南海トラフ巨大地震では、東海3県に大きな被害をもたらすとされています。2023年8月、名古屋で想定される被害をリアルに描いたマンガが発売されました。名古屋の海抜が低い地域では、「命山」と呼ばれる非難施設の整備も進んでいます。

 関東大震災から100年の「防災の日」となる9月1日、東海3県の各地で防災訓練が行われました。南海トラフ巨大地震は、今後30年以内に70%から80%の確率で起きるとされています。

 8月30日に発売された漫画「南海トラフ巨大地震」では、名古屋で想定される被害がリアルに描かれています。

【動画で見る】津波が白波立てず水面じわじわ上昇…8月発売の漫画『南海トラフ巨大地震』名古屋で想定される被害がリアルに

 漫画では、名古屋港で被災した主人公を津波が襲います。津波は白波を立てず、知らない間にじわじわと迫ってきます。

 これは、実際に想定されている“名古屋特有”の津波です。

 伊勢湾の奥にある名古屋港の地形の影響で、沖合で発生した津波が沿岸部に直接ぶつからず、じわじわと水面が上昇。東日本大震災の時とは異なる動きをすると考えられているのです。

原作者のbikiさん:
「(名古屋には)非常に分かりづらい、見えない津波が来ると考えられている。名古屋を舞台にすれば、我々がすでに持っているような震災のイメージと少し違う視点から物語を描けると考えました」

 原作者のbikiさんは、マンガを通して自分が被災した際の状況をリアルに考えるきっかけにしてほしいと話します。

原作者のbikiさん:
「主人公と同じ状況に立たされた時に、自分ならばどうするかみたいなものを考えられるような作りにできたらと思っておりまして、まさに自分事として捉えられるような作品にできたらなと」

 マンガの舞台になった名古屋市港区では、津波から命を守るための施設の整備が進められています。

 公園には「命山」と呼ばれる高さ7mの人工の山が整備されていて、3000人以上が避難できます。

 公園がある地域では、南海トラフ巨大地震で想定されている津波の高さは約3.5mです。命山が作られる港区の船頭場地区は、堤防よりも住宅街が低い海抜0m以下の地域が多く、垂直避難できる建物も少ないことから、避難場所の確保が長年の課題でした。

船頭場町内会の加藤さん:
「地域の人が避難できる大きな山を造ろうかということで、浜松市や袋井市の命山など静岡方面を全部回りまして、(名古屋市に)提案させていただいたのが経緯です」

 住民グループは東日本大震災以降、静岡県にある命山や津波避難タワーなどを自ら視察し、名古屋市に「命山」の整備を要望しました。

船頭場町内会の加藤さん:
「この辺りは伊勢湾台風を経験しまして、逃げるのに精いっぱいというのを経験者として次の世代に伝えたい。こんな風に怖いんだよとこういう施設に逃げていただく、事前に(命山が)あることを知っていただく」

地元の人:
「命山という名前が私はとても気に入っています。住民の命を守る山だということで」

「ありがたいわね。喜んでるわ、みんな」

 命山は今後、スロープや階段を整備し、2024年度中の完成を目指します。