ついに1ドルが140円台になりました。24年ぶりの円安水準は、東海3県でどんな影響が出ているのか取材しました。

 看板メニューのタコスに、ナチョス…。名古屋市中区のメキシコ料理店「ホットスパイス ムーチョチキン」です。

店長:
「全体的にあれも上がってこれも上がって、本当に色々なものがどんどん上がり続けている状況ですね」

 店長の悩みの種は、ついに24年ぶり1ドル140円台となった円安です。

 輸入された食材を多く扱うこの店は、為替の影響が直撃しています。メキシコ料理にはかかせない「サルサソース」はアメリカから輸入していますが、9月1日から1割ほど値上がりし、一部のメキシカンビールも1割以上上がっています。

【動画で見る】24年ぶり1ドル140円台 自動車メーカー4次下請け「材料費は見た事ない値上がり」

店長:
「ここにビールをいつもストックしているんですけど。これも(値上げ前の)8月末にいつもの倍ぐらい確保してストックしてあります」

 とまらない円安。5月にまだ1ドル130円台だったときにも、この店を取材していました。

店長(5月取材時):
「勘弁してほしいっていうのはあるんですけど、悩むぐらいなら色々とあの手この手で工夫して乗り切っていくしかない」

 このときは食材の仕入れ値が軒並み1割ほど上がっても、「あの手この手の工夫」で価格は据え置くとしてましたが、さらに円安が続けばいよいよ値上げも検討せざるを得ないといいます。

店長:
「めちゃくちゃしんどいですけど、できる限りはお店でできる企業努力で頑張っているところです。不安はあるので、いよいよってなったら値上げも考えなきゃいけないなと思うんですけど」

 一方、円安は海外に向けて輸出をする企業にとっては追い風です。

 例えばトヨタ自動車は、1ドルに対し1円円安になるごとに450億円利益が増えるとしています。

 トヨタは2022年度の為替レートを1ドル130円と想定しているため、この円安が続けばさらに好業績も期待でき、東海3県の経済にはプラスとなりそうですが…。

飯田鉄工所の飯田社長:
「なだらかにずっと右肩下がりに落ちていっています、売上として。上がることがない。コロナ前に比べて50%くらい」

 名古屋市中川区の飯田鉄工所。自動車をつくる機械の部品をつくっていて、トヨタなどの自動車メーカーからみると4次下請けにあたります。

飯田社長:
「こちらが材料費。重量1kgあたり18円アップ。(これまでで)一番の値上がりです。見たことないくらいの値上がりなので」

 円安やウクライナ情勢などを受けて、この半年ほどで材料の鉄やステンレスの価格は2割から3割上昇。機械を稼働するための油も1リットルあたり65円値上がりするなど、厳しい状況が続きます。

飯田社長:
「実際に影響があるのは年末辺りから年明けぐらいかな。(国には)1番は円安対策してもらわないと。大きい会社の対策は当然必要なんですけど、中小零細には向かっていない政策じゃないのかなって思わざるを得ない」

 東海3県にはプラスかマイナスか…。専門家は食品や電気・ガスの一段の価格上昇など、家計への影響は大きいと指摘します。

三菱UFJ銀行・経済調査室の中村拓郎さん:
「好ましいか好ましくないかは、非常に難しい状況になっています。円安が輸出型製造業にとってプラスという考えもある一方で、部材を輸入している中小企業が多いものですから。一般消費者、家計への影響は非常に大きいので、円安水準が長く続くのはあまり好ましくないのかなと」

 ただ、今後について円安のペースはゆるやかになると予想します。

三菱UFJ銀行の中村さん:
「一時的に(さらに円安に)振れる可能性はあると思いますが、その先は円高の方にゆるやかに進んでいくだろうとみています」