合っているのか聞きました。

 午後10時過ぎ。名古屋・栄のオアシス21で、着ぐるみを着た一風変わった集団が歩き回ります。彼らは「全国こども福祉センター」のメンバーで、週に1回、名古屋駅の西口や栄など、夜に若者が多く集まる場所で見回り活動をしています。

メンバーら:
「こんにちは!ありがとう」
「バイバーイ!お疲れさーん」

【動画で見る】「帰りなさい」では解決せず…若者が集まる名古屋の夜の繁華街 大学教員が“着ぐるみ姿”で見回り続ける理由

 ちょっと挨拶をする程度、実は見回りにはある約束事があります。

荒井さん:
「大人に対する不信感とかを持っていると思いますので、相手のペースに合わせて信頼関係をつくっていく」

 相手のペースに合わせること。そう話すのは理事長の荒井和樹さん。大学で社会福祉を教える教員も務めています。

荒井さん:
「(若者が)よく集まりやすい場所は、ある程度の照度が確保されていて、退路が確保されている、駅が近い、そういった条件が整っている場所になりますね」

 この条件に合う所として、ドン横が閉鎖された後、多くの若者はオアシス21に来ていると話します。

 着ぐるみを着ているのは、夜でも目立ち、いつもいることを知ってもらいやすいため。また、話しかけるときに少しでも警戒心をといてもらうことにも役立っています。

 常に彼らからどう見られているかも意識し、相手の出方を見て距離感を掴みます。「危ないから帰りなさい」などといった話は一切しません。押し付けは反発を生むだけで、解決にはつながらないと話します。こうした活動を10年以上続けています。

 荒井さんと一緒に活動するメンバーの黒田さんと伊藤さん。実は彼らも居場所がなかった若者でした。

黒田さん(26):
「私の場合は、幼い頃から父親から虐待を受けていて。実家が北海道なんですけど、2年前に北海道からこっちに出てきて。そういう中で、名駅で着ぐるみを着ている集団を見つけて、面白そうだなと思ってノリで入ってみた。街でおじさんが『何してるの』『どっか行かないか』とズカズカと来るような感じではないので、そこがすごい安心ではありました」

 交流を深めるうちに、夜の街中に居場所を求めるのではなく、自らが声をかけ同じ立場の子供に寄り添いたいと、メンバーに加わったそうです。また、伊藤さんは…。

伊藤さん(27):
「父親も母親も兄2人も全員が医療関係の家系で、大学2年生の時にちょっと実習で失敗してしまって、その時に教員から自分の存在意義を否定されるような発言をされて、立ち直ることができなくて、学校に行くのも嫌になって…」

 そんな中、センターが自分の存在を認めてくれ、前を向けるようになりました。

 普段、活動の拠点にしている名駅に移動してみると、若者が逆に寄ってきました。

荒井さん:「俺、荒井っていうから友達になって」

若者:「え~まじすっか」

荒井さん:「インスタやってる?交換しよう」

若者:「めっちゃいい」

 毎週1回、10年以上時間をかけて存在を認識してもらっていた一つの成果です。荒井さんたちの方からも、距離感をさらに縮めて大丈夫と判断したとき、声をかけ交流を深め仲良くなります。

荒井さん:
「こんな感じに緩く繋がっていけたらいいなみたいな。僕らも彼らの方を見ていることが相手に伝わって、それによって交流が生まれているので。今までそっぽ向いてたら、たぶん目が合わないので、顔を合わせるって大事ですよね」

 荒井さんたちが心のよりどころの1つとなることで、若者たちが自身でこの先を考え前を向いていくことが、夜の危険なエリアから出るきっかけに繋がるといいます。