キンプリメンバーもプライベートで…味噌煮込みうどんの老舗が“海外進出”へ 5代目が決断した新たな挑戦
名古屋市千種区の「大久手 山本屋」は、創業約100年の味噌煮込みうどんの老舗です。次の100年を目指す5代目の新たな挑戦を取材しました。
■“キンプリ”のメンバーもプライベートで来店 一家で支える味噌煮込みの名店「大久手 山本屋」
名古屋市千種区吹上にある「大久手 山本屋(おおくて・やまもとや)」。
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職人やアルバイトを含め、10人以上が休みなく働く店内は、常に活気に溢れています。
お客さんは地元だけでなく、遠方からも来ます。
男性客:
「今日は埼玉から来ました」
女性客:
「聖地巡礼です」
別の女性客:
「キンプリです」
ジャニーズの「King&Prince」のメンバーがプライベートで訪れるといいます。
店を支えるのは、青木さん一家です。一線を退き“お目付け役”として見守る3代目の昭代(あきよ 81)さんに…。
お店が忙しくなってくると製麺スペースに籠る現在の店主・4代目の一哉(かずや 59)さん。
一哉さん:
「冬場なんかだと、朝から晩まで麺台に入っています。水と小麦粉だけで添加物や食塩、そういうものは一切入っていないものですから、とにかく日持ちをしない。その都度、お客さんの入りを見て麺をつくらないといかん」
父の横で次々と味噌煮込みを作るのは、5代目の晃佑(こうすけ 31)さん。この道に入って13年で、既に厨房を仕切るリーダー的存在です。
妻の知聡(ちさと 29)さんと共に、老舗の暖簾を受け継ぐ決意を固めました。
■「どうしても手打ちでやっていきたいくて…」老舗の山本屋総本家から暖簾を分けて今の店に
全国的に知られる「山本屋の味噌煮込み」ですが、その歴史は少し複雑です。ルーツは明治時代に名古屋の大須にあった「山本にこみ」という店。
その後、大正14年(1925年)に店を受け継いだ島本万吉(しまもと・まんきち)さん夫妻が「山本屋」に改名して開業しました。
2代目は店で働いていた町田さん夫妻が受け継ぎ「山本屋総本家」と改名して事業を拡大。その長女・昭代さん夫妻が本家と分かれて始めたのが、今の「山本屋」です。
昭代さん:
「どうしても手打ちでやっていきたいという風で、これが残っているんです。代々残っていくといいなと思って」
伝統の「手打ち」の味にこだわり、総本家とは別の暖簾を掲げて開業しました。
その考えは4代目、5代目へと受け継がれています。
5代目の晃佑さん:
「私の師匠は父親です。祖父祖母もバリバリ現役でやっていた頃だったので、みんなから厳しく育てていただいて。味噌作りはもちろん教えてもらえずに、味噌煮込みを炊く事も許されず、1年ぐらいしてからやっと麺を打ち始めるようになって。初めの方は『こんな麺はお客さんに出せん』と目の前で捨てられたりとか…」
■麺にも味噌もこだわって続ける創業以来の味
創業以来の味を頑なに守ってきた味噌煮込みうどん。
打ち立てを提供する麺と共にこだわっているのが、毎日、早朝から炊き込むという味噌です。
メインに使うのは岡崎市にある「カクキュー」の、3年熟成した八丁味噌で、そこに愛知県産の味噌など数種類をブレンドしています。
機械は一切使わず、つきっきりで混ぜ続け、ツヤを出します。
4代目の一哉さん:
「例えばこれを倍作れば楽じゃないですか。でもそうすると、絶対味噌の味が変わってくる。昔からこれぐらいの量で必ず作っています。この味噌と手打ちの麺は、必ず守り通してもらおうと思っています」
100年受け継がれてきた味噌に加えるのは、毎日とっているダシです。カツオやムロアジ、コンブなどを、季節や天候に合わせた配合で組み合わせます。
そこに甘みの強い国産のネギと、名古屋の老舗豆腐店「くすむら」の油揚げを入れて…。
5代目の晃佑さん:
「麺入ります」
父が打った麺に続いて鶏肉をタップリ入れ、火力を最大にします。
