岐阜県郡上市の「高鷲スノーパーク」は、年間28万人が訪れる人気のゲレンデだ。このゲレンデで冬を満喫する人々を取材した。

■年間28万人が訪れる人気のゲレンデ…冬だけ毎週集まるアラフィフ男女5人組も

 岐阜県郡上市の「高鷲スノーパーク」は、シーズンに28万人が訪れる人気のゲレンデだ。

【動画で見る】十人十色の爽快感…ゲレンデで冬を満喫する人々 “ロマンスの神様”微笑んだ仲良し夫婦に出会い待つ3人組も

東海地区最大級の全13コースを備え、初心者から上級者まで、誰もが楽むことができる。

「ちびっこひろば」では、ソリや遊具で雪と戯れる子供たちの歓声が響く。

1月は、まさにシーズン真っ盛りだ。

午前8時。オープンと同時にリフト券売場には長蛇の列ができた。

50代の男女5人組に話を聞いた。

女性(53・アルバイト)
「冬は毎週だね、夏は会わないね」

趣味を通じて冬は毎週会う、とても素敵な関係だ。

■YouTubeで見た上手な人に追いつきたい…長野五輪を目指していたこともある57歳スノーボーダー

 兵庫県から1人で来たという岡本光さんは、スノーボード歴41年の大ベテランだ。

岡本光さん(57・自営業)
「子供が大きくなったので遊んでもらえなくて…。歳を取ってきたので、(服を)赤にした、“アラ還”の」

ヘルメットには小型カメラを付けていた。

岡本さん:
「自分の滑っているラインを撮りたい。自分で修正しないとダメなので。誰も見てくれないので、1人なので…」

カメラには、スピードに乗って軽快にターンする様子が映っていた。かつては長野オリンピックを目指していたこともあるという。

岡本さん:
「僕の家、スキー場にあるんです。(妻の)実家が民宿やっていたんやけどね、昔は。長野オリンピックぐらいかな、一番よかったのは」

妻の実家が兵庫県の万馬スキー場に隣接していて、岡本さんは根っからのスノーボーダーだ。

岡本さん:
「ちょっと滑ってなかった。10年ぐらい離れていたんやけど、YouTubeですごく上手い人を見つけて、そこへ追いつきたくなって。すごく難しいので、いくつになっても追求するところがあるっていうんかな。だから、ずっとやっている感じやね」

生涯スノーボーダー宣言だ。

■京都在住のポーランド人女性は日本全国を旅行中に岐阜へ

 午後0時半、標高1550メートルにある山頂のカフェ「TAKASU TERRACE」は、ランチを求めるスキーヤーで賑わっていた。

テラスからの眺めが良く、人気のフォトスポットになっている。

カフェの外で、恐る恐るスノーボードの練習をする男性がいた。

男性:
「ハロー。難しい、難しい!」

男性はブラジル人。まだ慣れていないのか、悪戦苦闘していた。

なぜかこの日の取材では、他にも多くのブラジル人に出会った。

カップルで来ていたブラジル人に、その理由を聞いた。

ブラジル人の女性:
「ブラジルにないから、雪が」

Q日本に来て初めて雪を見た?
ブラジル人の男性:
「はい」

ブラジル人の女性:
「きれい」

日本の裏側、ブラジルでは滅多に雪が降らないといい、故郷では体験できないウィンタースポーツを楽しみたいということのようだ。

 海外からの来場客は、他にもいた。

ゴシャ・ポリトフスカさん(35・プログラマー・京都市):
「(スキーが)めっちゃ好き。ポーランド人です」

ウィンタースポーツが盛んなポーランドから来たゴシャ・ポリトフスカさん。

スキーは4歳からやっていてお手の物だというが、日本語もかなり上手だ。

ゴシャさん:
「今は京都に住んでいる。京都初めて来た時は、『この街めっちゃ好き!』って思い始めて、ここに住みたいって思って」

京都に惚れ込み、移住を決めたというゴシャさん。

「日本の文化を勉強したい」と全国各地を旅する中で、郡上市のゲレンデにやって来ていた。

ゴシャさん:
「ポーランド人なのに、9年ぐらいポーランドに住んでいない。戻りたいとはあまり思わない。日本の食事の方が好き。ラーメンとか、広島に行って“広島スタイルお好み焼き”食べて、めっちゃ美味しかった。海外に住むと、めっちゃ考え方とか見方とか広がる」

