2024年2月22日、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新し、3月4日には初めて4万円台をつけた。株価上昇の上に新NISAスタートもあり、“投資ブーム”も起きつつあるようだ。しかし、投資にリスクは付きもの。近年は世界的に株価好調が続いているが、下落局面を迎えた時のことを考えて“リスク許容度”を事前に考えておくことが必要だ。

■6年で“100倍”に増やした人も…「やっていた良かった」バブル超えの株高で恩恵受ける人たち

 日経平均株価は2月22日、バブル後の高値を34年ぶりに更新した。

街で話を聞くと、投資を始めた人や、株高の恩恵を受けている人がいた。

【動画で見る】3年で投資信託1千万円→880万円の人も…新NISAで高まる投資熱 第3子出産控える一家のリスク許容度は

大学生(22):
「ちょっと興味はありますね。今後のこと考えると投資をしてみてもいいのかなと」

自営業(49):
「(投資を)してます。もうやっといたほうがいいいよって言われて始めたんですけど。ちょっとずつです」

年金生活(70代):
「今年金生活だから少しでも配当があれば。現金だとすぐなくなっちゃうから。今投資しかないから」

自営業(50代):
「日本株オンリーですね。(株を)6年で10倍、100倍か。やっていて良かったです」

株価高騰を受けて盛り上がっているのが、「新NISA」だ。

2024年から始まった「新NISA」では、『つみたて投資枠』と『成長投資枠』という、これまでにあった2つの仕組みを併用できるようになる。年間の投資額の上限が計360万円にまで拡大し、非課税保有限度額は最大で1800万円、非課税保有期間も無期限となる。

■証券会社に相談客が続々と…新NISAが投資の“入口”に

 名古屋の金融機関では、新NISAの相談に訪れる人が増えている。50代の男性は、旧NISAのつみたて投資枠に『月々3万円』をプラスする手続きに来ていた。

男性(50代):
「少しでも老後のことなんかを考えると、多少なりとも資産を増やしていくっていうことは必要なのかなと」

次に来店したのは、29歳の会社員の男性だ。4人の子供がいて、進学などのタイミングでまとまったお金を用意するため、新NISAを始めることにした。

男性(29):
「貯金っていうのもあまり、日々生活するので精一杯だったのでやれてないと。義務教育終わって大学行くっていうんだったら、その資金に回したい」

みずほ銀行 名古屋駅前支店 若山彩香さん:
「リスクをどこまで許容できるかに応じて、検討の余地が十分あるかなと」

男性(29):
「15年でこんな差があるんですね。130万大きいですよね」

効率的に市場平均のリターンを目指す“インデックスファンド”と、収益チャンスを積極的に狙って運用する“アクティブファンド“に、計1万円を積み立てることに決めた。

男性(29):
「現状1口5000円ずつなので、増額は考えています」

若山さん:
「(新NISAに)非常に関心が高くなっているのは、日常的に感じています。特に20、30代の方を中心にNISAを中心とする資産形成に対するアンテナは高いなと感じます」

新NISAは、20代・30代を中心に、投資の入口にもなっているという。

■NISA検討してアプリ用意も入金“ゼロ”「デメリットは自分で調べないと出てこない」

 名古屋市に住む船坂さん一家も、新NISAでの積み立て投資を検討していた。

船坂愛佳さん(29):
「NISAを始めてみようと思って、アプリを入れるところまでやっていますね。アプリを入れてやろうとしているところです」

船坂さん一家は会社員の夫とフリーランスの妻、子供2人の4人家族だ。4月には第3子の出産を控えている。

母・愛佳さん:
「『3人目の教育資金は?』ってなると、新たに資金調達がどうってなるから、今私たちが新たに増やさなきゃいけない資金運用は、“老後”と3人目の“教育費”」

愛佳さんの夫・宗佑さん(34):
「優先されるのは子供の方」

愛佳さん:
「先に来るのは子供の方だけど、長期で投資しなきゃいけないことを考えると、もうそろそろスタートさせないと」

新NISA関連の本も買うなど、夫婦で“勉強中”だという。しかし、投資アプリをスマートフォンにダウンロードしたものの、まだ入金額はゼロだ。

愛佳さん:
「国もすごいNISAを押しているんだけど、デメリットっていうのは自分で調べないと出てこないから、まだちょっとNISAの方に踏み出すのは不安があるかな」

