名古屋が生んだロックスター・浅井健一さんは、画家としての一面もあり、名古屋で開催された個展には連日大勢のファンを集めた。歌を通して、絵を通して、ロックのカリスマが語る愛と平和とは…。

■「どうしたら世界がより良くなるか」語り合いたくて ベンジーが故郷名古屋で個展

 ギャラリーを彩る独特な色遣いの絵。

【画像で見る】『愛と平和』歌い続けるロックスター浅井健一が目指す「世の中をよくすることに繋げる」

日本を代表するロックスターで、名古屋出身の浅井健一さんの作品だ。

伝説のロックバンド、BLANKEY JET CITY(ブランキージェットシティ)のボーカル&ギタリストで、現在も様々なバンドで活動している。

映画の主人公に似ていることから、ニックネームは“ベンジー”。あの椎名林檎さんも、『丸の内サディスティック』の中で、「そしたらベンジー、あたしをグレッチで殴って」と歌うほどリスペクトしている存在だ。

 9月2日、浅井さんの姿は、朝の生放送をしている名古屋のFMラジオのスタジオにあった。

ZIP-FMパーソナリティの荒戸完さん:
「浅井健一さんが来てくれました!おはようございます。浅井さんって朝強いですか?」

浅井健一さん:
「めっちゃくちゃ強くって、朝の…下手したら4時半(起き)」

荒戸さん:
「めちゃくちゃ早いですね」

9月に名古屋で開かれた個展を、朝からラジオ局でPRした。

浅井さん:
「どうしたら世界がより良くなるか。それをみんなで会話しようかなと思って」

 高校を中退し、ミュージシャンになるために東京へ出た浅井さん。絵を始めたのは17歳の頃だった。

浅井さん:
「中日ビルに絵の教室があったんだわ、週に1回ある。それに半年ぐらい通ったことがあったかな」

個展では、アクリル絵の具で描いた40点を展示。

浅井さん:
「これすごく気に入っとって。ここでカレーを売っているという。1000円でワンドリンク付きで。良心的だね」

浅井さん:
「これは部屋で女性と一緒に、ある夜、お酒を飲んでいるという」

浅井さん:
「これは、世界中の緊急事態に駆け付けてレスキューするっていう」

浅井さん:
「日頃は街でソフトクリーム屋さんをやっているという設定。細きゃあ?(笑)」

■「思ってること言わないとダメ」3年前の反戦テーマのコラボ絵本が発行部数4倍に

 コロナ禍でバンドの活動が減る中、様々な形で表現を続ける浅井さん。これまで謎に包まれていた日常生活を、インスタグラムで公開した。BLTサンドのつくり方や、レトルト海苔カレーの“中華風”など、題して「ベンジースマイルクッキング」。

浅井さん(Instagram):
「トースターがないのでパンを…魚焼き器で」

 さらに、日記やエッセイをまとめた本『神様はいつも両方を作る』も発表。

コロナや政治、民主主義や戦争など、浅井さんの考えが綴られている。

浅井さん:
「やっぱり政治的なことを言うと、離れる人もたくさんいるので。だからミュージシャンとか芸能人はそういうこと言わないでしょ?それはわかるんだけど、でもやっぱり自分の思ってること、本当のことを言わないとダメだなと思う」

 反戦をテーマにした絵本『ベイビーレボリューション』。浅井さんの詩にあわせて、画家の奈良美智さんが絵を描いた。

世界中の赤ちゃんが、ハイハイしながら戦場へ…。純真無垢な力で、世界を変えていく。

出版されたのは3年前だが、2022年3月以降、発行部数が4倍に伸びた。

クレヨンハウスの吉原美穂さん:
「今回、こういう戦争がまた起きてしまったというような、残念なきっかけではあったんですけど、確かに手に取ってくださる方が増えているというような状況はあります。子供たちに読んで聞かせたいのはもちろん、大人にこそ読んでもらいたい内容ですよね、というような声もいただいたりして」

浅井さん:
「俺たちは平和な時代に生まれて、平和しか知らないでしょ。でも人類(の歴史)をずっと眺めると、平和の間にたまに戦争があったっていう感覚ではまったくなくて、戦争の間にたまに平和があるっていう。たまたま俺たち77年間平和の中にいるけど、だから気を付けないと、みんながちゃんと意識しないと、本当に起こるから」

 もちろん“音楽”でも…。

<「紙飛行機」の歌詞>
『このまま行ったら またあの地獄のような戦争が始まるんでしょうか』

『この星の未来は 未来は 紙飛行機』

力強いギターの音と、想像が膨らむ独特の歌詞。その歌声は、未来への希望。愛と平和のロックだ。

■個展にはアーティストのファンも来場…浅井さんは「スーパーヒーロー」

 9月2日に名古屋市中村区のギャラリー「高山額縁店 納屋橋 Komore」で始まった、浅井さんの個展。初日から2日間で500人以上が集まった。

初日夜のトークイベントでは…。

浅井さん:
「『世界が良くなるためにはどうしたらいいのか』っていうが一応テーマなんだけど」

男性客:
「ちょっとダジャレかもしれないですけど、『右翼でも左翼でもなく、“仲良く”』って」

浅井さん:
「絶対そうですよね。おぉ、すごいね。ありがとう。右とか左言っとらずに仲良くだね。絶対それすごいわ。自分の考えと違う人を攻撃するんじゃなくて、自分の考えがあって、俺は違う人の考えも知りたいし。お互い話して高め合うというかさ、そういうふうになれたらいいんですけど」

女性客(ファン歴25年):
「歌詞の世界観が、1つの映画を見ているみたいな、情景が浮かんできたりとか。これ(絵)も本当にベンジーの世界だなっていうのが(わかる)」

nobodyknows+元メンバーのg-tonさん:
「もう、目指せブランキーですから。ジャンルは(違えど)。ブレてないって感じがしますね」

VIVACEボーカル&ギターの村屋光二さん:
「彼ってやりたいことを貫き通してやっているスーパーヒーローなんですよね」

lynch.ベースの明徳さん:
「ベンジー、浅井さんの血というか意志を受け継ぎたい」

■愛と平和を歌い続ける浅井さん「最終的には世の中を良くすることにつながってないと」

浅井さん:
「どこから来られました?」

男性客:
「沖縄から来ました」

浅井さん:
「マジ?」

男性客:
「石垣島っていうところから」

メジャーデビューから31年、57歳になった浅井さん。最近では親子2代にわたるファンも。

男性客(浅井さんに):
「結婚していま家を建ててるんですよ。そこでネコを2匹飼うのを決めていて、名前を決めてほしいっていう…」

浅井さん:
「ポチと…ルーラ」

男性客:
「ありがとうございます!」

浅井さん:
「普通イヌだけどね(笑)」

男の子:
「どうやったらギターが上手くなるんですか?」

浅井さん:
「一生懸命練習する。何回も」

コロナ禍で忘れかけていた出会いと触れ合い…。この日、浅井さんは7時間にわたりファンと語り、握手し続けた。

浅井さん:
「今は57歳で、振り返る歌が多くなるし、どんどん死にも近づいて行ってるだろうから、歌うことが全然変わってきて自然現象だと思うんだよね。芸術とかそういうふうに言われるものは、絶対光があるべきだと思うし、最終的には世の中を良くするっていうところにつながってないといかんと思うし、もっと高いところじゃないと、最終的に目指してるところが。だから志を高く持たないといかんと思う」

偉大なるロックスター、浅井健一は想像している。この世界の未来を良くしたいと。Love & Peace。愛と平和を歌い続ける。