朝7時過ぎで満席…老若男女集う『朝ラーメン』夜勤明けの人向けに始めたら散歩中の年配客までリピーターに
岐阜県大垣市に、早朝から人気の「朝ラーメン」の店がある。朝にはちょっと重そうな気もするが、魚介ダシをメインにコク深いけど飲みやすいスープで、老若男女問わず人気だ。この「朝ラーメン」がなぜ生まれたのか、その秘密を取材した。
■朝7時から営業している「朝ラーメン」の店は老若男女に人気
岐阜県大垣市の「麺屋 みつる」。日曜の朝7時すぎに取材に訪れると、店内は満席で賑わっていた。
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この店では朝7時から10時前までラーメンを提供している。
のぼりにも「朝ラーメン」と書かれていた。
メニューは、「旨こくしょう油ラーメン」の1つだけ。
チャーシューと煮卵、自家製メンマにねぎと水菜、そしてナルトが乗って750円だ。
男性客:
「豚骨とかのベースじゃなくて、魚介みたいな。朝には丁度いい味ですね」
別の男性客:
「週に多いときはたぶん2、3とか」
Q朝からラーメンは重たくないですか?
別の男性客:
「そうですよね、イメージはそんな感じするんですけど、実際食べてみるとおいしいっすね」
中学3年生の男の子:
「あっさりしていておいしい」
年配の客もいた。
年配の女性客:
「すごくおいしかったですよ、あっさりしてて。私、あんまり汁飲まないんだけど、半分くらい汁(飲んだ)。おいしかったです」
老若男女問わず好評の「朝ラーメン」だ。
■仕込みは朝4時から 魚介だけでなく動物系も混ぜてコクを加える
開店前に店を訪れ、ラーメンの考案者でオーナーの鈴木満(すずき・みつる)さんに話を聞いた。
Q何時からスープの仕込みを?
鈴木満さん:
「あんまりかっこいいことじゃないけど、朝は4時くらい…、4時にはお店にいますね。まあ曜日にもよるんですけど」
材料は、煮干しや宗田鰹(そうだがつお)を中心に、サバ、ウルメなどの節。
これを、約2時間炊きあげる。
こすと、材料の色がくっきりする。煮干しや宗田鰹などの魚介のうまみが詰まった和風だしができあがった。
毎日約300食分、しかも一人で仕込んでいるため、午前4時ごろから準備を始める必要があるという。
器の白いスープは、実は鶏や豚骨で作った動物系。そこにしょう油ベースの「かえし」。
魚介がメインだが、動物系を少し混ぜることで、あっさりだけではなくコクも加わり、食べやすいのに食べ応えもある不思議な「朝向き」のスープになるという。
スープに合わせるのは、水分が少なめのストレート麺。和風だしとの絡みが良く、噛んだときの歯切れがよいため「パッツン系」とも呼ばれる。東海地方では珍しいそうだ。
最後に具材を乗せて…。
「旨こくしょう油ラーメン」の完成だ。
■きっかけは夜勤勤めの友人の一言「朝、ラーメン食べたいなぁ」
豪快にどんぶりを持ち上げスープを飲み干す女性客がいた。
女性客:
「魚介で結構さっぱりしていて、朝でも食べやすい感じのラーメンになってると思います」
スープも飲みほしたくなる朝ラーメン。別の客に話を聞くとなぜ鈴木さんがこのラーメンを作ったのか知ることができた。
男性客:
「消防の仕事を…。24時間(仕事を)やって帰ってくるので、朝から疲れた体をここで癒やすみたいな」
きっかけは夜勤明けの人のためだという。
鈴木さん:
「夜勤勤めの工場勤務の友だちなんですけど、『朝、ラーメン食べたいなぁ』っていう風なことから始まりまして、それがきっかけですね。夜勤の方からするとディナーなもんで、朝ラーメンだけど、ディナーとしてラーメンを食べて1日を終えたいっていうような」
店の周辺には工場が建ち並び、早朝に飲食できる店はコンビニかハンバーガー店だけ。
そんなエリアで、夜勤明けにガッツリラーメンを食べたいと依頼され、作ったという。
男性客:
「仕事帰りっていうか、夜勤終わってから(来た)」
Q夜勤を終えてからの夕食?
男性客:
「そうですね。友だちにこういうラーメンだって聞いて、『あぁ、あそこうまいよね』っていうことで食べに来たら、どっぷりハマって」
夜勤明けの方に向けた「朝ラーメン」だったが、幅広い世代に広がっていった。
鈴木さん:
「基本、和風だし大事にしているもんですから、年配のおじいちゃんとかおばあちゃんとか、ちょっと遅めの朝ご飯みたいな感じで。だから、いろんな世代から可愛がってもらっています」
和風だしの香りに誘われたのか、散歩で通りかかった年配の客が、そのままリピーターになったケースもあるという。
結果、老若男女さまざまな世代の客が来る人気店になった。
■病気がちだった母の為に作ったラーメン「いまなら食べてもらえるんじゃないかな…」
鈴木さんの地元は、ここ岐阜県大垣市。前は別の場所で働いていたが、大垣に店を出すことにこだわりがあった。
鈴木さん:
「もともと、この地で可愛がってもらったんですけど、仕事の関係で遠くに行くようになって。おふくろが病気がちだったもんですから、少しでも早く家に帰って看病したいって思いがありまして…」
2019年頃、鈴木さんの母が体調を崩した。
喜多方など、ラーメン文化が盛んな福島出身。そんな母にラーメンを作ってあげたい、そしてそばで見守りたいという思いから、地元・大垣市にラーメン店を出した。
朝ラーメンを始めて約3か月後に母親は亡くなったという。
鈴木さん:
「実はここがオープンしたときに家族で食べに来て、おふくろは『まだ私に出すのは10年早い』みたいな感じで、基本いつまで経っても子供のように思って…、まあ子供なもんで。だから食べずじまいでしたね」
自分のために店を開いてくれたという照れなのか、母はラーメンを食べてくれなかったという。
鈴木さん:
「いまなら食べてもらえるんじゃないかなと思って」
Q食べてもらいたいですか?
鈴木さん:
「もらいたいですね」
念願はかなわなかったが、母と過ごした街、そして、自分を育ててくれた大垣の人たちのために、朝ラーメンで恩返しを続けている。
鈴木さん:
「とにかく、いま来ていただいているお客さんを大事にして、年配の方から夜勤の方から、当然お昼の方とか、お子さんも来ていただけるもんですから、幅広い世代の方に来てもらって、とにかく一生懸命頑張ります」
「麺屋 みつる」は朝7時オープンで、9時45分がラストオーダー。ランチタイム(11:30~14:00)も営業しているが、「旨こくしょう油ラーメン」は朝のみの提供だ。
2022年11月21日放送