コース料理の最後に提供…日本料理専門店で評判の「店主の母親お手製カステラ」誕生日ケーキにもなるその魅力
三重県伊勢市の「料理工房たなか」は和食店ですが、コース料理の最後に提供される「カステラ」が大人気です。店主の母親が毎朝5時から作っていて、「5種類」の自家製卵が使われています。バースデーケーキにすることもあり、評判を呼んでいます。
■自慢は和食だけではない…75歳の女性が作り上げる人気の「カステラ」
名古屋から車で約2時間、三重県伊勢市の伊勢神宮・外宮の近くに「料理工房たなか」はあります。2011年にオープンした日本料理専門店です。
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店主の田中久紀(たなか・ひさのり 48)さんと、母親のまち子さん(75)が親子で切り盛りする人気のお店です。週末のランチタイムは、地元客を中心にほぼ満席になります。
お客さんのお目当ては、地元でとれた素材をふんだんに使ったコース料理です。
このコース料理の意外な名物が「カステラ」です。
女性客:
「しっとりしていて、いくらでも食べられます」
別の女性客:
「優しい感じの味で、おいしかったです」
また別の女性客:
「ふわふわしていて、でも甘すぎなくておいしいです」
男性客
「卵のコクがある感じかな。僕はもう20回来ている」
評判のカステラを手掛けるのは75歳のまち子さんです。
まち子さん:
「卵はうちで産みますので。趣味で飼っていたニワトリがだんだん増えてきて」
使うのは、まち子さんが飼育している5種類のニワトリが生んだ自家製の卵です。
名古屋コーチンに…。
烏骨鶏(うこっけい)。
名古屋コーチンと烏骨鶏の2種を掛け合わせたニワトリ。
そして高知県の地鶏「土佐ジロー」。
チリ原産の「アローカナ」の5種類です。
まち子さん:
「やっぱりおいしいですね、このコーチンとかいろんな鶏の卵が入っていますので。コクがありますね。牛乳とか入ってないので。うちはそういうものはなくて、この卵のおかげで」
■至極のカステラを作るために…早朝から厨房で緻密な工程
まち子さんはお店が休みの日以外は、毎朝5時半から厨房に立つといいます。材料はいたってシンプルで、卵と三温糖と小麦粉、そしてハチミツを使います。
まち子さん:
「砂糖を控えてハチミツを入れています。これを作るにはだいぶかかりました。この甘さにするのは」
はじめに卵と三温糖、そしてハチミツを混ぜ合わせます。
まち子さん:
「ハチミツを入れた時までは(かくはん機は)最大の速さなんですけど、最後の小麦粉を入れる時はだいぶ控えています」
小麦粉を入れてからは、ゆっくり混ぜ合わせるのがまち子さん流です。こうすることで、空気をたっぷりと含み、ふわふわな食感に仕上がるといいます。
次に使うのが、特製の木枠です。
まち子さん:
「これは、知り合いの建具屋さんが作ってくれるんですけど、特注で。壊れていくんです。何度も何度も作ってもらうの大変やもんで、こうやって細い針金で補修しながら」
自家製卵のコクと風味、そしてたっぷりの空気を含んでふわふわになった生地を木枠へいれます。木枠に入れて焼くことで、じっくり中まで火を通すことができるそうです。
まち子さん:
「いいですね、色も抜群に。おいしくなりそうです」
160度で50分。しっとり感の命でもある水分が必要以上に蒸発してしまわないよう、高温かつ短時間で焼き上げるのが肝だといいます。
作り始めから2時間、ふわふわのカステラが完成です。
まち子さん:
「いい感じにできました。すごくうれしいですね。焼き上がりが特に」
毎朝早朝からの仕事ですが、カステラ作りが好きなまち子さんは苦にならないといいます。
まち子さん:
「好きなことは全然大丈夫です。おいしいって言っていただけますと、私もやりがいがあります」
ふっくらとなめらか、そして自家製卵のコクがたまらない、渾身の「カステラ」です。
コース料理のデザートとして提供していますが、食事をしたお客さんに限り、テイクアウトでも販売しています(1本1200円 ※食事客に限りテイクアウト販売・数量限定)。
■車で約1時間かけ鶏小屋に…人気のカステラを生み出すためのパートナー
カステラづくりを生きがいにしているまち子さん、きっかけは半世紀前に遡ります。
まち子さん:
「趣味でニワトリを飼っていまして、それからはじめました」
20代の頃からニワトリを飼い始めたまち子さんは、その後、友人からカステラ作りを学び、研究を重ねてきました。いまも朝のカステラ作りを終えると、車で1時間ほどかけて鶏小屋のある南伊勢町へ行き、ニワトリの世話をしています。
まち子さん:
「静かですね。ド田舎でしょ。ここがそうです。ただいま」
まち子さんの鶏小屋です。飼い始めたときは5羽だったニワトリも、今では60羽以上にまで増えました。
おいしい卵を産んでくれる、自慢の子たちです。
まち子さん:
「名古屋コーチンです。(テレビに映って)よかったなぁ」
この日は、翌日に出すカステラ用にと、生まれたての新鮮な卵を30個ほど収穫しました。
まち子さん:
「今日もたくさん産んでくれたなぁと思って。感謝しています、ニワトリに」
ニワトリはまち子さんが半世紀以上付き合ってきた、かけがえのないパートナーです。いつも感謝の気持ちを忘れません。
■デザートのカステラ目当ての客も 「甘さの質がちょっと違う」
再び車で1時間ほどかけてお店へ戻り、ここからはランチタイムの営業です。この日のランチは天ぷらや茶碗蒸し、あさりの炊き込みご飯など全8品です。
「特製ランチ」(2300円)
まち子さん:
「失礼します。あさりの炊き込みご飯のセイロ蒸しになっています。昼ですけど、“あさり”の方で“あっさり”と召し上がってください。赤だしと漬物をお持ちします」
時にはダジャレを交えてメニューを紹介。どんなに忙しくても、お客さんを笑顔にすることを心がけています。
そして食後には、自慢のカステラが登場します。脇には自家製のプリンが添えてあります。このカステラ目当てに来るお客さんも多いといいます。
女性客:
「おいしいです」
男性客:
「他のところと違う卵です」
別の女性客:
「卵がすごく甘くておいしいですね」
別の男性客:
「甘さの質がちょっと違う感じ。卵からくる甘さって感じかな。市販のだと砂糖の甘さって感じですけど」
■誕生日にはデコカステラも…「喜んでいただけたらありがたい」
その頃厨房では、カステラをイチゴや生クリームでデコレーションしていました。
まち子さん:
「誕生日のケーキを。今日は誕生日のお客さんが見えますので。プラス料金はなくて無料で。お店もいろいろケーキ屋さんとかありますのに、うちのケーキでって言われますと、疲れもふっとびますね」
カステラでお客さんを笑顔にしたい、まち子さんが大切にしている「カステラのバースデーケーキ」です。
女性客:
「しっとりしていて、いくらでも食べられます」
女の子:
「おいしい」
まち子さん:
「ありがとうございました。バイバイ」
至極のカステラができるまでには、ニワトリの飼育から始める手間暇がかけられていました。
まち子さん:
「好きなことはそんなに苦にならないので。お客さんに喜んでいただけたらありがたいなぁと思って、毎日一生懸命焼いています。私がやっていける限りやっていきたいです」
2023年6月8日放送