5年前、愛知医科大学病院に入院していた生後7カ月の男の子が、突然意識不明になりました。両親は「医療ミスが原因」だとして裁判を起こしましたが、5年近くが経過したこのタイミングでの提訴には、息子を想う母の苦しみがありました。

 動画の中で、母親の声に応えるように病院のベッドで体を動かす、当時生後7カ月のれお君。

 愛くるしい姿を見せていましたが、この翌日、れお君は意識不明の重体になりました。今も意識が戻らないまま、5年が経とうとしています。

【動画で見る】入院中「変わり果てた姿に…」7か月の我が子が突然意識不明に「医療ミスが原因」時効迫り提訴した母の苦悩

母親:
「本当に今思い出しても涙が出るんですけど、昼間と打って変わって本当に変わり果てた姿になっていて」

 名古屋市に住むれおくんの母親は、明らかに不審な点があったと語ります。

母親:
「私の素人目で見ても、『あ、やばいことが起きたな。良からぬことが起きたな』と」

 訴状などによりますと、問題の始まりは2018年7月。当時7カ月だったれお君は、ウイルス性の肺炎と気管支炎を発症。長久手市にある愛知医科大学病院の集中治療室に入院していました。

 症状は回復に向かっていましたが、容体が急変しました。

母親:
「瞳の光をすべて失ってしまって、ずっと特殊なしゃっくりのようなものをしていて。口からは延々とよだれがずっと流れ続ける状態で。今にも壊れてしまいそうなガラス細工のように思えてしまって」

 突然、意識不明となったれお君。一命は取り留めたものの、30分ほどにわたって心臓が停まったことで重度の低酸素脳症となり、5年が経った今も意識が戻っていません。

 れお君の母親は、重大な医療ミスがあったと話します。

母親:
「(事故直後)病院長が『病院は真っ黒です』と、『病院に全責任があって、病院は真っ黒だ』と」

 母親が病院から受けた説明によると、容体が急変する直前、れお君のベッドの周りには看護師3人が集まっていました。

 そして、れお君の体の向きを整えようと体を持ち上げて下ろした際、気管に挿入されていた酸素を送る管が外れたといいます。

母親:
「本来であれば、その場で速やかに医師に報告して再挿管をすれば、何事も起こらないんですけれども、看護師さんがその後、人工呼吸器のアラームが鳴った直後に、左手で(管を)押し込みました」

 酸素を送る管は、誤って気管ではなく「食道」に挿入されていました。

 当時、病院側は、酸素を送る管が気管から外れ食道に入っていたことや、看護師の対応に問題があったことは認めたものの、未だ原因の究明はなされていません。

母親:
「事故が起きてすぐに他の病院にも連絡をしたんですけれども、幼い子供、しかも呼吸器が事故によって24時間離せなくなってしまったことで、なかなか受け入れが難しいと」

 受け入れ先がなく、今もこの病院に入院し続けているれお君。

 医療事故の1年半後には、別の看護師がれお君の陰部を消毒する際に、誤って通常の500倍の濃さの消毒液を使用し、化学熱傷を負うミスがあったといいます。

母親:
「何度も事故を繰り返さないというのもそうですし、命に対して真摯に向き合ってほしい」

 2022年12月、ベッドの上で5回目の誕生日を迎えたれお君。

母親:
「これが今年のクリスマスですね。息子は目が見えないんですけれども、少しでも季節を感じてほしいなと思って。朝日が昇るのを見ると、今日もまた1日息子と過ごせるなという思いがわいてくるので」

 両親は2023年に入り、業務上過失致傷の疑いで、看護師3人を愛知県警に刑事告訴。さらに約1億7000万円の損害賠償を求めて病院側を提訴しましたが、事故から5年近くが経ったこのタイミングになった背景には、息子を想う母の苦しみがありました。

母親:
「度重なる事故と、目の前の息子の命を守ることに精一杯で、息子を守るということに全力を尽くした結果、今となったということです」

 問題の病院に入院し続けているれお君を守りたい。葛藤を続けてきましたが、民事と刑事ともに『時効』となる5年が迫り、決断しました。

母親:
「時効が来たら息子の事故自体をなかったことに、闇に葬られてしまうのではないかということで。小さな子の前で大の大人が隠蔽したり誤魔化したり、そんな恥ずかしいことはこれ以上してほしくないなと」

 5月26日、両親が真相解明を求める民事裁判の第一回口頭弁論が開かれました。裁判で病院側は「看護師は気管から管が抜けた可能性を疑ったものの、認識はしていなかった。管を押し込んだ事実も認められない」と主張し、争う姿勢を示しました。

母親:
「以前認めていたものを、この期に及んで全部覆してくる。答弁書を読ませていただいた第一印象は、見苦しいの一言ですね。重大な事故を起こしているという認識を、まず病院には持っていただきたい」