コスト高を“価格転嫁”できた会社は可能に…中小企業の賃上げに高い壁「上げたいのは山々」と話す社長も
3月15日は春闘の集中回答日でした。大手企業では満額回答が相次いでいますが、ポイントはこの賃上げの波が中小企業や非正規にどの程度及ぶかです。中小企業の現場を取材しました。
愛知県蟹江町に工場を構え、アルミ製品の製作・加工を行う「鍋清」。1877年に創業した、従業員およそ100人の中小企業です。今回20年ぶりにベースアップを伴う賃上げに踏み切りました。
加藤社長:
「賃金はだいたい4〜5%上げる予定でおります。(この規模の賃上げは)初めてですね」
ベアは管理職が3000円、それ以外が7000円。簡単な決断ではありませんでしたが、その狙いは…。
加藤社長:
「人が1番重要な要素でありまして、例えば教育を3~5年した時に退職ということになりますと、それまでの資源が全て無駄になってしまう。(賃金を)上げたといっても大手さんには適いませんので、できるだけのことはしていきたい」
人材確保のため不可欠だったという今回の賃上げ。その原資を生み出したのは、2022年の春からいち早く取り組んだ価格転嫁でした。
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加藤社長:
「『攻めの値上げ』みたいな表現をしたこともありました。(値上げで)受注ができなくても仕方がないという気持ちでやっている。その代わり、うちの持ち味の仕事をきっちりやらせていただこうと」
賃上げの決定に、従業員からは安堵の声が聞かれました。
30代事務職:
「すごくほっとしました。もうちょっと自分にできることはないかなとか、(働く上で)プラスの気持ちになれるので」
一方で、賃上げがしたくてもできない中小企業もあります。精密機械や飲料品などを輸送する、名古屋市港区の運送会社「信成」。
従業員65人を抱える成瀬社長は、人材確保のため賃上げが必要だと考えていますが…。
成瀬社長:
「現状、4月から(賃上げ)というのは弊社の場合は無理ですね。ただでさえ人がいないものですから、そういう部分で大手に流れていってしまったりとかは本当に心配ですね」
賃上げできない原因は、価格競争による運賃の減少と、燃料費の高騰を「価格転嫁」できていないことにありました。
成瀬社長:
「燃料費等のこともありますし、(価格転嫁が)厳しいものですから。取引先の方で値上げをしていただかないと、ベースアップにはつながってこないですね。(給料を見て)これじゃ苦しいだろうなとは思いますので、上げたいっていうのは本当にやまやまなんですけども…」
連合愛知の可知洋二会長は、価格を上げにくい中小企業の現状を踏まえ、「発注側、受注側双方が価格転嫁があって然るべきという情勢を理解・浸透させていくことが重要だ」と話し、取り組みを進める考えを示しています。