共働き世帯が直面した“小1の壁”…全国の親が発信「#学童落ちた」のリアル 保護者「産む時以外も支援を」
全国の親たちが「#学童落ちた」というキーワードをSNSで発信し、注目が集まった。小学生の子供が学童に入れず、仕事に影響がでてしまうという問題が全国で相次いでいる。この問題は夏休みのこの時期、さらに深刻になっている。なぜ学童に入れないのか。
■近くの学童は定員で受け入れてもらえず… 共働き世帯が直面する「小1の壁」
名古屋市に住む、ゆきさん(38)。
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夫と小学1年の長女・コハルちゃん(仮名・6)と…。
4歳の長男・フユくん(仮名・4)と4人で暮らしているが、子供を預ける「学童」の壁に直面していた。
ゆきさん:
「学童に預けて働いた方が、正直楽という部分もあって。でも預けられない、空きがないっていう状況だったので、(仕事を)本当にもう辞めるしか道はないなって」
愛知県内にある航空会社で正社員として働いていたゆきさんは、残業も多かったため、コハルちゃんの小学校進学を機にパート勤務に切り替えたが、夏休みの期間は学童が必要だったという。
ゆきさん:
「今はトワイライトに預けているんですけど、夏休みの期間は9時からしか預けられないので。(預けられる時間が)9時ってなると、そこから預けて空港に行くと『来る意味ある?』っていう業務時間になっちゃうので、早く預けられる学童が必要でした」
名古屋市には、放課後などに小学校で子供を預かる「トワイライトスクール」がある。しかし、夏休みに預けられる時間は、午前9時から午後6時までと短いため、ゆきさんは学童を探したという。
しかし定員に達していて空きがなく、見学すらもできず、受け入れを断られた。
ゆきさん:
「『小1の壁』の噂は聞いていましたけど、本当に保育園がありがたかったんだなというのを、すごくひしひしと感じました」
子供が小学校に進学することで仕事と子育ての両立が難しくなる、いわゆる「小1の壁」。早朝や夜も預かってくれる保育園と異なり、小学生は学校にいる時間が短いため、共働き世帯などに立ちはだかっている問題だ。
学童に入れないことも小1の壁の大きな要因で、この問題は「夏休み」にさらに深刻になっていた。
■学童に通う児童は20年前の3倍超も…名古屋市内ではほとんどが新たに子供を受け入れられず
名古屋市港区の中川学童保育所は、周辺の4つの小学校の児童を受け入れている民間の学童だ。
この日は夏休みの初日で、多くの子供たちが、朝早くからやってきた。
45人もの子供が集まり、夏休みの宿題にも取り組みながら、しっかりと“遊び”を楽しんでいた。
Q.学童は楽しいですか
小学5年の女子児童:
「うん、楽しい!」
小学6年の男子児童:
「楽しいっす。サッカーとか広い所でできる」
別の小学5年の女子児童:
「学童楽しいです。みんなと遊べたりするところ」
夏休みはこの学童のニーズも特に高まる。
中川学童保育所施設長の長坂智志さん:
「やはり保護者の皆さん、働いていますからね。トワイライトスクールは9時からしか預かってもらえないですよね。なので、どうしても学童のニーズっていうのは高いんですね」
市が助成金を出している民間の学童は、平均で月に1万4000円の利用料がかかるが、預かり時間は午前8時から午後7時。市が小学校で運営する無料の「トワイライトスクール」などと比べ、預かり時間は朝も夜も1時間ほど長くなっていて「夏休みの期間に預けたい」という保護者が増えるという。
しかし、この学童では預けたいという子供を受け容れられない状況で、名古屋市内のほとんどの学童が、新たに児童を受け入れられない状態だという。
長坂さん:
「やはり受け入れのキャパですね、それぞれの。ここの学童でも定員があり(法律で)児童1人あたりのスペースっていうのが決まっているので、それ以上は受け入れられないっていうことがあるので、そこが1番ですね」
施設の広さや資金面の問題で、定員を増やすことが難しいというが、問題はそれだけではなかった。
長坂さん:
「とりあえずスタッフですよね。見て頂いても分かりますように、女性指導員も朝からずっとこの7時まで勤務するというようなことになっていますよね。本当はそれではいけないですよね。実働7時間とかね、そんな風に勤務してもらえるのが1番いいんですけれど、なかなかそこに代わって入る人がいないっていうところが、今、大変困っています」
2022年、学童に通う児童は全国で約140万人と過去最多に。共働き世帯の増加に伴いこの20年で3倍以上に増加した。一見、受け入れ数が増えているように見えるが、待機児童の数は1万5000人を超え、需要の増加に追いついていないのが現状だ。
午後6時過ぎ、仕事を終えた親たちが、子供たちを迎えに集まってきた。
学童を利用する母親:
「仕事も余裕持っていけるので、すごく助かります。諒太朗も大好きだもんね、学童」
息子:
「うん!」
学童を利用する父親:
「(仕事は)私が8時か8時半で、妻の方が9時くらいから始まるので、通勤時間を考えると、朝8時ちょっと前から受けて頂けるので、何とか働ける感じです。(学童が)なかったら、どちらかが仕事をガラッと変えて、1人が専業で見ていくか、パートとかをやるしかちょっと手がないので…」
■ライフステージに寄り沿った支援を…“産むとき”だけでない少子化対策の必要性
学童の見学会にすら参加できなかったゆきさんは、夏休みを乗り切れるか不安だったが、その初日、仕事終わりにむかった先は学童だった。
ゆきさん:
「預け先が確保できたことで、仕事が変わらずに、今同じように暮らしが続けられているのは、本当に安心だなと思っています」
自宅から遠い、別の区の学童で、偶然空きが見つかり、何とか夏休みの初日を迎えることができた。
長女のコハルちゃん(仮名・6):
「楽しかった。ちょっとたったらお外に行って、お散歩したから」
ゆきさん:
「少子化対策っていろいろ話がありますけど、実際に産むときにちょっとお金があればいいってことではなく、成長するタイミングでライフステージが変わっていくので、そこに寄り添った制度でないと、必ず何かこちらが変化をしていかないといけないっていう状況だと思うので、社会がもっと柔軟に、子を持ち働く親にも対応してくれる社会だといいなと思います」
働きながらしっかりと子供を育てたい。時代の変化に対応した制度作りが求められている。
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2023年7月27日放送