宗佑さん:
「まぁリスクもあるからね」

愛佳さん:
「その20年、30年、長期的にリスクを負いながら、じゃあ入るお金はどれぐらいって考えた時に…」

“投資”という、これまで学んでこなかった分野に、ハードルが高いと感じていた。

宗佑さん:
「NISAにするのか、他のその投資方法にするのかっていうのはしっかり考えてやっていきたいとは思ってます」

愛佳さん:
「やっぱりお金のことで、それで夫婦仲がギスギスしたり、生活が苦しくなったりっていうのがない程度にNISAに投資していきたい」

■「投資ゲーム」を中学生が体験 楽しさだけでなく“リスク”も学ぶ

 名古屋市東区の冨士中学校では2024年1月、ファイナンシャルプランナーの協力を得て、キャリア教育の一環として “特別授業” が開催された。

100万円を元手に国に投資して、お金を増やしていく「投資ゲーム」の体験だ。

ファイナンシャルプランナーの織田昌典さん:
「1つの国に全部やってもいいし、細かくわけてもいいし、怖いっていう人は貯金だけでもいいし」

生徒A:
「ニュースで投資についてやっていたから、気になってやってみようかなと」

生徒B:
「今の社会の現状を捉えて、どこにお金を投資したら一番いいかなというのを考えたい」

生徒たちは、どの国にいくら配分するかで頭を悩ませていた。

生徒C:
「中国の成長率がでかいので、とりあえず中国に20万円」

生徒D:
「アメリカと中国が1位と2位だから、多めに35万と30万にして」

ゲームの結果発表では、生徒たちが投資したアメリカや中国を始め、多くの国で“大幅プラス”となった。 “投資でお金が増える”という体験に、歓声をあげて喜ぶ生徒もいた。

織田さん:
「ドイツも世界最大の黒字国となり、大幅プラスになりました」

生徒たち:
「いえーい!」

このゲームでは、刻々と変わる世界情勢が経済に与える影響を「お金」で体感するため、新たな展開が用意されていた。

織田さん:
「ちょっと緊急事態ですよ。感染症のCOVID-19の世界的パンデミックが発生」

生徒たち:
「どうしよ~!どうしよう」

男子生徒:
「2年目の中国でいきなり沸騰したのが失敗でした」

女子生徒:
「分散したほうがよくたまったりするので、分散したほうがいいのかなと」

冨士中学校の山村伸人校長:
「お金を増やすのも一つですけど、自分なりの視点を持って分析しながら行動を起こすっていうことについては、実際社会に出るとそういう場面がありますので大切にしてほしい」

■投資信託の1000万円が880万円に…「落ち込みすぎて笑った」

「明るい未来のために投資を」といった声が高まっているが、『バブル』を経験した世代からは、“冷ややかな声”も聞こえてくる。

女性(80代):
「リスクはあるでしょ。変動があるでしょ。元本割れしたら嫌だから。安定したので普通の預金をしています」

主婦(70代):
「(投資は)分からないからやらないです。よく分からないのに投資をするのが、ちょっと」

高齢者からは、投資のリスクを指摘する意見が多く聞かれた。

“現役世代”でも警鐘を鳴らす人もいる。

愛知県の三河地方に住む自営業の40代男性は、3年前に投資信託を1000万円分購入した。金融機関からはローリスクの商品として勧められたというが、その後、元本割れの状況になってしまった。

男性:
「なんかもう楽して稼げるんじゃないっていうだけの思いで、勉強もせずにチャレンジして…」

男性:
「880万になって戻ってきたよと。叫びましたよ。叫びました。一緒にスタッフもいたので 僕が落ち込みすぎて笑っていましたもん。勢いで始めちゃったり、人に言われたことをのっかったりすると、考える力がなくなる。そこはね、反省かなと思っています。『これくらいですんでよかったな』という教訓にして、これからはしっかり勉強してしっかり勉強してコツコツやっていくのが一番いいのかなと」

今後は、一攫千金を狙わず、なるべくリスクの低い銘柄を選んで投資するつもりだという。

専門家も「投資は損をする可能性がある」という認識が必要だと話す。

経済アナリスト 森永康平さん:
「この10年ぐらいが株式投資のキャリアの人たちっていうのは、本当の下落局面というものを見たことはないんですね。リーマンショックみたいな。やれば必ず儲かるとかやれば資産増えるよねってそれぐらいの認識でやると、大きな急落が来た時に想定していなかったという話になってきそうな危機感はある。まず、生活を切り詰めてまでやるようなものではないと思いますし、やったとしても、いわゆる余剰資金のうちでやりましょうねと」

2024年2月19日放送