“前回”の55年前は国を挙げて実施…世論で賛否割れる中で営まれる安倍元総理の『国葬』参加者たちの想い
世論の賛否が割れる中、安倍元総理大臣の国葬が27日、営まれます。55年前の吉田元総理の国葬の際、名古屋の街はどうなっていたのか。また今回の「国葬」に参加する人たちの想いに迫りました。
■駅のコンコースややデパートでも“黙とう”…55年前の吉田茂元総理の国葬時
日本武道館で進む準備。9月27日、安倍元総理の“国葬”がひらかれます。前回、国葬がおこなわれたのは、1967年10月31日。当時の様子をまとめた国の記録には…。
<故吉田茂国葬儀記録 編:内閣大臣官房>
「葬儀に参ずる者は、(中略)約4万5千名を数え、故人の人柄をしのばせるその盛儀は、まさに国民葬の名にふさわしいものであった」
武道館で大規模な式が営まれていたそのころ、名古屋の街でも…。
<当時の新聞記事(名古屋タイムズ 1967年10月31日)>
「国鉄名古屋駅では、全職員が2時10分から1分間、黙とうをささげた。普段は人の動きが途絶えたことのないコンコースも、この時ばかりは一瞬流れが止まったように感じられた」
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<当時の新聞記事(名古屋タイムズ 1967年10月31日)>
「名古屋市内の4デパートでも、玄関などに弔旗を掲げた。国葬が始まった午後2時10分には、各店ともブザーや放送で店内に合図。居合わせた客や店員が、静かに黙とうするシーンが見られた」
中区栄の各デパートでは、吉田元総理を偲ぶ写真展も開かれました。
国をあげた、まさに“国葬”でした。
■安倍元総理の国葬に賛否割れる民意 岸田総理「弔意を強制するものではありません」
あれから、55年。
国葬に反対する男性:
「や~め~て~く~れ、こんな国のお葬式~」
かつて弔旗が掲げられた栄のデパートの近くでは、今回の国葬に反対するデモが行われていました。
国葬に反対する女性:
「佐藤栄作さん(元首相)も結構長かったでしょ、あの人ノーベル賞もらってますでしょ。だけど国葬じゃなかったし…」
賛成か、反対か、路上でアンケートする男性もいました。
街の人たちにも、今回の国葬についての意見を聞きました。
男性(20代):
「ガチでどちらでもないです。賛成派の意見(でわかるのは)あの人がいなかったら、今くらい良い日本にはなってなくないですか。反対派の意見でわかるのは、税金を使ってやるべきなのかって、確かに確かに…。どっちの意見もわかります」
別の男性(20代):
「賛成です。日本のために働いてくれたんで」
男性(20代):
「反対です。偉いからって、国民の税金を使って良いわけではないと思うんですよ。みんなのために使うものが税金なのに」
女性(19歳):
「(賛成・反対の)どちらでもないです。そうですね、関心ないです」
FNNの世論調査でも賛成31.5%に対して、反対は62.3%と意見が割れ、反対の声も根強い中で行われる今回の“国葬”。(※9月17~18日調査)
吉田元総理の国葬の際、政府は「弔意の表明」について…。
「国民各位へのお願い それぞれの場所で、1分間の黙とうをされることを期待します」
役所や学校などは午前いっぱいで休みとし、国葬が始まる午後2時10分にそれぞれで黙とうをささげるよう呼びかけました。
そして、今回は…。
岸田総理:
「弔意を強制するものではありません」
“国葬”にもかかわらず、各々に委ねられる“弔意”。
■東海3県の知事はいずれも国葬に出席 名古屋市の河村市長は…
東海3県の知事は…。
古田肇岐阜県知事:
「私は出席させて頂く」
一見勝之三重県知事:
「出席しますという返事をしているところでございます」
大村秀章愛知県知事:
「そこに出席して哀悼の意を表する、お参りさせていただくというのは自然な形ではないかと」
いずれも国葬に「出席」。また3県とも、当日は県庁に半旗または弔旗を掲げ、弔意を表すとしています。
名古屋市の河村市長は…。
河村たかし名古屋市長:
「国葬ということで、案内が正式に来たということになれば、それはそれで従うのが当たり前」
「個人的な理由じゃないですよ、本当に。安倍さんには本当に南京事件の時、南京から共産党の幹部が来た時にですね…」
2012年、河村市長が「30万人もの市民が犠牲になった南京大虐殺はなかった」などと発言し批判を浴びた際、擁護する新聞広告を掲載したのが安倍元総理でした。
河村名古屋市長:
「『私たちは河村市長の南京発言を支持する』とはっきり意見広告を出してくれたということで。非常に、大変苦しい、そういうところで助けてくれたというのかな、安倍さんが」
■「有志で黙とう」「『半旗も掲げず』通常通り」 分かれる地方自治体の対応
ほとんどの自治体が「黙とう」については要請しない。岐阜県美濃市では…。
美濃市の井上博司秘書課長:
「いまの予定では、庁舎の半旗と、今回は黙とうの方も加えた」
半旗の掲揚に加え有志の管理職が集まり、テレビ中継を見ながら黙とうするということです。
井上課長:
「あくまでも弔意を示すのはそれぞれ個人の自由ですので、その点はうちの職員については理解をしてくれて、思いがある職員はしてくれるでしょうし、そうではない職員はしない。それに対してこちらの方から、『どうやったんや』とか、そういうことをするつもりは全くありません。黙とうがいけなくて半旗はいいのかというと、あくまでも両方とも弔意を示すものではある」
過去の総理経験者の葬儀のときと同じように“弔意”を示し、有志で黙とうをするという。
三重県伊賀市の岡本栄市長は…。
岡本栄伊賀市長:
「うちは反旗は掲げることもなく、記帳所を設けることもなく、普通にやります」
Q黙とうなどは?
岡本伊賀市長:
「しません」
庁舎での半旗掲揚、黙とう、そして記帳所の設置など、一切の弔意表明を「行わない」と決めました。
岡本伊賀市長:
「行政とかそういうものは、確たる皆さんが納得する根拠が無ければいけませんし、そういう意味ではなかなか難しい状況にあるんじゃないか。財政民主主義ということで言えば、やっぱり議決、国会での審議というものが必要ですけど、全く無いわけですから。国も県も市も、行政というのは皆さんに説明責任があって、定められた条例・法令・法律によって進めていくというのが基本ですから、今回そういう意味では『基本ができてない』と言わざるをえないでしょう」
閣議決定のみで16億円あまりの国費を使う政府のやり方に、同じ行政を司る者として「納得できない」。
岡本伊賀市長:
「非常に不幸ななくなり方をされたから、というだけではこれはなかなか難しいんじゃないですか。評価って、8年間やったから、歴代最長だから、そういうものでもなくて、『何をやったか』ってことですよね。あぶりだされた統一教会問題もありますから、それとご本人もどういう関係にあったのかをしっかり洗いだしたうえで評価をして。一言で言うと、『拙速すぎた』っていうことでしょうね」
賛否が割れる中で開かれる、安倍元総理の「国葬」は27日、午後2時から始まります。