愛知県岡崎市で2023年11月1日、元葬儀場だった建物の中に置かれた棺から男性2人の遺体が見つかりました。いずれも身寄りのない男性で、行政から保管を頼まれた業者が置いていたことがわかっていますが、なぜ起きたのかを調べました。

■遺体置いた業者「ここしかなかった」

 この問題については、葬儀場の経営者と遺体を運んだ業者が取材に応じ、経緯について話しました。

【動画で見る】元葬儀場に無断で置かれるケースも…『身寄りない遺体』増え保管場所の確保困難に 火葬までの手続きには時間

葬儀場の経営者で、所有者の男性は引き取り手のない遺体を業者が「無断で置いていった」と説明していました。

遺体を置いた業者は「5、6年前から行政に頼まれた遺体を置いていた。他の葬儀場にも置いていたが、ほぼ閉鎖してしまったので、ここしかなかった」などと話しました。

2人の遺体についてはいずれも身寄りがなく、1人は碧南市の男性で、親族がいるかなどを市が調べる間、業者に遺体の保管を依頼し、もう1人は愛西市の男性で、市が業者に遺体の保管を依頼していました。

■増える身寄りのない遺体 6年間で3倍に

 名古屋市東区白壁の葬儀場「セレモニー白壁」では11月9日、身寄りのない遺体の葬儀が営まれていました。

参列者はNPOのスタッフ2人だけで、身内の姿はありません。この葬儀場では13年前から、身寄りのない遺体や引き取り手がなかった遺体の葬儀を行っています。

セレモニー白壁の後藤雅夫社長:
「(身寄りのない人の遺体や引き取り手がない遺体の葬儀は)増えていると思いますよ。(身内がいても)死後の処理が面倒だから知らないっていうのが多いですね」

名古屋市によると身寄りのない遺体は2016年度は84件でしたが、2022年度には256件と3倍以上になっています。

また、身寄りが確認できても、引き取りを拒み、葬儀にも関与しない人が多いということです。

■国が負担する葬儀費用「葬祭扶助」は21年度に100億円超える

 葬儀の費用は「葬祭扶助」という、身寄りのない人が亡くなり、残された現金では葬儀費用が出せない場合、火葬や葬儀の費用が国から支給されます。

後藤社長:
「葬儀執行人に対して葬祭扶助として、名古屋は1級で20万円ちょっとですね」

自治体によって金額は異なりますが、一般的に都心部では1回あたり約20万円です。

葬祭扶助は全国的に増えていて、2021年度には、初めて100億円を超えました。

■葬儀場社長「長ければ1年」…長期化する身寄りのない遺体の保管

 葬儀は自治体やNPO、福祉団体などの依頼で行われ、その後火葬されるのが主な流れです。

名古屋市では亡くなった人に身寄りがない場合、手続きのうえ区役所が火葬するよう定めていて、手続きの間は葬儀会社などに遺体の保管を依頼しますが、この保管が長期化しています。

後藤社長は「早ければ1週間、長ければ1年。平均大体3カ月くらい」と話します。

保管が長期化する理由についても、後藤社長に聞きました。

後藤社長:
「手続するまでに時間がかかるんですよ。法定相続人を順番に追っていくでしょ。行政のOKが出て死亡届を出すでしょう、火葬許可書が出てから、また今度はその費用の決済が出るまでに時間がかかる」

身寄りのない遺体について行政は戸籍などをたどって親族を探し、引き取りと葬儀・埋葬を電話や書面で依頼します。

そこで断られたり、期限までに書面が返送されなかった場合、自治体が火葬し、無縁仏として供養されます。

葬儀に詳しい「葬儀終活アドバイザー」の冨安達也さんは、この手続きの方法に問題があると指摘しています。

葬儀終活アドバイザーの冨安達也さん:
「どこの誰が亡くなったかというところと、果たしてその方は身よりがないとおっしゃったけれども、親戚はどこかにいるだろうというところを調査していくと、時間がかかる。(親族に)手紙を送っても半数以上は反応がない。結果、身寄りのない、引き取り手がない方の故人が多く出てきている」

身寄りのない遺体が増えているうえ、親族への確認作業に時間がかかることで、保管する期間が長期化し、保管場所の確保が困難になっているということです。

また、確認作業に時間がかかる理由については「人間関係の変化」があるといいます。

冨安さん:
「親戚といえども関係が希薄になっている家族・親族がどうしても目立ってきている。そこに加えてコロナ禍で、親戚といえどもなかなか会う機会も減り、さらに疎遠な関係になった。知らない人の最期の面倒は、お金のところも含めてみれないよねって」

身寄りがわかっても、関わりを持ちたくないと、引き取りを拒む人も増えているということです。

1人暮らしの65歳以上の人は、2000年には303万人だったのが、2020年には672万人に倍増しました。この先も、引き取り手のない遺体が増えることが懸念されます。

冨安さん:
「考え方、弔い方の多様性というものがこういったところにも出てきているのかなと。行政側や葬祭業者側が、どうやって家族の方と向き合っていくのかということが、今後問われていくと感じています」

名古屋の葬儀会社では、昨今の物価高で保管費用や葬儀費用もかさみ、葬祭扶助だけでは厳しい状況だといいます。

後藤社長:
「生きている時は色んなことがあって格差ありますけど、亡くなった段階でみんな平等だと思っています。だから同じようにみなさんを送ってあげようなかと。やっぱりきちんと預かって、きちんと送ってあげて、それに見合う費用をきちんと行政が出せるような仕組みを作ってほしいですね」

2023年11月10日放送