元エンジニアの夫と料理が得意な妻…実家の合掌造りをカフェにし第二の人生 長年連れ添った夫婦の新たな挑戦
愛知県新城市に2023年4月、合掌造りの建物を改装したカフェがオープンしました。70代の夫と60代の妻が定年後の第二の人生にと、二人三脚で作り上げた店です。
■結婚生活43年の「大雑把」と「細かすぎる」仲良し夫婦が作るカフェ
愛知県新城市の鳳来寺山の麓。豊かな緑が広がる場所で2023年4月21日「かふぇ このはずく」のオープンに向けた準備が進んでいました。
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店主は、自動車部品のエンジニアとして20年以上勤めてきた豊島裕光(とよしまひろみつ)さん、73歳です。
ものづくりが大好きで、店の入口に小さな庭を自分でこしらえました。
店内のテーブルも臼を使って手作りしたものです。
オープン前日のこの日も、竹でフェンスを作っていました。
裕光さん:
「時間が差し迫ってるんで、気持ちだけが焦って」
裕光さんと二人三脚で準備を進めてきた、妻の令子さん。
竹のフェンスの出来栄えを確認します。
妻の令子さん:
「素晴らしいじゃないですか。ここ上がってるの?下にさげずに並びじゃないんだね。ここ並びに揃えたらいけないのって話」
裕光さん:
「やって」
令子さん:
「(高さを揃えるために一方を押し下げて)はい、揃いました」
裕光さん:
「(令子さんは)O型です、大雑把。(自分は)細かすぎる。で、ふたつ混ぜて割る」
結婚して43年。互いの「得意」を生かしながら、ここまでやってきました。
■店の看板メニューは夫婦でコラボの「とろっとプリン」
令子さんは料理が得意。店で提供するぜんざいの、最後の調整です。
令子さん:
「(味見をして)わかんないですよね。ちょっとなんか、まだ塩が足りないかなっていう気もするんですよね。いろんな人の好みがあって」
夫の裕光さんが味をチェックします。
裕光さん:
「いい味だ。ちょうどいい甘さですね。甘すぎず。満点ですね」
ぜんざいの味はバッチリのようです。
令子さんが手掛けるスイーツはもう一品。自家製のストロベリーソースとブルーベリー、生クリームをたっぷりとかけた、ふわふわ食感のパンケーキです。
裕光さんも、この店一番のウリにしようと、プリンを作ります。
裕光さん:
「結構昔からプリンは作っていましたね。娘たちが喜んで」
DIYだけでなくお菓子作りも得意で、とろっと感にこだわった素朴な味が自慢です。
上からかけるストロベリーソースは令子さんの手作り。
仲良し夫婦のコラボメニューです。
■20年放置していた建物を再生…店舗は妻の父親が移築した合掌造りの建物
豊島さん夫婦は食べ物から装飾までとにかく作ることが大好きで、2年前に裕光さんが仕事をリタイアしたのを機に、何か一緒にやれることはないかと考えました。
裕光さん:
「カフェをやろうかなと。カフェだったらどこがいいだろうな、と言った時に、ふっとここが出てきたんです」
令子さん:
「最初は『え~』って感じでしたけど、実家ですし父が残したところが有効活用できるなら、じゃあ頑張るかなって感じで」
店にする合掌造りの建物は、元々この場所で旅館を営んでいた令子さんの父親が、50年前に岐阜県の白川郷から移築したものです。
長年、料理店として営業していましたが、20年前に父親が亡くなってからは、ずっと放置されていました。
裕光さん:
「結構簡単に、掃除して建築会社に傷んだところを直してもらえばと思ったら、すごく大変でした」
建物の補修などは業者の助けを借りつつ、溜まったホコリと不要品は、自宅がある名古屋市から2人で何度も通って片づけました。
2年かけ、建物は生まれ変わりました。
裕光さん:
「お店の中に入っていただくと、ここに大きな囲炉裏があります。この囲炉裏は前からありました」
料理店の時代からあった大きな囲炉裏は、煤で真っ黒になっていたのを夫婦で磨いてきれいにしました。
その囲炉裏を抜けると、店1番の自慢のスペースです。
裕光さん:
「これは元々壁だったんですね、木の壁。それをガラスをはめて、ここで座って見れるように」
壁を、のんびりと緑を眺められる大きな窓にしました。
裕光さん:
「やすらぎの場所として、ここでゆったりと休んでいただく」
令子さん:
「お客さんに喜んでいただければ、それが1番だと思います」
夫婦2人の第二の人生がいよいよ始まります。
■充実のオープン初日終えた夫「今まで以上に妻を大事にします」
2023年4月22日、カフェオープンの当日。
店の前には、開店を待つ地元の人たちが既に並んでいました。
女性客:
「とっても楽しみで。1番に来ました」
裕光さんのドラの合図で、「かふぇ このはずく」がオープン。
スイーツが食べられる店が少ないエリアということもあってか、開店と同時に次々とお客さんが来店。孫や令子さんの義理の姉など、この日は親族総動員です。
令子さん:
「はい、これパンケーキ。はいどうぞ。はい、できました。呼んであげて」
小学5年の孫:
「1番の人」
慣れない接客に苦戦する中、プリンの注文が入りました。
夫婦のコラボメニュー「プリンセット」。
飲み物とセットで800円です。
男性客:
「濃厚でおいしいです」
別の男性客:
「めちゃくちゃおいしいです!」
令子さんが作ったぜんざい(500円)も注文が入りました。
女性客:
「ただ甘いだけじゃなくて塩味もほどよくあって、最後までおいしく食べられる」
どちらも大好評で一安心です。
そしてこのエリアならではの客もやって来ました。
令子さん:
「いらっしゃいませ!」
裕光さん:
「みんなお仲間ですか?」
鳳来寺山から降りてきた登山客です。
男性客:
「麓にこういうのができることによって、立ち寄りやすいし静かでいいですよね」
別の男性客:
「緑と合っていて、すごい誘われるような感じの店で、いいなと思いました」
山登りの後の憩いの場にもなりそうです。
50年来の親友という、裕光さんの高校時代の同級生夫婦もやってきました。
裕光さん:
「ここが1番景色のいいところで、川が見えて。ここが1番いいと思います。この中で」
高校時代の同級生:
「この年になってから。年のこと考えるとなかなかだなぁ」
裕光さん:
「でもね、作っている最中も楽しかったですよ。これからがスタートラインだから」
同級生の妻:
「素敵ですね。こんな風にね。別世界に来たみたいです」
裕光さん:
「うれしいですよ。涙を抑えている。下向いたらこぼれそうだから」
店は午後4時で閉店。
第二の人生の初日の感想は…。
裕光さん:
「目の回るような忙しさでしたけど、意外と自然がいっぱいあっていいところだなと再認識していただいて、みなさんがまた来たいなというふうに、それを目指して頑張りたいと思います。1人じゃとてもこのお店はできないので、今まで以上に(妻を)大事にいたします」
2023年5月3日放送