結婚していないというゴシャさんは「独身こそが最高のライフスタイル」だといい、これからも自由気儘な人生を楽しむようだ。

■「彼氏欲しいな」…ゲレンデの出会いを待つ女子3人組

 スノーボードを手にした大学時代の友人だという、若い保育士の女性3人組にも話を聞いた。

女性(24):
「彼氏欲しいなっていう…」

声をかけられることはないのだろうか。

女性(24):
「なかなか…かけられたいですね。頑張ろうなかなって、思っているんですけど」

昔も今も、ゲレンデは出会いの場。きっと「ロマンスの神様」が素敵な人に巡り会わせてくれるはずだ。

■24歳の娘への“スノボ指導”で愛を育む…妻が再婚の仲良し夫婦

 午後3時。ゲレンデに「ロマンスの神様」は、確かにいるようだ。大阪市から来た窪田信二さんと亜紀代さんの夫婦は、1月には毎年高須スノーパークを訪れるという。

妻の亜紀代さん(55・自営業)
「連休になったら必ず来ます。これが(夫婦の)共通の趣味なので」

結婚して10年目、共通の趣味がスノーボードという仲良し夫婦だ。亜紀代さんは再婚で、24歳の娘もいるそうだ。

夫の信二さん(47・自営業):
「『結婚してください』って僕から言ったと思います」

出会って間もなく意気投合した2人だが、亜紀代さんが8歳年上ということもあり、周りからは反対の声もあったという。

亜紀代さん:
「(夫は)外野の意見はあんまり気にせずに、自分を貫き通すところが、すごく良い所やと思います。もともとスノーボードは、私の娘に教えるっていうところから始まったので」

信二さん:
「それで3人で行くようになって」

亜紀代さん:
「それで仕方なくついて来た、最初は」

信二さん:
「カッコいいところというか、『教えたるわ』って言うて」

キューピッドになったのは、亜紀代さんの娘だった。

結婚前から3人でよくゲレンデに行き、信二さんが教えるスノーボードを通じて「愛」を深め、素敵な家族になったそうだ。

信二さん:
「それで10年振り返ってうまくいって、すごく幸せを感じますね」

亜紀代さん:
「娘は24歳ですので…、結婚していないですけど。孫と一緒に滑りたい!」

まだ見ぬ孫と、いつかは3世代でスノーボード。ゲレンデで見る、楽しみな夢だ。

■コロナで無くなったスキー場への修学旅行 2人で取り戻す青春

 ゲレンデは、中高年にとっては気持ちが「あの頃」に戻る場所だ。

男性(40代):
「20年ぶりです」

女性(40代):
「大学生の時にスノーボードブームがあって、あの頃の記憶を取り戻そうかなと」

男性:
「広瀬香美でしょ」

女性:
「広瀬香美だね、今日も聴きながら来ました。テンションアゲアゲでね」

男性:
「めちゃめちゃ面白いですよ!ビンディングと合わせて12万、36回ローンです。明日はもう筋肉痛です。(仕事に)支障が出る」

ゲレンデは、いつか「思い出」になる場所でもある。大学生と介護士という19歳の2人の女性は、高校の同級生。

大学生の女性(19)
「修学旅行がスキーとかスノボだったんですよ。コロナで無くなっちゃいました…」

コロナ禍で、修学旅行には行けなかった。

卒業式も、大きな制約があった。

介護士の女性(19):
「在校生がいなくて、保護者も来れなくて…」

大学生の女性(19):
「青春の半分ぐらいなくなったよね」

青春はこれから取り戻す。1年遅れ、2人きりの修学旅行だ。

「銀世界」で味わう、十人十色の爽快感。岐阜の人気のゲレンデには、寒さも吹き飛ぶホットな時間が流れていた。

2023年1月26日放送