保護者の98.7%が賛同…小学校で“PTA解散”決断 学校「一旦リセットと前向きに」会費等なしで活動する学校も
PTAは本来、入るのも辞めるのも任意の「ボランティア団体」のはずだが、役員の押し付け合いや協力の強制など、様々な問題を抱えている。東京都立川市の小学校では、2022年度でPTAの解散を決めた。一旦「リセット」し、ゼロから考え直した学校は今、どうなっているのか。
■会長「現代社会にそぐわない」…PTAを「リセット」する東京の小学校
新宿から電車で40分ほどのベッドタウン、東京都立川市にある「市立柏小学校」。
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毎朝、学校近くの「スクールゾーン」に車の通り抜け禁止の柵を置く「馬出し当番」は、月に1回ほど回ってくる、PTAの役割だ。
子供たちの安全のために活動を続けてきた柏小学校のPTAだったが…。
柏小学校PTA会長の吉澤康貴さん:
「一度、PTAを解散しようかなというふうに考えました。今までのPTAのあり方というもの自体が、現代の社会にそぐわないと思っています」
2022年度いっぱいでPTAを「解散」することを決めた。
学校の中にあるPTAの部屋は、片付けの真っ最中だった。
柏小学校PTA会長・吉澤さん:
「人が決まらなくてできなくなる時期が数年後には起こり得るんじゃないかと、もともと感じていました。5年間、PTA会長をやらせてもらっている中で、毎年毎年、同じ時期に同じことをしてという繰り返しで…。本当に子供たちのためになっているのか、私の中で疑問に思うことが多々ありました」
■アンケートで98.7%が解散に賛同…学校側も「時代考えるとそれも変革の1つ」
5年間会長を務め、役員決めの難しさや「今まで通り」の活動に疑問を感じたという吉澤さん。2022年夏に「PTAの解散」を提案し、保護者にアンケートしたところ、実に98.7%が賛同した。
柏小学校PTA会長・吉澤さん:
「私も(賛同が)そこまでいるとは思わなかったんです。そしたらもう、これもう解散でいいですよねって雰囲気が一斉に出てきて…」
異例の解散の決断を学校も受け入れた。
柏小学校の田中義典校長:
「最初は確かに驚きましたけど、今の時代を考えた時に、それも変革の1つだろうと思いましたね。(保護者の協力が)必要であれば、学校側から声をかけて都度募集をする、ボランティアとして、それでかなり賄えるんではないかと感じていますね」
田中校長は、多少学校の負担は増えるものの、行事などで保護者の手伝いが必要になれば、PTAを介さず直接協力を呼びかけるつもりだという。
PTAで続けてきた子供への本の読み聞かせのボランティアなどは、PTAではなく保護者有志の活動として続けるが、スクールゾーンに柵を置く「馬出し」は、4月以降は廃止すると割り切った。
柏小学校の田中校長:
「(PTAが)ない状況だったら、どんなことになるんだろうかということは、実際我々も保護者もそういう状態を知らない状況でいるということもあります。保護者の方と一緒に子供のために何ができるだろうって、改めてつくっていくのも1つなんだろうなって。一旦そこでリセットされることを、前向きに捉えてもいいかなと思ったんですね」
何十年と当たり前に続いてきたPTAの「リセット」。
新年度は、吉澤会長ら現在の役員が「フィードバック委員会」として残り、PTA解散の影響を検証することにしている。
■会費も強制もない「PTCA」で活動続ける小学校も
PTAとは少し違う組織を、ユニークな形でゼロから立ち上げた学校もある。9年前に新設された、愛知県豊田市の浄水北小学校がつくったのは「PTCA」だ。
浄水北小PTCA会長の本幡和之さん
「私の子供の時は“PTA”でしたので…。最初Cを見た時に誤字かなと思いましたけど(笑)。PTCAのPは保護者、Tが先生、Cがコミュニティで地域」
PTCAとはどんなものなのか。
浄水北小PTCA会長の本幡さん:
「PTAとの違いは会費があるかないかというところだと思います。PTCAの場合は、基本、会費がありません。入る、入らないはまずないと思っています」
PTA活動といえば、お金と人手が付き物だが、どう確保しているのか。
女子児童:
「空き缶と牛乳パック」
男子児童:
「段ボールをもってきました」
学校の中に作られた「リサイクルセンター」。
子供たちが持ってきた古紙や空き缶などの資源を売り、活動の資金にしている。多くの家庭が協力し、市の補助金と合わせれば、年間20万円以上になるという。
この資金をもとにした活動の1つが、授業でも活用する、校舎の周りの森の整備だ。
PTCA地域ボランティアの茨泰憲さん:
「開校当初、学校の敷地の25%が緑化され、森があると聞いておりました。その森を子供たちのために活かせないかと、地元の有志が立ち上がってきれいに整備しました」
元PTCA会長の茨さんは、現在は地域ボランティアとして参加している。PTCAの資金などで購入した草刈り機などを使い、地域の人が子供たちのために活動する。これが、PTCAのCだ。
PTCA地域ボランティアの茨さん:
「ボランティアをやっていて、一番のエネルギーは子供たちの喜ぶ顔ですね」
PTCAには保護者、教師に加えて、民生委員や老人クラブの代表など地域の人も加わり、活動内容やお金の使い方を決めている。
活動は保護者も含め、すべてボランティアで、強制はない。
■押し付け合うようなPTAにしたくない…立ち上げ当時に提案された4つの条件
会費ゼロ、強制ゼロの「PTCA」は、浄水北小の初代校長・片桐先生が、親たちが役員を押し付け合うようなPTAにはしたくないと立ち上げた。
浄水北小学校・初代校長の片桐常夫さん:
「(以前勤めた学校では)役員決めの場所が、協力とは真逆の方を向いているという…。あの姿を見た時に、これはあってはいけないなと思いました」
ゼロからPTAのあり方を考え、開校時に片桐さんは新しいPTAの形として4つの条件を提案した。
1、保護者の選択の自由と個性を尊重すること。
2、地域ぐるみにすること。
3、義務・強制は一切なし。
4、会費はなし。
片桐さん:
「今までの学校とは違うんだよ、変わるんだよ、変えれるんだよと、どんどん発信していきました。子供のためにみんなが一生懸命やれば、自ずとそこからボランティアの輪は広がっていくと思います。義務と強制にはボランティアの花は咲かない」
浄水北小PTCAは、この春10年目を迎えようとしている。
東海テレビ「かわるPTA」で取材を続けています。pta@tw.tokai-tv.co.jpまでご意見・情報をお寄せください。
2023年2月20日放送