日本で女性政治家が増えるには…中間選挙で州議選に挑んだ初の女性市長 育児との両立や差別どう乗り越えたか
ニュースONEでは、11月に行われたアメリカの中間選挙の際、女性の政治への参加について、ニュースアプリのスマートニュースの協力を得て、入社4年目の女性記者が現地で2週間取材しました。
テーマは女性の政治への参画です。アメリカで市長を務めた36歳の女性は、出産後2週間で選挙を迎えて当選し、今回の中間選挙では州議会議員に立候補しました。この女性にアメリカで政治家活動をするなかで、「家庭生活との両立」や「ハラスメント」の体験を聞きました。
■大きなおなかで街頭にも…“初の女性市長”は選挙の2週間前に出産
中間選挙1週間後の11月15日、カリフォルニア州の議会議事堂で私たちが会ったのは、クリスティ・ホルスティージ(Christy Holstege)さん、36歳。
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カリフォルニア州・ロサンゼルスの東にあるパームスプリングス市で、女性初の市長を務めました。
今回の中間選挙では州議会議員に立候補し、惜しくも85票差で敗れました。
市長になった2年前の選挙では、投票日の2週間前に出産したばかりでした。
パームスプリング市の前市長 クリスティ・ホルスティージさん:
「私は2020年の市議選の選挙日の2週間前に出産した母親です。生後6週間の赤ちゃんがいるときにパームスプリングス市の市長になりました。私は新米ママであること、女性政治家であること、そして出産後に多くの人が直面する問題も乗り越えてきました」
妊娠中も、大きなおなかでボランティアらと共に街頭に…。SNSも駆使し、支持を訴えていました。
パームスプリング市の前市長・ホルスティージさん:
「私は、息子に女性の市長になれるし、州議会議員にもなれるというお手本を見せたいと思ったのです」
■女性政治家の「両立」は?元市長は州議になれば2歳の息子と毎週800キロの移動
その時生まれたアデンくんは、今は2歳に。この日も、ホルスティージさんが受ける新人議員向けのオリエンテーションのため、自宅から飛行機に乗り、およそ800キロ離れたサクラメント市まで一緒に移動。ホルスティージさんが機内で撮影した動画を見せてくれたのは、眠たいのを我慢しているのか、ウトウトしたアデンくんの姿でした。
当選していれば、1月からは州議会議員としての生活が始まるはずだったホルスティージさん。そうなれば月曜から木曜は議会のあるサクラメントで過ごし、週末は夫と暮らす自宅へ。アデンくんと共に、毎週この移動を繰り返すことに。
日本で女性議員のなり手がいない原因のひとつに「子育てや家庭生活との両立」があります。
アメリカでも、女性の有権者に期待することを聞いてみると…。
有権者の女性:
「男性に反対しているわけではありませんが、女性にも与えられるべき機会だと思います。なぜならキャリアを積んでいる人たちが同時に家族を持とうとするとき、その人たちを尊重し、同時にそのような機会を与えるべきだということを、女性政治家たちはもっと受け止めてくれるからです」
別の有権者の女性:
「女性は私たちの肩にのしかかる責任のすべてを理解していると思うのです。育児だけでなくキャリアを持つこと、そして私たちが直面していること全てを理解していると思います」
多く聞こえてきたのは「育児とキャリアの両立への期待」。まさにそれを体現しているホルスティージさんに、どうやって活動をしているのか聞きました。
パームスプリング市の前市長・ホルスティージさん:
「小さな赤ちゃんがいるのは大変です。ただ私の母がこの町にいて助けてくれるのは本当にラッキーです。サクラメントで息子のために保育所を、住む場所を探します」
アメリカでは、州ごとに細かい法律やルールは異なるものの「13歳未満の子どもを一人にさせないこと」が常識となっていて、登下校や買い物、外で友達と遊ぶ時も大人の同行が求められます。
幸い、ホルスティージさんはこのサクラメント市に母親が住んでいて、サポートを受けることができると言います。
またアメリカでは、どの家庭でもベビーシッターを雇うことが広く浸透しているため、働く女性はそのサービスも利用して、育児と仕事の両立を果たしています。
働く母の悩みは、日本と変わらないようです。
■周囲から「赤ちゃんを抱えてどうやって?」36歳元市長が受けた“ハラスメント”
日本と同じ、女性の政治家としての悩みはほかにもありました。「ハラスメント」です。
パームスプリング市の前市長・ホルスティージさん:
「『君は議員になるにはかわいらしすぎる』『議員になるには若すぎる』と言われたこともありました。妊娠して立候補したときも『妊娠中のお腹を見せない方がいい』と言われたし、『赤ちゃんを抱えてどうやって市長になれるのか』『母乳はどうするのか』などと色々と聞かれました。男性はそのような質問をされることなく子供を持つことができますし、育児中でも議員になることを阻まれることはないのです」
こうした差別やハラスメントを受けながらも、自分のような女性政治家がいなければ女性の課題を解決する政策を作ることができないと、家族の時間を犠牲にして戦い続けています。
日本で女性の政治家が増えるためにはどうしたらいいのか、ホルスティージさんに聞きました。
パームスプリング市の前市長・ホルスティージさん:
「日本の政治家を目指す女性は、今すぐアクションを起こすことです。1年後、5年後、20年後と、子供たちへの影響を考えれば、皆さんの声が切実に必要なのです。私たちと一緒に世界の問題を解決してほしいのです。人口の半分である女性が取り残された状態では、どの国もそれができないのです」
すべての女性、そして子供たちのため…ホルスティージさんは「立ち上がろう」と呼びかけています。
2022年12月7日放送