麺をほぐしながら煮込むこと約7分。最後に、契約農家から仕入れる取れたての卵を入れて、一番人気の「親子入り味噌煮込みうどん」(1530円)のでき上がり。厳選した素材と手作りにこだわった、100年受け継がれる味です。
男性客:
「5代続いている味噌の味がします」
女性客:
「甘めの味噌が美味しいなと思います」
別の男性客:
「手打ちでやられているので、麺の感じは山本屋さんの中でも違いますね。僕はここが好きで、2週間に1回くらい来てます」
■様々な挑戦をする若き5代目 2023年の目標は「インドネシア進出」
自慢の味噌煮込みをもっと広めたいと、5代目が提案したのが「煮込みうどんの食べ方いろいろ」です。
卵を別でオーダーして麺をつけて食べる「すきやき風」に…。
残った味噌煮込みのスープにごはんを入れる「雑炊風」。贅沢なスープを残さず食べたいという人には、おすすめだといいます。
新しい事にも力を入れています。全国的にもまだ少ないという点字のメニューを作成したり、ベジタリアン向けの商品も開発しました。
取り組みの中で人気となっているのが、食事に対して厳しい戒律があるイスラム教徒向けのメニューです。
口コミで広がり、特にインドネシアから多くの人が来店するようになったといいます。
5代目の晃佑さん:
「今まで先代が守ってきたものを守り続けて、チャレンジできることはチャレンジもして、失敗することもあると思うんですけど…」
新たなチャレンジは、海外進出です。
2023年中を目標に、まずはインドネシアに出店します。既に現地でスタッフを募集し、麺の手打ちや味噌の作り方を教え始めています。
海外進出したいという孫の考えについて、祖母で3代目の昭代さんは…。
3代目の昭代さん:
「大家族になってきたから仕方ないですよね。食べていくには、新しい知恵で…私たちはさっぱりわかりませんけど」
そして父であり、師匠でもある4代目の一哉さんは…。
一哉さん:
「顔では反対していたかもしれないんですけど、好きなようにと思いながら自由にさせてきた」
店主になれば、家族と従業員の生活も守らなければならない。その責任に応えるため、5代目が決断した海外進出です。
■“激辛”メニューに4代目は「合格」…5代目が目指す次の100年
この日、5代目の晃佑さんはインドネシアで出す新メニューを試作していました。
作っていたのは、味噌煮込みのトッピングです。イスラム教徒は豚肉を食べないため、鶏肉を使ってミンチ風にしました。もちろん、イスラム教の戒律に則って処理されたものです。
そこに入れたのは、大量の唐辛子。
辛いものが好きなインドネシアの人たちに合わせて、少し辛めの味噌煮込みにしたいといいます。
5代目の晃佑さん:
「(味見して)…辛いですね。からっ!辛いのは苦手で、実は」
妻の知聡さん:
「うん、辛い」
4代目も味見しました。
4代目の一哉さん:
「(むせかえる)辛い…」
しかしこれは、味噌煮込みに合わせるといい塩梅になるよう、計算して辛さを調節してあるといいます。
“お目付け役”の3代目、昭代さんも交えて試食会をしました。
3代目の昭代さん:
「これを1杯食べようと思ったら辛いよ。飲んだ瞬間はいいんだけど、やっぱり喉を通る時に辛い。まずいとは言わんけど辛い」
ストレートに厳しい意見です。しかし、むせ返ってしまった4代目は、違う感想でした。
4代目の一哉さん:
「とっても美味しい。この辛さはちゃんと味噌の香り、ダシの香りが残りつつ香りがあるから、これでいいと思う。やはりその時代に合わせたことをやっていかないと生き残れない」
暖簾を守る、その為には柔軟な考えも必要だと、合格の判定です。
まだ味の調整は必要ですが、5代目の晃佑さんは手応えを感じています。
晃佑さん:
「新しいものを試さずに今のままが美味しいと思っていると、それは本当は違うかもしれない。変えなくてもいいけど新しいものも試してみて、という変化も取り入れていきながら、次の100年を目指していければいいなと思っています」
2023年2月22日放送