WBCの最終戦でも活躍した最年少の侍、中日ドラゴンズの高橋宏斗投手に、シーズン直前に単独インタビューした。メジャーリーガー相手に躍動した決勝戦での舞台裏や、WBCを経て今シーズンにかける思いなどを聞いた。
■“震え上がった”決勝戦での登板 大打者トラウトとの対戦も「緊張で覚えていない」
14年ぶりに世界一を奪還した“侍ジャパン”で活躍した“竜の若きエース” 高橋宏斗投手（20）がチームに帰ってきた。
【画像で見る】トラウトに2ボールで「あ、もう死ぬかなと…」高橋宏斗が明かしたWBC決勝戦の舞台裏 大谷は「人間の鑑」
インタビュアー：
「お話聞く前に1ついいですか？すごくいい香りがするんですけど…」
高橋宏斗投手：
「あっ！山本由伸効果出てます？」
インタビュアー：
「出ています。今日お会いした瞬間に『変わったな』と思いました。壮行試合のときに、『一流の方はいい香りがするから、香水をつける』っておっしゃっていたじゃないですか？ということでいいんですか？」
高橋投手：
「まあ、そういうことにしましょう（笑）」
インタビュアー：
「一番いい香りがしたのは？」
高橋投手：
「やっぱり由伸さん、原点にして頂点でした」
高橋投手は、侍ジャパン最年少、WBCでは3試合に登板した。やはり印象深かったのは決勝戦だ。
インタビュアー：
「決勝のことを振り返ってもらいたいんですけど、まず、登板はどのような状況で伝えられましたか？」
高橋投手：
「試合前の準備の時に、順調にいけば5回にいくって言われました」
インタビュアー：
「聞いたときの気持ちは？」
高橋投手：
「投げるつもりではいたんですけど、やっぱり自分が一番、実力も下だと思っていましたし、むちゃくちゃ緊張しましたね。震え上がったといいますか。一番緊張していたのが（先発の）今永さんだったので、それを見てたら笑えてきて。『やっぱり俺だけじゃないんだ』って感じで」
決勝のアメリカ戦で高橋投手は、5回から3番手で登板。メジャーリーガー揃いの上位打線との対戦だった。
高橋投手：
「やっぱり、ブルペンのドアが開いた瞬間は足が震えて、ちょっと『行きたくない気持ち』になった…」
マウンドに行きたくない気持ちになるほどの“緊張”の中、1番・ベッツ選手との対戦は、打ち取った当たりだったが、リクエストでセーフになった。
高橋投手：
「サードゴロが上がった瞬間に、『ヤバい、これはセーフになる』と思って『頼むからリクエストしないでくれ』ってずっと願ってたんですけど、リクエストでセーフになったときは『これで一発打たれたら同点やな』みたいな気持ちは、ちょっと不安な気持ちだったんですけど。村上さんとか源田さんが声をかけてくれたので、思い切って投げることができました。源田さんは『まずは冷静になって、落ち着いて自分の球を投げろ』という風に言ってくれたのと、宗さんは『本当に自分の球投げて、思い切りいけ、逃げるなよ』っていうことを言ってくれたので、そこはすごく力になりました」
決勝戦で高橋投手の一番のハイライトは、メジャーMVP3回のトラウト選手との対戦だ。伝家の宝刀・スプリットで、三振を奪った。
高橋投手：
「2ボールになったときは『あ、もう死ぬかな』と思ったんですけど、なんとか追い込んで。本当に覚えてないんですけど、全然、緊張で。結果的にはよかったです」
インタビュアー：
「自分でいま振り返っても、信じられない？」
高橋投手：
「よく投げたと思いますね」
■「憧れるのはやめましょう」で奮い立ったチーム…大谷選手は“人間の鑑”
最年少での出場で、支えになったのは先輩たちの言葉だった。
インタビュアー：
「試合の前に、大谷選手が『憧れるのはやめましょう』っておっしゃっていました」
高橋投手：
「全員が気持ち的に劣勢になっていたと思うので、その円陣1つでチームがガラッと変わりましたし、あの一言がなかったら、自分は気持ちで負けたままマウンドに上がっていたんじゃないかなと思いますね」
インタビュアー：
「大谷選手はどんな存在ですか？」
高橋投手：
