生活の“質”で工夫を…大学教授が開発したダンボール製『インスタントハウス』被災地で安心できる空間生む
能登半島地震の影響で多くの人が避難生活を余儀なくされています。少しでも心安らぐ場所を提供したいと、名古屋工業大学の教授が簡易住宅を届けています。
名古屋市昭和区の名古屋工業大学では10日夜、建築デザインなどが専門の北川啓介教授が、能登半島地震の被災地に向かう準備をしていました。
北川啓介教授:
「屋外用のインスタントハウスを3つ、輪島と穴水にお届けする予定です」
北川教授が開発した「インスタントハウス」は、空気で膨らませたテントシートに内側から断熱材を吹き付けるだけで、簡単に建てられる優れ物です。
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2023年は、トルコ・シリア地震やモロッコ地震の被災地にも設置されました。
北川啓介教授:
「中を空気膜でぐーっと膨らませておいて、中全体に断熱材を吹き付けているんですね。夏は涼しく、冬は暖かくしてくれるんです。元々軽いものは地震の影響を受けにくいんですね。壊れることはまずないんです」
そして、すでに被災地で活躍している簡易住宅もあります。
北川啓介教授:
「やっぱりまず、暖かさやプライバシーが保てるようなものが、3日間以内に必要だなと思って」
ダンボール製の屋内用インスタントハウスは15分ほどで組み立てることができ、形を変えたり連結したりすることも可能です。
すでに輪島中学校の体育館に10棟が設置され、授乳や着替え、おむつ替えなどに使用されています。
北川啓介教授:
「素材としては、段ボールの『ダブル』というものを使っています。いわゆる空気層が間にあるんです。そうすると断熱性とか遮音性とか、もちろん視線も遮ってくれますし。日本って物資を揃えたりして、食べ物とか飲み物とか、最低限のことを揃えるのは頑張るんですけど、もっと良くする、生活のクオリティをちょっと上げていくという工夫がほとんどないんですよ。心とか気持ちとか、そういうものが伝わる物がもっと充実していかないとダメだと思いますね」
今回、このダンボール製のインスタントハウスが量産体制に入ることになりました。
愛知県にあるダンボール加工工場。次々と型が抜かれていきます。ダンボール素材を作った名古屋の会社も、急ピッチで作業を進めました。
ヒラダン営業部の担当者:
「連絡が来たのは1月5日、仕事始めの日ですね。1日でも早くというご意向をいただいていましたので。われわれもニュースなどを見て心を痛めながらも、何をしていいか分からない状況の中で、こうやって具体的に携わらせていただけることに関してありがたく思っております」
年明けから作られたパーツは110棟分で、12日にも石川県に運ばれるということです。
北川教授は石川県入りしていて、避難所の輪島中学校に白いテント、屋外用のインスタントハウスを設置していました。
校庭にはまだ、地震の痛々しい爪痕が残っていました。
北川啓介教授:
「電気は来ていたんですけれども、寝るか食べるかくらいしかやることがなくて。未来に希望を持って生活していくという気持ちが持てないような状態になっていますね」
食べ物や生活用品は届いているものの、見通しがつかない避難生活の中で、人々の心は疲弊しているといいます。
そんな中、インスタントハウスは安心できる空間になりました。
北川啓介教授:
「屋内用のインスタントハウスの壁に『おうちができた』とお子さんが言葉を書いていたんですよ。絵とともに、インスタントハウスの形を描いて。小さなお子さんがいるお母さまから、ちょっとした授乳室ができたということで『本当にほっとできる』というお話をしてくださって、嬉しかったですね」
状況が刻一刻と変わる中、北川教授はこれからもニーズに合わせた支援を続けていくといいます。
北川啓介教授:
「これから復旧の段階から復興の段階にちょっとずつ移っていきますので、私もこの街と一緒になって作っていくようなご支援ができれば、すごく嬉しいなと思っています」