20年前、愛知県豊川市で1歳の男の子が連れ去られて殺害された事件で、懲役17年が確定した男性が先週、刑期を満了して出所しました。男性は冤罪を主張し、再審・裁判のやり直しを求めています。

 荷物を乗せたカートを押し、大分刑務所から出てきた細身の男性。

田辺さん:
「長い間ずっと刑務所生活していまして、今回は無罪になりませんでしたが、出所できたことは私として嬉しいです」

 田辺雅樹さん、55歳。無罪を訴え続けながら、8月19日、懲役17年の刑期を満了し出所しました。

田辺さん(8月20日):
「威圧的な取り調べを受けて、何度言っても信用されずに、物的証拠があるとかいろいろ問い詰められて、今回(嘘の)自白に至ったのです」

 今から20年前、愛知県豊川市のゲームセンターの駐車場で、当時1歳10カ月の村瀬翔ちゃんが車から何者かに連れ去られ、その後4キロ離れた海岸で遺体で見つかりました。

 事件から8か月後、翔ちゃんを海へ投げ落として殺害したなどとして逮捕されたのが、当時36歳の田辺さん。トラック運転手で現場の駐車場で車中泊をしていました。

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<田辺さんの当時の自白>
「男の子の泣き声がうるさく眠れなかったから、車で連れ去り海に投げて殺害した」

 有力な物的証拠がない中、決め手となったのは田辺さんの「自白」。

 しかし、田辺さんは取り調べ中に弁護士と接見する中で、一転「実は僕ではありません」と無罪を主張し、自白の信用性が最大の争点となりました。

田辺さん(2006年の無罪判決後の会見):
「自白するように追い込まれて、不審者として疑われて起訴されて辛かった」

 1審の名古屋地裁は、自白について「捜査官が誘導した可能性がある」などとして無罪を言い渡しました。しかし、2審の名古屋高裁は自白の信用性を認め、逆転有罪判決を下し、そして2008年最高裁で懲役17年が確定しました。

田辺さん(8月20日):
「1日でも早く社会生活に慣れて通常通りの生活をしたいと思っております」

 8月19日、17年の刑期を満了した田辺さん。獄中からも無罪を訴え続けた中での出所となりました。

田辺さん(8月20日):
「一日でも早く再審無罪を獲得することを望んでおります」

 田辺さんは、判決の確定から8年が経った2016年には、弁護団とともに獄中から再審、裁判のやり直しを請求していました。

 弁護団は、警察の捜査では田辺さんが犯行に使ったとされた車から、翔ちゃんの服の繊維が検出されなかったことに注目。当時の状況を再現し、たとえ掃除機をかけても車内に服の繊維が残るとした実験の結果などを新証拠として提出しました。

 しかし2019年1月、名古屋高裁は「再現実験は現実とは条件が異なり無意味」「自白の信用性を揺るがすものではない」として再審請求を棄却。弁護側は異議を申し立て、現在も審理が続いています。

田辺さん(8月20日):
「ある程度、再審が認められるのではないかと信じておりましたので、非常に棄却されたことはショックです。自白だけで今回有罪判決を受けたことについては非常に悔しい気持ちでいっぱいです。再審で1日でも早く無罪を獲得したい気持ちです」