「どんな存在…“人間の鑑”じゃないですか？何をしてもすごいですし、人としてもすごくいい人ですし、聞いたらなんでも教えてくれますし、意識の高さも今までに見たことないような人ですし、ちょっと欠点がないのが…探し出せなかったですね、今回は…（笑）」
■インスタでたくさんのDMが… 決勝前日の「事件」の裏側
高橋投手は、決勝の前日に起きた「ある事件」が話題になった。準決勝のメキシコ戦、試合中にブルペンに入ろうとした高橋投手が、まさかの入口が見当たらないという事態に。キョロキョロしていた様子が中継で放送され、インターネットで話題になった。
インタビュアー：
「シンプルにわからなかったのですか？」
高橋投手：
「全然わからなくて、練習のときに入れた場所が入れなくて、試合も始まっちゃいそうだったんですけど…。なんかテレビで放送されていたみたいで、恥ずかしい限りで。試合に出てないのに、決勝戦と同じくらいの（インスタグラムの）DMが来ました」
大舞台でお茶目な姿を世界にさらしてしまったが、20歳とは思えないマウンド度胸で、優勝に大きく貢献した。高橋投手をよく知る人たちから事前に預かったメッセージを伝えた。
＜兄・伶介さんからのビデオレター＞
「ヒロもその貢献の1つのピースになれたと、とにかく勝ちにこだわるというところはドラゴンズに在籍してたときも、日本代表に選ばれたときも言っていて、そこに何が自分でできるかわからないけど、全力でがんばるっていうのは言っていたので、それが有言実行できたっていうのは本当にすごいこと。素晴らしい弟を持って、僕も家族も幸せだと思っています」
高橋投手：
「頭よさそうなこと言ってますね（笑）。決勝終わって、全員で写真撮影というか、グラウンドの中で表彰式とかやっているときに兄とも電話できたので、そこは良かったですね。多分、僕と同じくらい緊張していたんじゃないかなと思います」
■「憧れるのはもうやめます」…シーズンの目標は“3年目の山本由伸超え”でドラゴンズを日本一へ
竜の若きエースは、飛躍を目指す3年目を迎える。今度はドラゴンズで、“王者奪還”へ。
インタビュアー：
「これからどういうピッチャーになっていきたいですか？」
高橋投手：
「この経験はすごく生かさないといけないと思いますし、投げる試合はすべて勝つつもりでやりますし、ドラゴンズが日本一になることが自分の役割だと思うので、そこに向けてまずは準備したいです」
3年目のシーズン、高橋投手の目標を色紙に書いてもらいました。
高橋投手：
「“3年目の山本由伸超え”です。これを目標にがんばります」
侍ジャパンで共に戦った、オリックスバファローズの山本由伸投手（24）。3年目の2019年、チームは最下位ながら20試合に登板し8勝6敗、防御率1.95と驚異的な成績を収め、いまや日本球界を代表するエースに成長した。
高橋投手：
「ヤバいっす、あの成績は。20登板で143イニング投げているのが一番ヤバいんですけど、そこ以外にも防御率、勝率。その当時のオリックスと今のドラゴンズっていうのは、由伸さんも言っていましたけど、似ていると思いますし、核となるピッチャーがもっと出てこれば、今のオリックスみたいに優勝できると思うので。そういったところも含めて、これを目標にがんばります」
WBCで高橋投手は、山本投手につきっきりだった。高橋投手にとって山本投手の存在は…。
高橋投手：
「家族ですね、もう。むちゃくちゃ好きです、僕は」
インタビュアー：
「家族でいうと、父か、兄か？」
高橋投手：
「”奥さん”です！（笑）僕を支えてくれました、ずっと」
インタビュアー：
「大好きな先輩を超えたい？」
高橋投手：
「そうですね。憧れるのはもうやめます」
“憧れ”の存在から“超える”存在へ。ドラゴンズの優勝には、高橋投手の覚醒が不可欠だ。
この日はWBCの金メダルを寮に置いてきたという高橋投手。
高橋投手：
「持ってくるはずだったんですけど、寮にありますね（笑）。いや、でもメダルじゃなくて、次はチャンピオンリング持ってくるんで、それで勘弁してください！」
2023年3月27日放送