新しい年度に入ると「五月病」が話題となることが多くあります。新型コロナが2類から5類に移行したことで、2023年は特に注意が必要です。

■GW明けに街で聞いた「ストレスを感じていますか」

 5月9日、名古屋の街で疲労感やイライラといった「ストレス」を感じているかについて、50人に聞きました。

60代会社員の男性は「GW明けの仕事がストレス」と話し、30代の飲食業パートの女性は「人出が増えて客数も増えたため、GW期間中も仕事であまり休めなかったことがストレスだった」と教えてくれました。

また、20代の新入社員の男性は、仕事での責任感から学生時代にはなかったストレスを感じていて、20代の介護士の女性からは「任されることが増え、ストレスからか夜もなかなか眠れない」という悲痛な声も聞かれました。

40代の会社員の女性は、仕事上マスクを着けなければならず「外したいけど、暑い時などもマスクを外せないのがストレス」と話していました。

ほかにも「GWはどこも混んでいたから、子供をどこにも連れて行けず、“おうち時間”がストレスだった」という20代の主婦の声や、30代の自営業の男性は、最近の寒暖差による疲れを感じると話しています。

【動画で見る】対面やマスクなしでストレス蓄積か…“五月病”で専門家「2023年は特に注意」新型コロナ5類移行が影響も


■コロナ5類移行で今年は例年より「五月病」に要注意

 背景の一つと考えられているのが、新型コロナの2類から5類への移行です。早稲田大学の西多昌規(にしだ・まさき)教授は「今年は特に五月病に注意が必要」と言います。

西多教授は要因を指摘しています。新年度に入り、対面やマスクなしの機会が増え「ストレスが蓄積」される可能性です。

そして、会合や飲み会などの社交機会が増えてきたことで、「キツい」「疲れる」と言って、病院へ診察に来る人も増えているということです。

ゴールデンウィークには帰省、旅行、外出など、活動が4年ぶりに活発になった影響で「4年ぶりの疲労感」がある人もいるとしています。

また、4月以降の気候の変化が大きく、疲労が溜まっている可能性も指摘しています。

西多教授は、久々に活動が活発になり心身に相当な負荷がかかっている状況について、「準備運動なしでいきなりマラソンをするようなもの」と説明しています。

■20代は約4割が「五月病になったことある」…効果的対策は

 五月病とは「環境の変化によって起こる心身の不調」の総称で、不調は個人によって異なりますが、憂うつな気分や不安感、疲れやすい、不眠、頭痛などが挙げられます。

悪化すると「適応障害」や「うつ病」に進むこともあるということです。ヘルスケアサービスの「ヘルスケアテクノロジーズ」の調査によりますと、働く人の半数以上が五月病に「なったことがある」と答えていて、そのうち約3割が休職や退職に至り、20代に限ると約4割でした。

五月病にならないための対策について、オックスフォード大学医学博士の新見正則(にいみ・まさのり)医師は、「自分の心が休まる方法を見つけておくことが大事」と話します。

具体的には、運動や入浴、映画鑑賞に香りを楽しむなど、自分の心が休まれば「何でもOK」ですが、ポイントは「好みであること」が大切だということです。

周りの人が「良い」ということではなく、「自分の好みのこと」と説明しています。

■「好きなことを選ぶ」ことを証明したイグノーベル賞受賞の実験

「自分の好きなことを選ぶ」ことがどれだけ大切か、新見医師は音楽で実験をしています。新見医師が2013年に「イグノーベル賞」の医学賞を受賞した研究です。

イグノーベル賞とは人々を笑わせるような実験内容で、かつ考えさせられる結果に対して与えられる国際的な賞です。受賞研究は世界的な話題となり、「裏のノーベル賞」ともいわれています。

その研究では、心臓移植したマウスに様々な音楽を聴かせて、生存期間を調べました。何も音楽を聴かせない場合、マウスの平均生存日数は「7日」でした。

ところが、アイルランドの人気歌手・エンヤさんの音楽を聴かせると4日延びて11日に、モーツァルトの音楽を聴かせると13日延びて20日になったということです。

注目はオペラです。「椿姫」を聴かせたマウスは、33日延びて40日になりました。

また、演歌、尺八、英語のリスニングCD、地下鉄の音を聴かせた場合は効果はなく、好みの音楽を聴くことで免疫が変化するという結果が出たということです。

この結果から新見医師は、好みのことは体にいい影響を与えることが期待できるので「五月病の対策にも良い」としています。

■妻に突然離婚切り出された男性も…増えるGW後の「離婚相談」

 五月病は、悪化すると適応障害やうつ病に進むとされていますが、“夫婦関係”にも影響を及ぼす可能性があるようです。

フェリーチェ法律事務所の後藤千絵弁護士は、「ゴールデンウィーク後は離婚相談が一気に増える」と話します。

50代の会社員の男性は、定年退職を目前にして妻から突然離婚を切り出されました。退職金が出たら夫婦でゆっくり旅行しようと考えていた男性には、青天の霹靂だったということです。

妻は理由について「簡単に言うと性格の不一致です。40年間ずっと我慢していたけど、もう我慢の限界です」と話し、具体的な理由を説明しないまま家を出ていったということです。

なぜこの時期に離婚相談が増えるのか、後藤弁護士は「帰省や旅行など夫と一緒に過ごす時間が増え、妻の不満が爆発する時期」だと分析しています。

背景について、早稲田大学の西多教授は「五月病からうつが強くなると、人間関係を断ちたがる」「メンタル不調により衝動的になる」と説明しています。

2023年は例年より「五月病」に注意が必要です。

2023年5月10日放送