愛知県西尾市民は皆知っている…謎のソウルフード『イカフライのレモン煮』考案者が明かした“運命の出会い”
愛知県西尾市には「イカフライのレモン煮」というソウルフードがあります。どんな食べ物なのか、いつどうやって誕生したのか。調べてみると、意外な事実が次々とわかりました。
■西尾市民に聞くと95%以上が知っていた「イカフライのレモン煮」
愛知県西尾市の西尾駅前で「イカフライのレモン煮」の写真を見せながら、市民に話を聞いてみました。
女性:
「知っています。イカフライのレモン煮です」
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別の女性:
「あっ、イカのレモン煮」
また別の女性:
「あ~はいはいはい、よく食べます。イカフライのレモン煮。食べやすくておいしいです」
イカフライのレモン煮は「どこにでもあります」と、自信をもって答えてくれた男性もいました。
男性:
「スーパーのお惣菜売り場に並んでいますね、パックに入って。結構皆さん求めているようですよ」
10代から60代の西尾市民48人に聞いたところ、知らないと答えた人はたった2人でした。
西尾市では広く浸透しているようです。
■普通のイカフライとの違いは「特製のタレ」
次は西尾市の総菜店に、販売されている「イカフライのレモン煮」を探しに向かいました。訪れたのは「あかりい菜」というお店です。
たくさんの種類のお弁当が並ぶ中、イカフライのレモン煮もありました。
見た目は「ひと口カツ」のような普通のフライで、作り方を見せてもらっても、イカを揚げるところまではイカフライと同じでした。
しかし、揚げ終わった後に使うものが違いました。特製のタレに漬けます。この特製ダレは「砂糖」「しょうゆ」「みりん」「レモン汁」が入ったタレだといいます。
あかりい菜のスタッフ:
「ただのイカフライなんですけど、これに漬けることによってレモン煮になる」
揚げたてのイカフライを、レモンが入った特製ダレに5分ほど漬けこんで完成です。
食べてみるとレモンの酸味とタレの甘みを感じられ、イカの柔らかい食感がクセになるフライです。
あかりい菜のスタッフ:
「これがお子さまから大人まで好きな味ですよね」
イカフライのレモン煮は、市内の大きなスーパーにも置いてあるということで、ヤマナカ西尾寄住店に伺いました。
このお店では、大きなのぼりのような紙に「イカフライレモン煮」と書いて、大々的にアピールしていました。
3個入りに6個入り、そしてメガ盛りまでありました。色々な種類の惣菜がありますが、力の入れ方が全然違うようにみえます。
このお店では、イカフライのレモン煮の特設コーナーを作るほど人気だといいます。
ヤマナカ西尾寄住店の担当者:
「当店では、から揚げやコロッケと同じくらいか、それよりも人気の商品になります。1番多い時で4000個売れた日があります」
■「学校給食人気ナンバー1」レシピを家庭に配った中学校も
圧倒的な人気に驚くばかりですが、よくみると紙には「西尾市学校給食 人気ナンバー1」と書かれています。市民に給食について聞いてみました。
女性:
「給食で出ると、おかわりがあってジャンケンしたりするし」
男性:
「給食で一番くらい好きでしたね」
この男性は、給食の人気メニューの一つ、カレーよりも好きだったといいます。
イカフライのレモン煮は、学校給食でも昔も今も不動の人気ナンバー1のメニューで、人気ぶりがわかるエピソードもありました。
女性:
「(中学校に)うちの子供たちが行っている時にイカフライのレモン煮が給食であったものですから、保護者にレシピが渡ったんです」
ある中学校では人気のため、各家庭にレシピを配ったこともあったということです。
■市民も知らない考案者を発見 きっかけは職場近くのお店で食べた「みそカツ」
これほど愛されているイカフライのレモン煮は、いつどうやって生まれたのか。考案した人が誰なのか、市民に聞いてみました。
女性:
「わからないですね」
男性:
「全然、想像だにしたことないです。ぜひ知りたいです」
市民の中には考案者を知る人は見つからなかったため、市の観光案内所を訪ねて聞いてみました。
西尾観光案内所の担当者:
「西尾で給食の栄養士をされている方だと聞いています。たぶん退職されていると思うんですけど、いらっしゃる所を知っている方はいる。西尾市内にいらっしゃると思います」
かつて給食センターに勤務していた、栄養教諭の鳥居ひろみさんという女性が考案者で、西尾市役所の給食課が紹介してくれました。
鳥居ひろみさん:
「その当時『考えたのが最初だよ』ってみんなが言うから、『そうだね』みたいな感じです」
イカフライを考案したきっかけは、あるお店で食べた「みそカツ」の味がきっかけだったといいます。
鳥居さん:
「給食センターの近くにお料理屋さんがあって、みそカツがおいしいお店だったんですけど、(それを食べたときに)給食でも使えるかなと思ったのが最初なんです」
地域の小中学校に給食を作る給食センターに勤務していた鳥居さんは、昭和60年(1985年)頃、近くのお店で運命のみそカツに出会いました。
鳥居さん:
「全部みそがからまっているんですね。みそをかけるんじゃなくて。そうしたら給食でも子供たちに渡った時に、全員に同じ味がつく。それでなんとか活用できないかと思った」
タレが衣全体にしみこんだみそカツを見て「このスタイルならどの子供にもまんべんなく味がしみたフライがいきわたる」と考え、試行錯誤を重ねてイカフライをレモンベースのタレに浸すというレシピが誕生しました。
給食で出したところ、子供たちに大人気のメニューとなり、やがて小さいころから慣れ親しんだ味ということで、市内の様々な場所で販売されるようになったということでした。
今や西尾市のソウルフードになったイカフライのレモン煮。考案者の鳥居さんに、この人気をどう感じているか聞きました。
鳥居さん:
「簡単にいえばうれしいです。子供たちが受け入れてくれたことで広がりをみせたこと。何よりも私は学校給食が好きなので、“給食のイカフライのレモン煮”という、それがめちゃくちゃうれしいです」
■今では市内の飲食店10軒以上で食べられるイカフライのレモン煮
イカフライのレモン煮は、子供向けにはマヨネーズをトッピングしていて、唐辛子などをかければ、お酒のおつまみにもなるため広い世代に人気です。
ただ、昭和の終わりに考案され、歴史は長くないため、70代以上の人には知らない人もいました。
西尾市では、市内の飲食店で一緒になって盛り上げようと、2019年から「ワクワク給食プロジェクト」としてイカフライのレモン煮をメニューで提供する店を募り、10軒以上が参加しているということです。
2023年5月23日放送