未曽有の物価高の中、春闘が本格的にスタートしました。全トヨタ労連も春闘の要求書を会社側に提出。生活を守るための賃上げを強く打ち出しています。ただ、賃上げの波で思わぬ影響も出ています。

全トヨタ労働組合連合会・吉清一博事務局長:
「物価上昇についてです。組合員の生活への影響も非常に大きいものがあります。組合員の生活、そして働く者の労働の価値をいかに守り高めるかが問われていると認識しています」

 組合員およそ36万人が加盟する、トヨタ自動車グループの労働組合でつくる「全トヨタ労連」が15日に開いた記者会見。物価高騰を反映し、例年以上に賃上げに向けた強い決意をにじませました。

 今年2023年の全ト労連の賃金引き上げの平均要求額は1万2700円余りと、去年2022年の2倍に。トヨタ自動車労組単体でも、賃上げ要求額について「過去20年で最高水準」と掲げています。

 今年の春闘は例年になく、賃上げムードが盛り上がっていますが、その背景には人材確保の競争があります。

 物価高騰が進んでいますが、働き手の確保、つなぎ止めのため、企業からも賃上げに前向きな動きが出ています。しかし…。

信成の成瀬茂喜社長:
「人手不足は本当に深刻ですね。仕事は確かにあるんです、だんだんコロナの状況から比べると増えてきた。ただそれに対応するドライバーがいない」

 人材難を嘆くのは、名古屋市港区の運送会社「信成(しんせい)」の成瀬茂喜社長。1987年創業で従業員は65人、精密機械や飲料品などを運送する中小企業です。

【動画で見る】“賃上げ”大手は可能でも…人材難を嘆く運送会社の社長 燃料高を価格転嫁できず運転手流出の不安

 大手が賃上げに乗り出す中、人材確保のため中小企業にとってもベースアップは必要ですが…。

信成の成瀬茂喜社長:
「非常に厳しい状態だと思います。(賃上げは)簡単ではないですね」


 その理由は価格競争による運賃の減少。燃料費の高騰を価格転嫁できていない現状にあります。

信成の成瀬茂喜社長:
「(燃料が)1リッター70円、80円で入っていたのが、今はもう120円。うちみたいに小さなところでも月間で数百万円(かかる)。数百万円が一年続くと、やはり中小は体力的には厳しいものになってくる」

 満足に賃上げができず人材が流出して倒産する企業もあります。東京商工リサーチの調べでも、人手不足が原因による倒産は増加傾向にあります。

 この状況に専門家は…。

東京商工リサーチ名古屋支社 嶺澤博徳情報部長:
「中小零細企業のほとんどが賃上げに踏み切れないとは現場でもあがっています。人手不足によって(受注機会を)捉えることができなかった、ロストしてしまった」

 信成の成瀬社長も賃上げが難しい今、人材の流出を懸念しています。

信成 成瀬茂喜社長:
「高齢化もしていきますし、若い人材は非常に欲しいですけど、なかなかドライバーのなり手がないのが現状。同業の大手が他業種のように給料があがっていきますと、どうしてもそちらにドライバー自体も流れていってしまうと思うので、非常に心配です。歯がゆいですね」